【ホンジュラス続報】
「合意」崩壊:クーデター政権はセラヤ大統領復帰をサボタージュ

ホンジュラスで新たな事態の激変が生じている。10月30日にセラヤ大統領の復帰が合意されたにもかかわらず、クーデター政権はその実施をサボタージュし、ついに「合意」は崩壊した。
 「合意」では、国民議会の議決を経てセラヤ大統領が復帰することになっていた。しかし、クーデター政権が議会を召集しようとしないので「反クーデター民族抵抗戦線(FNRG)」は期限を切って実施を迫った。クーデター政権がそれを無視したため「合意」は崩壊し、セラヤ大統領とFNRGは11月29日の選挙を認めないことを宣言して新たな闘いを呼びかけている。
 米国は、合意が成立するとすぐに、わずかながらおこなってきた制裁措置をすべて撤廃し、11月29日の選挙を承認するという発表も即刻おこなった。ホンジュラス人民の間では、今回の「合意」が米国とクーデター政権による計略であったという認識と非難が広がっている。
 以下、前回に引き続きGreen Left Weekly の最新情報を翻訳紹介する。
(参照:【ホンジュラス】セラヤ大統領の復帰「合意」

2009年11月10日
リブ・イン・ピース☆9+25



ホンジュラス:セラヤを復帰させる「合意」が崩壊
Stuart Munckton
2009.11.7 Green Left Weekly
http://www.greenleft.org.au/2009/817/42028

 6月28日の軍事クーデター以来ホンジュラスを行き詰まらせてきた危機を解決するために10月30日に調印された合意は崩壊した。クーデターのリーダーであるロベルト・ミチェレッティは、選挙で選ばれた大統領マヌエル・セラヤを復帰させるという合意の明確な主張を実際に受け入れるのを拒み続けた。

 11月6日、AFPの報道によると、セラヤは次のように述べた。合意は崩壊した。なぜなら、現政権がセラヤの参加なしに「国民統一」政府をつくったことによって合意を破ったからである。

 「この合意は今や何の価値もなくなった」とセラヤは述べた。彼は、支持者たちに、街頭抗議行動を継続するように力説した。

 この合意の崩壊の結果として、セラヤと大衆組織「反クーデター民族抵抗戦線(FNRG)」はともに、クーデター政権によって組織されている11月29日の選挙に参加しないということと、その選挙結果を認めないということを宣言した。

 AFPの報道によれば、セラヤはこう述べた。「私は、この欺瞞・まやかしを合法と認めるつもりはないし、また、このクーデターを糊塗するつもりもない。」と。

 エリートが組織したこのクーデターに反対する貧困大衆の運動は、街頭抗議行動、ストライキ、道路封鎖、占拠などを継続して、今や130日を超えた。それは、警察と軍による凶暴な弾圧に直面し続け、数千人が拘束され、数十人が殺され、また行方不明になっている。

 経済的損失は日々数百万ドルにのぼり、クーデター政権は国際的にほとんど完全に孤立し、クーデター首謀者たちは、数週間の交渉の後に、ついにセラヤの大統領復帰への同意を含む10月30日の合意に署名したのである。

 正当な大統領が復帰しないのであれば、11月29日の選挙結果を認める政府や国際機関は全くなく、そのことからもクーデター政権は圧力を受けていた。

 合意は、セラヤとクーデター政権に、セラヤを長とする「国民統一」政府をつくることを求めていた。

 合意はまた、憲法を改正するための制憲議会を求める動きを除外していた。それは、まさにクーデターを引き起こすきっかけとなったものであり、また大衆の抵抗運動が強く支持しているものである。

 この合意は、議会によって承認される必要があった。

 米国は、クーデター政権へのあらゆる援助と軍事的結びつきを断ち切ることを拒否してきたのだが、議会の投票を待ちさえせず合意が実施されることも待たずに、合意がおこなわれたのだから米国は11月29日の選挙を承認すると発表した。

 米国のベネズエラ人弁護士で作家のエヴァ・ゴリンガーは、「チャベスコード・コム」の11月2日の論説で次のように述べた。合意が署名されるやいなや、米国は「クーデター政権に課していたわずかな制裁措置を撤廃した」と。

 FNRGは、11月5日に声明を発表して、もし議会が5日深夜12時までにセラヤの復帰を承認しないのであれば、11月29日の選挙をボイコットする計画を継続すると述べていた。

 FNRGの一部である「ホンジュラス人民・原住民諸組織市民委員会(COPINH)」は、11月4日の声明で、合意を「計略」として批判した。声明は、「クーデター政権の交渉委員会には全く誠実さがない」と述べている。また、「米国政府の悪意ある意図的な態度」を糾弾している。

 その声明は次のように述べている。米国は「二面的な立場をとったが、背後ではクーデター政権を支持してきた。もしそうでないのなら、クーデター政権がマヌエル・セラヤ・ロサレス大統領を誘拐する際に、パルメローラ基地(米国が運営している)を使ったことをどうやって説明することができるだろうか?」と。

 FNRGの声明は以下の通りである。

 FNRGは、ホンジュラス人民と国際社会に、次のことを知らせたいと切望している。

 生じている事態からして、
1.131日にわたる継続した闘いの中で、我々は、ホンジュラスのオリガーキーによって遂行されたクーデターの結果としての我が国の政治的危機に対して、平和的解決を支持し主張してきた。この間、我々は、さまざまな国内的および国際的諸団体によって推進された努力を支持し、3つの主要な要求をおこなってきた。(a)正当な大統領マヌエル・セラヤ・ロサレスの復帰による憲法秩序の回復、(b)我が国を再建するための制憲議会を設立する主権の尊重、(c)人権を侵害した者たちの処罰。

2.「テグシガルパ・サンホセ合意」(10月30日に署名された合意)は、憲法秩序への復帰を優先することを強調し、文字通り、「この政府の期間の終了日である2010年1月27日に至るまで、6月28日以前の状態へ執行権力の保持者を戻すこと」の必要性を断言している。

3.6月28日に憲法秩序を破った共犯者である国民議会は、現クーデター政権を樹立した布告を無効にするための議会の召集を拒否することで、遅滞戦術をおこなっている。

4.米州機構(OAS)と、我々が軍事クーデターの共犯者であると考えている米国政府は、クーデター遂行者たちを政治権力から決定的に切り離すことに関心を示していない。

したがって、我々は次のように決意する。

1.遅くとも11月5日深夜12時までにマヌエル・セラヤ大統領が復帰しなければ、FNRGは、選挙過程とその結果を認めることを拒否する。

2.我々は、国内のレジスタンスの全組織に呼びかける。もしセラヤ大統領がこの時間制限内に復帰することにならなければ、この選挙の茶番に対して、いかなる正当性も認めず拒否する行動をとる準備をすべきである。

3.我々は、国際社会に、現クーデター政権と11月29日の選挙の正当性を認めず拒否する立場を維持するよう呼びかける。

「我々は抵抗し続ける、そして我々は必ず勝利する!」

(翻訳by H.Y.)