安倍政権による「ホワイト国」外しを糾弾する
 政府は韓国への経済報復=輸出規制強化を撤回せよ
徴用工裁判で韓国に屈服を迫る日本政府の蛮行を許すな

韓国への輸出規制強化と「ホワイト国」外しを糾弾する
 安倍政権は7月1日、韓国最高裁(大法院)の徴用工賠償判決に対する報復として輸出規制措置を一方的に発表し、4日には施行した。韓国と日本の関係において前例のないことであり、両国関係を取り返しのつかない対立と軋轢に引きずり込むものだ。
 今回の報復措置として輸出規制強化にあげたフッ素ポリイミドとレジストおよびエッチングガス(高純度フッ化水素)の3品目は、どれも半導体とディスプレイの生産に不可欠な素材である。韓国経済の中核とも言うべき半導体産業の材料の輸出制限であること、またこれらの素材は日本のシェアが70〜80%と高く他国製で代替が難しいことから、明らかに韓国経済への最大限の打撃となるように狙い撃ちをしている。
 さらに、8月2日には、韓国を戦略物資の輸出を統制する「ホワイト国」リストから除外する閣議決定を強行した。これが実施に移されれば、1100余りの非敏感品目の戦略物資の韓国への輸出について、包括許可でなく契約ごとに個別審査を受けなければならなくなる。輸出審査の強化という手法で韓国への特定物品の物量をコントロールし、韓国経済を締め上げようとするものだ。
 そもそも強制徴用で多くの人権蹂躙と違法を犯したのは日本軍国主義ではないか。謝罪しないばかりか、賠償請求を経済報復でねじ伏せようとするとは、言語道断の蛮行だ。私たちは安倍政権に、これらの輸出規制強化措置を即刻撤回するよう要求する。日本政府と関係企業が徴用工裁判の判決を受け入れ、謝罪と賠償を行うことを要求する。

歴史認識を巡る対立の責任は日本政府にある
 今回の輸出規制強化について安倍政権は、「適切な輸出管理制度の運用のため」であり、韓国人元徴用工問題への報復措置ではないと説明する。だがこれは言い訳に過ぎない。韓国を「悪者」に仕立て上げるための「北朝鮮への横流し」「サリン製造の可能性」の出任せの放言も恥ずかしい限りだ。
 経済報復発表の翌々日の3日、7党党首討論会で安倍は「1965年の請求権協定で、互いに請求権を放棄した。これは国家と国家の約束だ。この約束を違えられてしまったらどうなるのかの問題」と述べ、7月2日には、管官房長官も「両国間で積み重ねてきた友好協力関係に反する韓国側の否定的な動きが相次ぎ、その上にG20までに満足する(元徴用工問題の)解決策が示されなかった。信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない」と重ねて理由を説明している。その後、「通商問題を歴史問題と結びつけているのではない」と朝令暮改よろしく前言を翻していったのは、WTOを含めた国際社会の理解が得られないことに気付いたからである。この様に今回の措置は、韓国最高裁(大法院)の強制徴用賠償判決への対抗措置=報復措置であることは明白だ。
 昨年10月の韓国大法院の強制徴用賠償判決の意義――日本帝国主義の植民地支配の不法性と反人道性は日韓条約では未解決で積み残されていること、およびそれより発生する個人の賠償請求権は認定されるということ――については、連載記事「シリーズ 韓国・徴用工判決 安倍政権の『嫌韓キャンペーン』を批判する」を読んでいただきたい。
 文在寅大統領は年頭の記者会見(1月10日)で、「政府が司法府の判決に関与することはできない。政府は司法府の判決を尊重すべきだ。…これは韓国政府が作り出した問題ではない。日本政府が謙虚な立場を持つべきだと思う」と述べ、日本の自制と真摯な対応を求めた。
 なぜ韓国側が三権分立遵守に言及したのか。それは安倍政権側が「判決は暴挙であり、国際法に基づく国際秩序への挑戦だ」「判決確定の時点で、韓国側により協定違反の状態が作り出された。この違反状態を見直すべく責任を負うのも当然ながら韓国側にある」と、1965年の日韓協定で強制徴用問題は完全に終わったというエセ論理を展開し、韓国大法院判決を認めず、韓国の司法に介入し、補償は韓国政府がなすべきであるという、理不尽極まりない責任転嫁の発言を繰り返しているからである。立法・行政をチェックするところにある三権分立下における司法の役割すら全く理解できていないのが安倍政権である。
 さらに韓国大法院判決以降に日本側がとった対応は度し難いものがある。1月に政府間協議を、5月に日韓に第三国の委員を加える仲裁委員会を、6月に第三国のみで構成される仲裁委員会設置を要請した。これらすべてが日本の自己免責と韓国への責任転嫁のための提案でしかない。よって韓国の同意を得るべくもないのは当然のことだ。
 一方、韓国側は日本との外交的協議を呼びかけ、大法院判決の上に立って、6月には両国企業の自発的財源で賠償額を出し合う案を提案したが、日本政府はこれを直ちに拒絶。これら日本の対応のあれこれすべては、先の日帝の侵略と植民地支配の責任から逃げ回り、植民地支配は合法であったという厚顔無恥な居直りから生み出されたものだ。
 元々、徴用工訴訟は、重大な人権侵害を受けた被害者が救済を求めて起こした訴訟である。この問題の解決には,被害者個人の被害が回復されなければならない。そのためには日本製鉄など日本の企業が大法院判決を受け入れ、人権侵害の事実と責任を認め、被害者に真摯に謝罪と賠償を行うことが必要である。日本政府は、1910年の韓国併合、1942年の「朝鮮人内地移入斡旋要項」と1944年の「国民徴用令」による徴用の不法を自覚した上で、徴用工問題の真の解決のための取り組みを支援すべきであるである。すべて韓国政府と司法の問題ではない。日本の政府と企業の問題である。

「戦争できる国づくり」のために文在寅政権の追い落としを狙う
 今回の3品目の輸出規制措置は、強制徴用賠償判決に対する経済報復という性格に留まらない。これで韓国側が折れないなら、トランプ張りの関税引き上げ、送金規制、ビザ発給の厳格化(現在韓国からの訪日観光客はノービザで入国できる)など、さらなる「韓国たたき」のエスカレーションを日本は準備している。
 しかもこの間の、12・28「慰安婦」合意破棄と「慰安婦」財団の解散、海上自衛隊機によるレーダー照射問題、福島原発事故に関連した日本水産物輸入禁止措置とWTOでの日本の敗訴、その報復措置としての韓国産ヒラメの衛生検査の強化等を通して、韓国を口汚く罵り、「無礼」な国として貶め、日本国内に「嫌韓」「反韓」イメージ作りに躍起となってきた。しかも日本メディアは政府の発表のままを垂れ流し、否応なしにこの傾向を助長している。
 こうした流れの先にあるものは、トランプの対ベネズエラ経済制裁や対イラン経済制裁を見れば明らかだ。経済制裁による歴史認識での韓国の屈服であり、日本の植民地支配の不法性を葬り去ることであり、今後この歴史認識について韓国の口を黙らせるためである。安倍首相と閣僚達は「文政権相手にせず」との姿勢を前面に押し出している。韓国との話し合いをかたくなに拒否し、一切相手にしようとしない。この問題で韓国経済に大打撃を与えて韓国国内に文政権に対する不満をあおりたて、文在寅大統領を親北朝鮮・従北左派政権と罵倒してきた韓国内の保守勢力と結託して、政権から追い落とす「レジーム・チェンジ」を狙っているのである。
 安倍首相は、日本国内の反韓感情を先頭に立って煽り立てて、危険極まりない民族排外主義的感情を自分の支持率上昇、憲法改悪に結びつけようとしている。安倍政権の「改憲」と「戦争のできる国づくり」のためには、国民の日本に対するプライドをくすぐりながら、愛国心を鼓舞するイデオロギー操作が不可欠である。その過程において、韓国が持ち出す歴史認識の問題が目の上のたんこぶのように妨げとなるからである。だが、この日本の狙いは、朴槿恵大統領を弾劾訴追による罷免に追い込み,文在寅政権を生み出した韓国の民衆全体を敵視するもの、韓国人民を愚弄するものに他ならない。

日韓で連帯した運動を
 韓国内の強制徴用被害者団体は、日本の経済報復に対し怒りを露わにしている。「私たちが訴訟を進めた理由は、日本と韓国が後世に再び戦争の苦しみを残してはいけないと考えたからだ。日本の安倍政権は今、韓国の最高裁判決を無視し、韓国を植民地とみている。参院選挙を控えて自分の政治的利益のために韓日間の対立を煽る安倍政権に強く警告する。これ以上歴史問題を国内政治に利用するな」。
 同時に、韓国人民の中から日本製品販売中止・不買運動が国内に急速に拡散している。7月の韓国の世論調査では「現在、不買運動に参加している」が55%、「不買運動に参加する」が72%、中でも30代から40代女性が90%以上と極めて関心が高い。日本国内では「激高しやすい国民」「感情的行動」と揶揄する論調もあるが、過去の不買運動に比べ落ち着いた形で展開している市民の自発的な行動である。朝鮮民族の誇りに泥を塗る安倍政権の一連の不当行為に対する市民の怒りは収まることはないだろう。
 日本国内でも、いくつかの市民団体が声明を発表するなど、経済報復に反対する運動が始まっている。7月25日には、「韓国は『敵』なのか」と題する共同声明が発表され、賛同署名が募られている。輸出規制強化について、世論調査では過半数の国民がを支持し、野党を含む大半の政党がに理解を示している中で、日本国内から安倍政権の経済報復に異を唱えて声を上げる、重要な行動だと考える。
 日本と朝鮮半島との確かな歴史認識の上に立ち、自国の反韓イデオロギーを跳ね返し、日韓の連帯した運動の輪を広げていこう。

2019年8月2日
リブ・イン・ピース☆9+25