家庭教育支援条例(案)についての、大阪維新の会 大阪市議団への抗議文
  
 リブ・イン・ピース☆9+25は5月7日、大阪維新の会 大阪市議団が5月市会に提出する予定と報じられている家庭教育支援条例(案)について抗議し上程の断念を求める文書を大阪市議団各議員と大阪維新の会に提出しました。

大阪維新の会 大阪市議団御中

 家庭教育支援条例(案)の上程断念を求めます。
            
 私たちは、貴団が5月に大阪市議会に提出を予定していると報じられている「家庭教育支援条例(案)」の上程断念を求めます。
 なぜなら、この条例案は「保護者への支援」をうたい、「発達段階に応じたかかわり方についての科学的知見を共有」するということを掲げながら、その内容はまったく逆のことが述べられているからです。
 とりわけ、この条例案が、前文、第4章、第5章において繰り返し問題にしている「発達障害」についての、そのあまりにも非常識・非科学的な見解はとうてい看過することができません。
 そもそも、「発達障害」は脳の機能障害によるものと考えられており、親の養育態度が原因ではなく、養育方法によって「障害」そのものを「予防・防止」できるものではないということは、医療・福祉・保育・教育の経験と理論においてすでに常識となってきています。
 一方で、「発達障害」の子どもとその保護者は、長年の間、その症状が「親の愛情不足」に起因するなどという誤った考えに苦しめられてきました。そうした偏見はいまだ世間一般に根強く残っており、まだまだそうした偏見の払拭が課題となっている状況です。
 「軽度発達障害と似た症状の『気になる子』が増加」、「『新型学級崩壊』が全国に広がっている」、「ひきこもりや不登校、虐待、非行等と発達障害との関係も指摘されている」というような記述は、曖昧で根拠がないだけでなく、何でもかんでも「発達障害」に結びつけ、それこそが子どもの問題を引き起こす諸悪の根源であるかのように言いその原因を親の育て方に求めるものであり、「発達障害」の当事者に対する差別・人権侵害です。いわゆるひきこもりや不登校、非行等、また虐待は全く別の問題であって、個別の具体的対応やケアが必要であることは言うまでもありません。
 親への支援が必要であると述べながら、「親心の喪失と親の保護能力の衰退」を「根本的問題」とし、その例として8割の親がおこなっているとされる「ながら授乳」を挙げるというのは、結局、親に――特に母親に――育児の負担を押しつけ、子どもに何か問題がおこった時の責任をすべて親の養育態度に負わせているということです。
 「発達障害」の当事者に対する支援は、周囲の人々が「発達障害」について理解し受け入れ、互いに生活しやすい環境を作り出すことからしか始まりません。「発達障害」が親の育て方の責任という考えが条例化され大阪市の公的見解とされるならば、偏見をさらに助長し、「発達障害」の子どもとその保護者を追い詰め、「支援」とはまったく逆の結果をもたらすことになるでしょう。
 もう一点大きな疑念があります。「家庭教育の支援は、官民の区別なく、家庭、保育所、学校、企業、地域社会、行政が連携して、社会総がかりで取り組まれなければならない」として、第21条の「親学アドバイザー」の資格や、第22条の「親守詩」の活動など特定の民間団体の特殊な活動が条例に記載されています。条文全体を通じて、親に対して「継続的学習機会の提供」とその学習や検診時講習の記録の「母子手帳への記載措置」、一日保育士や一日幼稚園教諭の体験、家庭用道徳副読本の配布などを規定していますが、これら全体が「わが国の伝統的子育て」なるものの家庭・親への押しつけに他なりません。つまるところ条例の言う「家庭教育支援」とは、「「発達障害」は親の育て方が悪い」という非科学的な見解に基づいたいかがわしい民間資格・活動による市民の洗脳ではないでしょうか。
 私たちは差別と偏見に満ちた条例案に厳しく抗議するとともに、上程断念を求めます。

2012年5月7日
リブ・イン・ピース☆9+25

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