パレスチナ連帯シリーズ(その7)
飢餓と人道的大惨事が始まっている
イスラエルは「対病院戦争」をやめよ
米・イスラエルは即時停戦・封鎖解除を受けいれよ

包囲され、狙撃され、電気・水を遮断され「集団的死刑」状態の病院
 ガザ保健省は11月13日、イスラエル軍に包囲されたガザ最大の医療施設アル・シファ病院で、病院の発電機を動かす燃料枯渇による酸素不足で死亡した患者が20人になったと発表しました。過去48時間でICU(集中治療室)患者9人、未熟児6人が亡くなっています。アル・シファ病院は、電気と水が完全に遮断され機能停止状態に追い込まれました。施設長ムハマド・アブ・サラミヤ氏は「集中治療室に60人以上、新生児科と小児科に50人以上、透析科に500人以上の患者がいる」と語っていました。病院の医師らから、「保育器に近づこうとした職員が射殺された」「施設内の患者がイスラエル兵に撃たれた」「霊安室閉鎖で100体の遺体が山積みになっている」など悲痛な叫びが上がっています。避難している住民を含め施設内の1万5000人が死に直面しています。ガザ市内のほぼ全ての病院が閉鎖状態となり、医療体制が完全に破壊されました。もはや「大惨事」どころではない「集団的死刑」だと言われています。

 このような病院を標的とした攻撃に対し、パレスチナメディアなどは「対病院戦争」(war against hospitals)と呼んで、人道的危機を破局的なものにする残忍極まりないイスラエルを指弾しています。イスラエルの「対病院戦争」を今すぐやめさせなければなりません。もはや一刻の猶予もないのです。

ガザ最大の病院内で最大1万5000人が緩やかな死に直面していると医師らが警告
イスラエルがガザ北部の病院を包囲、乳児死亡、患者も射殺
イスラエル、ガザに残る病院に対して戦争を開始

一刻の猶予もない人道的大惨事――「飢餓」を兵器として使うな
 すでにガザでは1万千人を超える市民が犠牲になりました。その半分近くが子どもたちです。がれきの中には、2000人とも3000人ともいわれる行方不明者が埋まっています。白い袋に入れられた子どもの遺体が4000、5000も積み上げられたと想像してみてください。一刻も早く、即時無条件の停戦を押しつけなければなりません。
パレスチナの抵抗勢力や国連機関が、ガザで飢餓が始まっていることを国際社会にアピールしています。飢餓が本格化すれば、犠牲者は一挙に増えます。イスラエルの戦争の残虐さは、病院攻撃や空爆と侵攻による虐殺だけにとどまらないのです。戦略的な「飢餓政策」を仕掛けているのです。完全封鎖によって燃料・水・食糧・医薬品等々を遮断し、ガザ住民を飢えさせ死に追いやる「飢餓」を大量殺りく兵器として使っているのです。これが「スローモーション・ジェノサイド」と言われるものです。何とか爆撃から生き残ったとしても、水も食料もなく、病気になっても治療されることもなく、餓死か病死するしかない状態です。かつて人類が経験したことのない残虐な戦争であり、未曾有の人道的大惨事を引き起こしているのです。「飢餓兵器」など、即刻やめさせなければなりません。

 陸、空、海からガザ地区包囲・封鎖によって、食糧、医薬品、医療・衛生用品、燃料、水の供給が完全に遮断されています。ガザ唯一の火力発電所や、海水淡水化プラント、ガソリンスタンドなどが停止し、すでに自力での発電と電力供給、淡水精製や食料供給が不可能となっています。わずかにあった住宅・病院等の太陽パネルも破壊されています。病院、学校、モスク、シェルターセンター等が、「ハマスの拠点」などと集中的に爆撃され、死傷者が激増しています。

 国際的な公衆衛生機関(世界保健機構(WHO)など)は、ガザの飢餓、感染症の蔓延など深刻な人道的大惨事の切迫を警告し、即時停戦をもとめています。すでに人道的大惨事は始まっています。
 水の搬入、淡水製造プラント、井戸のくみ上げポンプなどがすべて止まり、清潔な水の供給ができていません。水を飲むだけでなく、手や顔を洗う、洗濯をするなどすべてができない状況です。人が押し寄せている学校や病院はトイレが著しく不足しています。汚物や廃棄物の収集が中断し放置されています。難民キャンプなどで、下痢の症例が急増し、病気を媒介する虫やネズミの繁殖が懸念されています。避難民の間で疥癬の症状やシラミが拡大しています。皮膚病や水痘が報告されています。さらに不衛生な水や環境によってコレラや腸チフスなどのより致命的な病気の蔓延の危険性が指摘されています。

 加えて深刻なのは寒波の到来です。すでに避難所では風邪の流行が報告されています。風雨をしのぐ屋根や壁さえない野外で夜を過ごすことも例外ではありません。医療従事者自体が過労と栄養不良の状況にあり、過密状態、不衛生、栄養失調、水や食糧の不足の中で、寒波が到来し、十分な防寒具、防寒設備がないもとで、多くの人たちが病気になり、風邪のような通常は軽微な疾病でも命を落とす危険が警告されています。
 人道的大惨事を食い止めるため、寒波が到来する前に、一刻も早く停戦させ、封鎖を解除させなければなりません。

イスラエルの戦争犯罪を正当化するための「ハマスの人間の盾」
「アル=アクサの洪水作戦」34日目:爆撃を生き延びた子どもたちが飢餓、病気、脱水症状で死ぬかもしれない(11月9日)
イスラエルによる包囲と医療システムの崩壊の中、ガザで感染症が急増している(11月9日)
食料も燃料もない:ガザの新たな現実は破滅的だ -特別報告(11月8日)

「4時間戦闘休止」の狙いは「北部無人化」――パレスチナ民族浄化を進めるための手段
 ガザの命を救うためには、即時停戦と封鎖解除が喫緊の課題です。これなしに、虐殺と饑餓を食い止めることはできません。しかし米とイスラエルは、かたくなに「停戦」を拒否し続けています。それどころかイスラエルは空爆と対病院攻撃を続け、北部を無人化し、パレスチナ民族浄化を進めるために全面的に米と協力しています。

 イスラエル軍は11月11日、ガザ市を完全に包囲し、激しい空爆と地上侵攻を進めながら、「一日4時間の戦闘休止」を一方的に通告しました。通告は同時に、時間を決めて「回廊」を設置するので南部へ退避しろと住民に命じました。「休止」の時間帯も場所も、本当に「休止」するかどうかもイスラエル軍が勝手に決めます。人道物資を届けるなど最初から考えていません。
「4時間休止」の狙いは明らかです。軍事包囲した北部住民を強制的に南部へと追い出し、ガザ北部を徹底的に破壊して「無人化」し、二度と住めなくすることです。それでも退避しない者、できないものはテロリストとして皆殺しにすることを正当化するためのものなのです。
「戦闘休止」は、「休戦」でも「人道」でも何でもありません。パレスチナ人すべてをガザからシナイ半島(エジプト)へと追い出し、せん滅するというイスラエルの軍事戦略、ガザ統治戦略、パレスチナ民族浄化作戦の布石であり、その第一歩なのです。ネタニヤフ首相は、ガザからパレスチナ人を一人残らず放逐したのちガザをイスラエルの管理・占領下に置くという方針を公言しています。「戦闘休止」による移住強制は、人道的大惨事をさらに深刻化させ、民族浄化を進めるものでしかありません。

 実際、イスラエルによる連日連夜の容赦のない空爆と侵攻で、北部の100万人のうち60万とも70万とも言われる人々が南部へと強制的に移動させられています。ガザの全住民の実に7割が、従来の半分しかない南部に押し込められています。しかし南部も空爆対象となり、どこも安全な場所はありません。待ち構えているのは爆撃、饑餓と病気なのです。住むあてもなく、着の身着のままで、いつ攻撃されるかも分からない中で延々と歩き続けるその姿は、まさに1948年、75万人ものパレスチナ人が居住地から暴力的に追放され難民となったナクバの再来、「第二のナクバ」と言われています。イスラエル戦時内閣の閣僚ディヒターは、「われわれはガザ・ナクバを展開中だ」と公言しました。

「我々は現在、ガザ・ナクバを展開している」とイスラエル大臣が発表(11月12日)
90歳のパレスチナ人女性エナムさんは人生二度目のナクバを経験した
パレスチナ連帯シリーズ(その6)イスラエルはパレスチナ民族浄化政策をやめよ 「人道」を口実にしたシナイ半島への強制追放を許すな

 米国は、バイデン大統領が「地域限定、3日間の一時的休戦」を提案し、イスラエルを説得しようとしたという宣伝を盛んに行っています。しかしそれがまやかしであることは、結局イスラエルの「一日4時間の戦闘休止」を米国自ら発表して追認し、支持と軍事援助を続けていることからも明らかです。「人道に配慮」「占領には反対」などと言っていますが口先だけです。すでにガザ沖に空母打撃群を派遣しており、海兵隊員ら2000人の増派を表明しています。「3日間」であろうと「一日4時間」であろうと、ガザのパレスチナ人を一人残らずせん滅するまで虐殺戦争を続けるという基本路線に違いはありません。米国はイスラエルの共犯者であり、同罪です。そして日本をはじめG7諸国も、「イスラエルの自衛権」支持しているという点で、まったくの同罪です。

日本政府は、米・イスラエル支持をやめよ。即時停戦・封鎖解除を要求せよ
 イスラエルが「停戦」を頑なに拒否し、空爆・侵攻・饑餓政策を続けられるのは、米と西側諸国の全面的な支援と支持があるからです。虐殺と人道的大惨事を食い止めるには、各国政府が即時停戦と封鎖解除を要求し、国際的運動と連携して米・イスラエルに受け入れさせるしかありません。
 岸田政権は11月9日のG7外相会合で、ハマス批判に終始し、米・イスラエルのガザ大虐殺を支持する立場を表明しました。私たちはこれを厳しく非難します。
いま世界各地で、即時停戦を要求するパレスチナ連帯デモが空前の規模で展開されています。西側諸国の運動は、イスラエルの戦争犯罪に反対し、即時停戦を求めるよう自国政府に矛先を向けて迫っていることが共通しています。私たちもこの流れに合流し、日本政府がイスラエル支援をやめ、国際法違反の戦争犯罪を非難するよう要求を突きつけ、即時停戦・封鎖解除の行動を強めていきましょう。

2023年11月13日
リブ・イン・ピース☆9+25

 パレスチナ連帯シリーズ開始にあたって(記事一覧)