【ホンジュラス】セラヤ大統領の復帰「合意」
――4ヵ月にわたる闘いの成果。しかし課題は山積、闘いは継続――

 ホンジュラスで10月30日に、クーデター政権がセラヤ大統領の復帰を認める「合意」を受け入れるという、大きな事態の変化があった。
 6月28日に不当に国外追放されたセラヤ大統領が9月21日に電撃的な帰国を果たして、「反クーデター民族抵抗戦線(FNRG)」に結集する人民大衆の闘いは、いっそう高揚した。国際的にも完全に孤立していたクーデター政権は、次第に追い詰められて、表面的な強気の姿勢や発言とはウラハラに、セラヤ大統領との間で交渉せざるをえなくなっていた。その交渉は、クーデター政権側が実質的なことは何ひとつ受け入れないために、10月23日に決裂していた。米国も、これ以上クーデター政権を現状のままで支えることができなくなって、クーデター政権とセラヤ大統領を和解させる方向でクーデター政権に強く圧力をかけたものと思われる。今回の「合意」は、双方ともに他方を完全に打ち負かすことができないという現在の状況を反映したもので、いくつもの重要課題を先送りしていて、今後の闘いの状況次第でまだまだ流動的なものとなっている。「反クーデター民族抵抗戦線(FNRG)」は、一定の勝利をおさめたことを祝うと同時に、闘いを継続することを宣言している。
 以下にGreen Left Weeklyに掲載された速報の翻訳を紹介する。

2009年11月2日
リブ・イン・ピース☆9+25


[翻訳]
[翻訳]ホンジュラス:セラヤ大統領復帰、闘争は継続
Green Left Weekly 2009.10.31 Stuart Munckton
http://www.greenleft.org.au/2009/816/41985

 マヌエル・セラヤ大統領を放逐したクーデター政権に反対する、貧困層を中心とした大衆の120日以上にわたる抵抗運動を経て、クーデター政権は、ついにセラヤの復帰を受け入れることに合意した。

 10月30日、セラヤとクーデター政権は、選挙で選ばれた大統領が今一度大統領職に復帰することに道を開く合意に達した。しかしながら、憲法改正のための制憲議会を求める大衆運動の中心的要求は、今回の交渉では除外され、セラヤが来年1月下旬に任期満了になる後に持ち越された。

 「反クーデター民族抵抗戦線(FNRG)」は、この制憲議会の要求について抗議キャンペーンを続けると誓っているが、11月29日の選挙をボイコットする計画を継続するかどうかは明らかにしていない。

 凶暴な弾圧がおこなわれ、反クーデターメディアを黙らせてきたという状況の下で、もはやあと1ヵ月というときになって、大統領選挙と議会選挙の準備とキャンペーンがこれからおこなわれるかどうか、という状況になった。これは、自由で公正な選挙がほとんど確実に不可能だということである。

 勝利は全く部分的なもので、重大な譲歩も含んでいるが、しかしそれは、この地域で最も極端な右翼オリガーキーのひとつであるホンジュラスのオリガーキーに、人民の意思を押しつけた実例として貴重なものである。大衆的な抵抗運動は、富裕層に好き勝手な統治を許す野蛮な独裁が打ち固められることを阻止した。

 今回の合意は議会で批准される必要がある。双方ともに、何の保証もないのであるが、批准されると確信しているようである。

 もし議会を通過しても、クーデター政権が可能な限り合意の実行を遅滞させて、セラヤ支持者に対する弾圧をおこない続けることもありうる。

 セラヤが6月28日に軍によって拘束され国外追放されて以来、FNRGによって主導され現在もおこなわれている路上抗議行動、道路封鎖、占拠、ストライキは、この国とその脆弱な経済を行き詰まらせた。

 貧困層は、セラヤを「彼らの」大統領と見ている。人民のための諸改革を導入し、新憲法をつくるための民主的なプロセスを組織しようとした大統領として。まさにその同じ理由で、ホンジュラスのオリガーキーと米国の諸企業の利害がセラヤを忌み嫌っているのである。

 セラヤは、また、ベネズエラとキューバの革命政府によって主導されている反帝同盟の側に移行し、連帯を基礎とするALBA貿易ブロックに加盟した。

 クーデター政権がレジスタンスを粉砕することができず、国を安定させることができなかったことは、米国が危機からの唯一の出口として交渉による解決をクーデター政権に受け入れさせるように圧力をかけることへと、導いたようにみえる。

 大衆レジスタンスは、クーデター政権が安定することを妨げることができた。しかしクーデター政権の独裁をくつがえすことはできなかった。それは、少なからず、米国政府がクーデター政権へのあらゆる援助と軍事的結びつきを切ることを拒否したことによるものである。それを除けば、クーデター政権は、国際的に完全に孤立していたのである。

 調印された合意は、諸勢力の関係を反映している。それは、双方による重大な譲歩をあらわしている。どちらも他方を決定的に打ち負かすことができない現状を反映している。

 クーデター政権は、セラヤの追放がクーデターではなく憲法に則ったものであると主張してきたが、この合意に調印することによって、そのようなものではなかったということを認めざるをえなくなった。クーデター政権は、最後の最後まで、セラヤの復帰への同意をためらい引き延ばしていた。

 この合意はまた、クーデター遂行者たちを含む「国民和解」の政府をつくるようにセラヤに委任している。そのような政府の構成がどんなものになるか、またどれだけの権力がセラヤのもとに残るか、それはまったく不明瞭である。

 この合意は、また、憲法制定議会のレファレンダムを、セラヤが任期を終えるまで棚上げにしている。

 合意はまた、クーデターの間に犯された犯罪に責任のある人々を法の裁きに乗せるという問題も残したままである。

 何千人もの人々がクーデター政権によって不法に拘束され、何十人もの人々が行方不明になり、また殺された。FNRGは、クーデター政権と結びついた殺人部隊がクーデター反対者をターゲットにしていることを指摘している。

 この合意は、この間におこなわれた犯罪に対して、特赦を与えてはいない。とりあえずは、「真実委員会」の設立を約束しているだけである。

 ホンジュラスのエリート層は、合意が達成されたからには、11月29日の投票が合法的なものとして認められることによって、国際的な孤立が緩和されることを望んでいる。準備されてきた状況を前提にすれば、この選挙は右翼勢力の勝利となりそうである。

 しかしながら、選挙結果にかかわらず、今のホンジュラスは、もはやクーデター前のホンジュラスとは異なる。被抑圧大衆のあいだに深く根を下ろした力強い大衆運動がつくり上げられてきた。

 この運動は、まったくとどまる気配がない。

 10月30日にFNRGは声明を発表し、次のように宣言している。「我々は、マヌエル・セラヤ・ロサレス大統領の復帰を、オリガーキーのクーデター政権の狭隘な利害に対する人民の勝利として祝うものである。」

 「この勝利は、4ヵ月にわたる闘いを通じて獲得されたものである。そこでは、人民は、支配階級の手中にある国家の弾圧機構によっておこなわれた野蛮な弾圧にもかかわらず、多くの犠牲を通じて意識性と組織的抵抗を増大させ、抑えることのできない社会勢力に自らを転化してきたのである。」

 声明は、今回の合意について、こう述べている。この合意は、「ホンジュラスにおいて、取り除かれるべきクーデターがあったということを明瞭に認めている。 ...人民が社会を変革する権利を行使することができる民主的な枠組みを保証すること。」

 憲法制定議会を推進し続けていくことを誓って、声明は、次のように述べている。「我々は、この我々の社会を、公正で平等かつ真に民主的なものにつくりなおすことを達成するまで、街頭に出て闘い続けるであろう。」と。

(翻訳:by H.Y.)