<パレスチナ> 反占領・平和レポート(新) No.4
<Palestine> Anti-Occupation Pro-Peace Report (new version) No.4
パレスチナのユネスコ加盟をめぐる情勢
――「脅し」が事態を加速させている――
The Situation around the Affiliation of Palestine to the UNESCO
― "Threat" Accelerates the Development of the Situation―

 国連総会におけるパレスチナの国家承認・加盟問題が米国の時間稼ぎで遅滞している下で、10月31日、ユネスコがパレスチナの加盟を承認した。米国を中心とした加盟阻止の圧力にもかかわらず、賛成107ヵ国、反対14ヵ国、棄権52ヵ国で承認された。 (ユネスコへの加盟は棄権を除く投票数の3分の2以上で承認される。)

米国の威信失墜とイスラエルの孤立化のいっそうの深まり
 9月の国連総会で国家としての承認と国連加盟を申請したときから約1ヶ月を経て、米国がこの問題を委員会付託という形で棚上げにしている下で、パレスチナ自治政府は、ユネスコへの加盟を申請し承認された。今後、主要な国連機関で次々と加盟が承認されていくことが予想されることから、米国とイスラエルは、「国際社会」とパレスチナに懸命に脅しをかけている。
パレスチナ、ユネスコ正式加盟 総会で可決(朝日新聞)
ユネスコ、パレスチナの加盟を承認 米は反発し拠出金停止(CNN)

 米国はユネスコへの拠出金(約22%)の凍結を、イスラエルはパレスチナ自治政府への代理徴収税の送金停止を、さらに入植地での住宅建設の加速を発表した。だが、これらの脅しは事前に言われてきたことであり、パレスチナも「国際社会」も、それを承知で加盟申請をおこない、承認したのである。
ユネスコ:米、分担金62億円を凍結 パレスチナ正式加盟(産経新聞)
入植加速・送金停止、イスラエルが対抗措置(読売新聞)
パレスチナ加盟  米国、気に食わなくとも(京都新聞)

 今回の事態は、大手マスメディアでも大きく報じられたが、そこではパレスチナの側が手詰まりを打開しようと苦労しているかのように、また「和平」が遠のくかのように報じられたりしている。だが、事態は全くその逆である。米国とイスラエルは、パレスチナの国家承認・国連加盟の流れがこれ以上強まらないようにと脅しをかけたのだが、それが逆に自らを窮地に陥れることになっている。米国は国際的な威信失墜を加速させ、イスラエルは国際的な孤立をいっそう深める結果を招いている。

 脅しが脅しとして機能せず、事態をいっそう推し進め加速させる役割を果たすときがある。今はまさに、そういう局面である。

「インティファーダのグローバル化」を背景に
 今、パレスチナは沸き立っている。米国とイスラエルの圧力に屈することなく国連承認・加盟を申請したことだけでなく、かつてない「国際社会」の支援・連帯にも勇気づけられている。中東諸国での民衆蜂起・政変の波が、「ウォール・ストリートを占拠せよ」というスローガンではじまったニューヨークの運動に波及し、またたくうちに全米へ、そして全世界へと広がった。それを、パレスチナの人々は、自分たちが長年にわたって闘ってきた「インティファーダ(民衆蜂起)」の「グローバル化」としてとらえている。そして実際に、パレスチナ連帯は、巨大な流れとなってかつてなく全世界に広がっている。
Palestinian ‘tsunami’ still taking its toll around world(フィナンシャルタイムス)
アラブ蜂起のパレスチナ波及(ル・モンド・ ディプロマティーク日本語版)

 パレスチナは、数十年にわたって強大な米国とイスラエルによって封じ込められ、いわば「青空監獄」同然であった。今、パレスチナは、世界の圧倒的多数の支持を得て、ついに解放のときを迎えようとしている。その道程は、まだ紆余曲折を経るかもしれないが、歴史は確実に動き始めている。

2011年11月5日
リブ・イン・ピース☆9+25 (H.Y.)


<参照>
反占領・平和レポート(新)No.1 イスラエルでも歴史的画期をなす新たな闘争のうねり
反占領・平和レポート(新)No.2 パレスチナの若者を中心とした新たな闘い:「3・15運動」
反占領・平和レポート(新)No.3 パレスチナ国家承認・国連加盟申請