[投稿]新たに目論まれている在留管理の危険性――今国会での廃案を目指そう


 現在、在日外国人の在留管理に関する法律が改定されようとしています。これによって、在日外国人にとってはいっそう住みにくい社会になり、そして日本人にとっては、外国人「管理」を義務づけられ、否が応でも協力せざるを得なくさせられてしまいます。
 4月15日の丹羽雅雄弁護士のお話(「入管法・入管特例法・住基法改定案」廃案に向けて4/15緊急学習会での講演)は、その新たな在留管理がどれほど危険なものであるかを明らかにするものでした。問題の深刻さに比べて、マスメディアの対応は著しく鈍く、その危険性はまったく知らされていません。そこで、一人でも多くの方がこの問題に対する認識を深めていただけるよう、以下、お話の要点を紹介したいと思います。

移住労働者受け入れ要求とセットになった外国人管理強化
 新たな在留管理のために以下の3つの関連法案が、2009年3月3日および6日に、矢継ぎ早に閣議決定され、今国会に上程されました。その法案とは、1)「住民基本台帳法(住基法)」、2)「外国人登録法(外登法)」の廃止を含む「出入国管理及び難民認定法(入管法)」、3)「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」――の改定案です。外国人に対する日本政府の政策は、二側面あります。ひとつは労働力としての外国人を受け入れ、「同化」させるもの、もう一つは外国人を徹底的に排除し、監視・管理するものです。
 新自由主義に基づくグローバリズムが展開し、また日本社会における人口の減少によって、労働力を必要とする企業は、必然的に移住労働者を受け入れる政策を要求します。しかし、その政策は必ず管理強化とワンセットのものとなります。最近特に排外主義的風潮が強まり、外国人を「犯罪者予備軍」、「テロリスト」などと見なして管理を強化する政策が前面に押し出されています。
 さらに、日本政府が推進している「電子政府構想」とも連動しています。これは最終的には外国人のみならず、日本人全ての個人情報をも含めて国家が一元的に管理することを目指すものですが、まずは抵抗の少ない外国人からそれを行っていこうとしています。

外国人を管理することが日本人の義務となる!――「在留カード」制度
 それでは、上記の三法の改定案が実現してしまうと具体的にどうなるのでしょうか。
 まず、ここでは「中長期滞在者」という新しいカテゴリーが作り出されます。これは在留期間90日以内の短期滞在者と「特別永住者(旧植民地出身者とその子孫)」を除く人々のことで、「一般永住者」もこれに含まれます。この人々には在留許可を「化体するもの」として「在留カード」が交付されます。在留カードには、ICチップが付けられ、氏名、国籍、在留資格、在留期間等が記載され、さらに特徴的なこととしては、就労の可否までが記載されています。これまでの外国人登録証(外登証)では、「職業」という項目はありますが、「就労制限の有無」という項目はありません。それにもかかわらず、このような項目を設けるということは、外国籍住民を、生活者としてではなく「労働力」かどうかという基準で見ているということではないでしょうか。
 この在留カードの受け取りを拒否したり、常時携帯をしていなかったり、提示を拒否すると、刑事罰を課せられてしまいます。
 また、外国人を雇う事業主、留学生を受け入れる学校などは、個々の外国人についてこの在留カードを持っているかどうか、就労が許可されているかどうかなどを確認し、それを国に情報提供する義務を負うことになります。そして義務違反には刑事罰が課せられます。外国人本人だけでなく、事業主までもが「知らなかった」「うっかりしていた」というだけで刑事罰を課せられてしまうのです。
 こうした所属機関からの届け出制度は、これまでの外国人登録制度にはなかったあらたな管理方法です。「外国人管理」とはまったく無縁の機関、公権力の介入から独立性を保証されるべき大学や報道機関、宗教法人までも、外国人管理行政の一翼を担わされ、いわば日本の市民社会が外国人を管理することになるのです。

在日コリアンなどの「特別永住者」もICチップで管理
 一方、在日コリアンなどの「特別永住者」にも、ICチップ入りの「特別永住者証明書」が持たされようとしています。これまでも外登証の常時携帯が義務とされ、刑罰の対象となってきました。日本の植民地支配から生み出された人々であるにもかかわらず、そうした歴史を反省も清算もせずに、未だに支配と管理の対象として扱っているのです。
 国連の自由権規約委員会は、「永住的外国人であっても、証明書を常時携帯しなければならず、また刑罰の適用対象とされ、同様のことが日本国籍を有する者には適用されないことは、規約に違反するものである」という勧告を出し、「日本に未だ存続しているすべての差別的な法律や取り扱いは、廃止されなければならない」と勧告しています。
 しかし、今回の改定では、「特別永住者」に対するこれまでの差別的な取り扱いを何ら改善しないばかりか、あらたに「中長期滞在者」に対してもこのような過酷な差別的取り扱いを強いるものとなっています。

徹底した外国人差別と人権侵害
 入管法改定案では、日本人と結婚することで在留資格を得た外国人が、「配偶者の身分を有する者としての活動を継続して3月以上行わないで在留していること」――平たくいえば3ヶ月以上別居していること――が在留資格の取り消し事由となっています。
 特に、DV(家庭内暴力)の被害を受けて身を隠している場合、この法律が適用されれば、被害者であるにもかかわらず、在留許可が取り消されてしまうのです。
 日本人の場合、3ヶ月以上別居していることで、第三者である行政機関から離婚を強いられたり、この日本で生きていく権利を奪われたりすることはおよそあり得ないことです。それなのに、外国人に対してはそのような人権侵害が合法化されるというのは、決して許されることではありません。
 「永住者」を含む「中長期滞在者」と「特別永住者」に対して、このようなカードによる管理が押しつけられる一方、難民申請者を含む非正規滞在者は、自治体行政サービスの対象からも排除され、「法の他者」「社会外人間」とされてしまうのです。

「入管法・入管特例法・住基法改定案」を廃案に
 日本では「不法」滞在者というような表現で、まるでそれ自体が犯罪であるかのように呼ばれていますが、国際基準では「アンドキュメント」すなわち「未登録」という用語が使用されています。この言葉一つをとってみても、日本における人権感覚がいかに遅れたものであるかが如実に示されています。
 丹羽弁護士は最後に次のような言葉でこの講演を締めくくりました。
 ――現代日本社会は、外国籍住民に対する国の継続的一元管理法制の構築を契機として、国家による「排除と管理・監視」法制の下で「選別・分断・階層化、国家主義的・同化的社会統合化社会」の道を歩むのか、「歴史認識の進化と歴史の清算」を踏まえた「人権尊重・反差別・反監視・連帯」 に立脚した「多民族・多文化の共生社会の構築」の道を歩むのかの岐路に立っている。いずれの道を選択するかという課題は、私たち一人一人に問われている現代社会の重要な課題である。

 現在、この法案は衆議院の委員会で審議されようとしています。この法案を廃案にするために、国会の各政党に要請葉書を出すなどの行動が提起されています。また、大阪では、街頭での宣伝活動が予定されています。こうした行動にできる限り参加していこうと思っています。              

2009年4月21日(鈴)

[行動の紹介]
「入管法等改悪に反対する(火)(金)夕暮れ行動」
初日は4月21日(火)午後5:30〜7:00
場所は4月中大阪市役所周辺
以降の予定は以下です。
4/24(金)、4/28(火)、5/1(火) 5:30〜6:30 大阪市役所前
5/8(金)、5/12(火) 5:30〜6:30 生野区役所前