今年の中学校教科書採択について大阪府教委は教科用図書選定審議会委員と専門調査員の選出作業に入っており、4月21日には第1回の選定審議会が開かれる予定です。 そこでは、今年度の採択方針について審議される模様です。 そこで、今日、大阪府教委への要望書・質問書を提出しました。 4月〜5月にかけて府教委の中で採択方針が審議され、教科書の調査研究が行われます。 6月には府教委から「選定資料」が各市町村教委に送付されます。 この時期に、大阪府府教委に対して、近隣諸国条項を選定基準に入れることや、現場教員の声を尊重するように声を届けてください。 2012年度使用中学校教科書の採択に関する要望書と公開質問状 2012年度から使用される教科書の採択に向けて、すでに多くの教育委員会で採択過程に入っていることと思います。今年の中学校教科書採択は新学習指導要領になって初めての採択であり、どのような基準で教科書が採択されるのか、子どもたちの教育に直接携わる教員の意見がどのように反映されるのか、私たちは注視しています。また3月30日に公表された教科書検定結果では、2001年以降国内外から批判を浴びてきた新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)が編集した自由社版歴史・公民教科書、日本教育再生機構及び改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会(「教科書改善の会」)が編集した育鵬社版歴史・公民教科書も検定に合格しました。さらに、文科省の強い指導のもとで全ての出版社で「竹島「尖閣諸島」に関わって日本政府の見解が記述されました。 私たちは、憲法の理念や近隣諸国との友好関係を深める観点から、公正かつ民主的に教科書採択が行われるよう貴教育委員会に要望するとともに、その目的達成のために、以下の公開質問への回答をお願いいたします。 なお、貴教育委員会からの回答は公表を予定しています。ご多忙と思いますが、回答を5月13日(金)までにお寄せください。(送付先は別紙) 【要望書】 1.貴教育委員会が作成する「教科書を調査研究する観点」には、従来から「人権の取り扱い」が項目に含まれています。大阪には、部落問題や在日外国人問題、障がい者問題などさまざまな人権に関わる問題があり、教育課題としても積極的に取り上げられてきたところです。そのため、「人権の取り扱い」は、大阪の教育にとって極めて重要な観点になると考えています。今年の中学校採択においてもこの観点を重視するよう要望します。 2.1982年の教科書問題を発端にして文部省は、教科書検定基準の中に「近隣のアジア諸国との間の近現代の歴史的事象の扱いに国際理解と国際協調の見地から必要な配慮がされていること」という近隣諸国条項を設けました。当時の宮沢官房長官は、「過去において、我が国の行為が韓国・中国を含むアジアの国々の国民に多大の苦痛と損害を与えたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を歩んで来た」とし、この精神が「我が国の学校教育、教科書の検定にあたっても、当然、尊重されるべきものである」と、「近隣諸国条項」を設けた趣旨を説明しました。この「近隣諸国条項」は現在に至るまでアジアとの友好関係を発展させていくための重要な観点として維持されてきたところです。しかし、近年、教科書検定・採択において「近隣諸国条項」が軽視される傾向が見られます。 これからの未来を担う子どもたちが、アジアとの友好関係を築いていくことは極めて重要なことです。そのために正しい歴史認識を伝えていくことは教育の重要な役割です。私たちは、中学校教科書採択において「近隣諸国条項」を重視すべきだと考えています。とりわけ大阪には、在日韓国朝鮮人をはじめ多くの外国にルーツを持つ子どもたちが日本の学校に通っています。近隣諸国との友好関係を発展させるために、自国中心の歴史認識ではなく、過去の日本の侵略と植民地支配の歴史を真摯に受け止める教育が必要です。 アジアの人々の批判を受け止め、「近隣諸国条項」を大阪府の採択基準に入れるように要望します。 3.新教育基本法には、「愛国心」に繋がる目標がありますが、そこには「他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」が同時に明記され、偏狭なナショナリズムに陥ることがないように求めています。偏狭なナショナリズムを喚起する教科書が何をもたらしたのか、戦前の教育が明瞭に示しているからです。貴教育委員会でも教科書選定にあたって、偏狭なナショナリズムに繋がる「愛国心」を採択基準に加えないよう要望します。 4.貴委員会では、昨年の小学校採択から「選定資料」の中で「教科用図書の特色が明らかになるような客観的な数値データ」を記載した「資料2」を作成しています。そこでは、何を項目として取り上げるかによって、意図的に教科書の特色を描いてみせることができます。また、教科書の特色は、ある特的の項目の記述箇所数だけで分かるものではありません。教科書全体の文脈の中でつかむことで、何を大切にしている教科書なのかを理解することが大切です。このような、恣意的な教科書の特色を描き出す「資料2」は廃止するよう要望します。 5.教科書採択にあたっては、現場の教職員の意見を十分聞き、それを教科書採択に反映すべきです。1997年3月28日「規制緩和推進計画の再改訂について(閣議決定)」の中でも、教科書の採択制度について「将来的には学校単位の採択の実現に向けて検討していく必要があるとの観点に立ち、当面の措置として、教科書採択の調査研究により多くの教員の意向が反映されるよう、現行の採択地区の小規模化や採択方法の工夫改善についての都道府県の取り組みを促す。」ことが明記されています。以後毎年、同様の閣議決定がなされています。 そのような閣議決定に反し綛山哲男教育長(当時)は、「教職員の投票による採択や恣意的な絞り込み、順位づけをしての採択は、あってはならない。」(2008年12月11日府議会定例会)と答弁をしています。貴教育委員会においては、各市町村教育委員会に対して、上記の閣議決定を重視し、「多くの教員の意向が反映される」採択方法を指導・助言するように要望します。さらに、教員の意向を十分反映するために、学校単位の採択をめざすように要望します。 【質問状】 1.今年度の教科書採択では、採択手続き、採択方針、選定資料作成などに関して昨年の小学校教科書採択から変更する点はあるのでしょうか。変更点があるとしたらどのような点に関してでしょうか。 2.貴委員会では、前回の中学校採択から「採択基準」「調査の観点」の変更をお考えでしょうか。また、近隣諸国条項の趣旨を生かした「アジアとの友好関係を深める」観点を盛り込まれるのでしょうか。 3.私たちは、1997年3月28日「規制緩和推進計画の再改訂について(閣議決定)」を重視することは極めて重要であると考えています。これは閣議決定ですから、各地の市町村教育委員会は重く受け止め、具体化していかなければならないものです。貴教育委員会では、各市町村教委に対して、上記閣議決定の周知徹底をどのように図っておられますか。 4.貴委員会では、昨年「選定資料」の中に「教科用図書の特色が明らかになるような客観的な数値データ」を記載した「資料2」を作成しています。上記の「要望書」にあるように、「資料2」は、教科書の恣意的な評価を可能にし、公正・公平な「資料」とならない恐れがあります。今年度の中学校採択においては「資料2」を作成するつもりなのでしょうか。また、作成するつもりでしたら、数値化する項目の選定を誰が、どのような議論を経て決めているのか、明らかにしてください。 5.貴委員会では、「教科用図書選定資料」を作成する際、現場教員の意見はどのように反映させることになっていますか。現場教員お関わり方を具体的に教えてください。 6.今年度の中学校採択に関して、府・市議会の議員や市民グループ、個人等からどのような要望が届いているでしょうか。 2011年4月10日 |
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