[報告]「高校無償化」からの朝鮮学校外しを許さない大阪緊急集会


 3月4日、大阪市東成区で、「『高校無償化』からの朝鮮学校外しを許さない大阪緊急集会」が開かれた。鳩山政権の目玉政策の1つ、高校授業料の実質無償化から、朝鮮学校を対象外にしようという動きに反対するため、緊急に準備された集会である。さらに、橋下大阪府知事が、府が実施する年収350万円未満の世帯に対する私立高校授業料無償化から、朝鮮学校を排除する可能性を表明した。この動きに対しても反対するものである。 事態が緊迫する中、会場には約700人が詰めかけ、外まであふれた。当事者である大阪朝鮮高級学校の生徒も多数参加していた。女学生の制服はチマチョゴリではなくブレザー。ここにも、朝鮮学校が強いられている厳しい立場が表れていた。

 朝鮮学校関係者、保護者、そして日本人の支援者などが壇上に並び、憤りをぶつけるアピールが続いた。鳩山政権の掲げる「友愛」はこれなのか? 橋下知事の「子どもたちに笑顔を」という公約は何だったのか? もし、高校無償化から朝鮮学校だけを排除するなどということが実行されるなら、これは新たな民族差別だ。
 ひどいのは、政府や橋下だけではなく、マスコミも同じだ。前日に大阪朝鮮高校で行われた記者会見の様子が、失望とともに紹介された。先生や保護者が朝鮮学校での教育の実態を紹介し、民族のアイデンティティを重視する教育を受ける権利を訴えた。ところが、記者たちの質問は、朝鮮総連や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係、拉致問題など、教育には何の関係もない興味本位の質問ばかり。正月の花園でベスト4に進出したラグビー部前主将が生徒代表として出席したが、彼はショックのあまりなかなか立ち上がることができなかったという。
 保護者代表は、「子どもが明日無事に帰ってくるか」心配している状況だと訴えた。そして、朝鮮学校外しの動きは、「在特会」が京都の朝鮮初級学校を襲撃した事件と、同じ流れだと語った。

 朝鮮学校の生徒たちが、拉致問題に何の関わりもないことは明らかだ。日本政府からの援助がないもとで、長年学校を支えてきた北朝鮮からの支援金を、あたかも工作のための「秘密資金」のように騒ぎ立てるのは、全く事実に反する。
 「授業内容が分からない」というならば、視察すればよい。実際、東京朝鮮高校を視察した田中真紀子衆議院文部科学委員長らは、「生徒たちが明るい」、「教育水準の高さに驚いた」、「3カ国語を身につけるのはすばらしい」と感想を述べたという。
 鳩山首相や橋下知事の発言が全くの言いいがかりでしかないことは、現実を見れば一目瞭然なのだ。

 民族教育の歴史は60年。日本にしっかりと根を下ろしている。
 かつては、各種スポーツ大会からも閉め出されていた。卒業しても大学受験資格は得られなかった。これらの参加資格を得るために、当時の朝鮮学校の生徒たちは、桃谷高校の通信制に2重に在籍していた。今はそんなことはしなくてよい。高体連に加盟し、大会に参加し、ボクシング、サッカー、ラグビーなどで好成績を収めている。大学受験資格もほとんどの大学で認められている。これらは、実質的に学校教育法上の「一条校」として扱われていることを示している。
 70年代に奨学金制度から国籍条項を廃止するという運動がおこなわれ、現在では朝鮮学校の生徒も奨学金を受けられるようになっている。大阪の育英会のトップは橋下知事なのに、そのことを全然分かっていないという指摘もあった。
 こうした朝鮮学校の「学校」としての権利の獲得は、在日の人々と日本人が協力し、粘り強く要求し続け、理解を広げてきたからこそ、実現したものだ。東大阪市で朝鮮学校を支援してきた人は、「無償化からの排除は、こういった進歩を投げ捨てて、歴史を20年逆回転させるものだ」と訴えた。
 大阪朝鮮高校のグラウンドは、2年前に東大阪市に取り上げられそうになった。しかしこの時も、関係者の尽力によって裁判で勝利的和解に持ち込み、グラウンドは取り上げられずにすんだ。その時の経験を生かして朝鮮学校の排除を許さない運動に全力をあげようと、力強く呼びかけられた。

 集会には怒りが渦巻き、絶対にやめさせたいという熱気に満ちていたが、一方で、朝鮮学校を応援しようという暖かい雰囲気が感じられた。在日と日本人が協力して朝鮮学校を応援してきた取り組みの、長年にわたる積み重ねが、そういった雰囲気を作り出したのだと思う。話しながら、感極まって涙ぐむ人もいた。「♪朝鮮学校〜 フレー、フレーフレーフレー」と『六甲おろし』の替え歌も飛び出した。
 そして、「朝鮮学校を支える会」の方は、「日本人にとっても朝鮮学校は大事。多文化共生を学び、在日のおかれている状況を知る。朝鮮学校は、日本人の民族差別と植民地支配の問題についての姿勢を映す鑑だ」と。朝鮮学校を守るのは、在日のためだけではない。日本人にとって、これ以上ない学びの場でもある。こうした視点は、私たちにとって非常に重要だと思う。

 この集会で採択された要望書を持って、3月中旬に代表が上京する予定だ。その想いが、必ず届くと信じたい。

2010年3月6日
リブ・イン・ピース☆9+25