教職員、府民ら約800人が参加――「君が代」強制大阪府条例はいらん! 全国集会報告
橋下・維新の会の教育基本条例は「教育破壊条例」
絶対成立させてはならない
  
 「「君が代」強制大阪府条例はいらん! 全国集会」が9月24日午後、大阪府大東市のサーティホールで行われ参加しました。住道駅から会場までの道に右翼の街宣車が並び、「君が代」や軍歌を大音響で鳴らしながら、集会参加者に向かって「非国民」などとがなり立てている様子は、むしろ橋下・維新の会の愛国心教育が進められたらどんな世の中になるのかを雄弁に語っているように思いました。

 開会前のプレ企画として高校演劇部が演じた『歌わせたい男たち』の一部が上映されていました。この演劇は永井愛の傑作で、卒業式での『君が代』斉唱を巡る学校現場を描いた喜劇です。二兎社が上演し一躍有名になりました。この戯曲を高校生が上演したということにとても勇気づけられました。
「歌わせたい男たち」を観て(リブインピースブログ)


「教育基本条例は教育破壊条例」と語る高橋哲哉さん
 開会の挨拶と基調報告は、「『日の丸』・『君が代』強制反対ホットライン大阪事務局代表」の黒田伊彦さんがおこないました。橋下知事の政治を「ハシズム」と名付け、敵を作り出して大衆の閉塞感や不満を解消する幻想によって人気取りをするファシズム的手法との闘いを呼びかけました。
 つづいて、高橋哲哉さんによる発題、「『日の丸』・『君が代』強制条例と『教育基本条例』の思想」。高橋さんは、この条例は「教育基本条例」と名のっているが「教育破壊条例」に他ならないと述べ、教育に不可欠な“自由の空間”が奪われていくことに警鐘を鳴らしました。
 ――改悪された教育基本法にすら入っている「教育への不当な支配の禁止」をこの条例は反故にし、権力に対する縛りを完全に取り払うものである。知事から教育委員会、校長、各教職員へと上意下達のシステムが定められている。これは天皇制にうり二つであり、「大阪維新の会」というが、「維新」と言いながら実質「王政復古」である点も明治維新とよく似ている。しかし、橋下はこの主張を復古主義に基づいてではなく、民主主義の名において正当化している。条例では教職員の処罰規定が圧倒的で、子どもたちのことは「人材」としか見なされていない。「人間は材料じゃない」と言いたい。
 子どものために教育を守りたいという気持ちと「教育基本条例」が成立したときの計り知れない恐ろしさを強く訴えるものでした。この条例は教職員を対象としているが、結局強制され自由を奪われていくのは国民全体だという締めくくりはとても印象に残りました。

 高橋さんの発題の後は、大阪労働者弁護団事務局長の近藤厚志弁護士から、条例案が憲法違反であること、「君が代」に賛成する人でも「強制はよくない」という点では納得してもらえたという例を出し、身近な人々とも対話を通じて訴えていくことの重要性が訴えられました。

全国からの闘いの報告
 全国からは7名――組合に対する執拗な攻撃のかかっている北海道教組の方、不起立を貫き通した根津公子さん、東京、神奈川、愛知で弾圧に抗して闘っている方々、宮城の小学校教員――の報告がありました。宮城の小学校教員は、放射能の危険のあるプールの汚泥掃除を子どもたちにやらせて平気な校長と教育委員会を批判しながら、人間が作ったもので人間が住めないようになっているのは、原発もこの条例も同じであると訴えました。

 後半の部は、東京で不当分限処分の撤回を求める原告の一人でもあるジョニーHさんによる歌とトークで始まりました。脱原発で積極的な活動を続けている制服向上委員会の『ダッ!ダッ!脱・原発』をもじった『ダッ!ダッ!脱・君が代(大阪)』など様々な替え歌を披露して会場を沸かせていました。
 野田正彰さんからは『ハシズム(橋下)を批判する』という発題がなされ、ヒトラーの精神分析を例に出し、精神科医の立場から橋下知事についての評価がなされました。

 続いて保護者、大学生、労働組合などの立場からの発言がありました。小学生と中学生の二人の子どもを持つ保護者は、学校現場のことを何も知らない人がいきなり管理職となって教師を評価するようになって教師たちが子どもの方ではなく管理職の方を向くようになることが一番心配だと訴えました。大学生は、集会にはまだまだ若者の参加が少ないことを指摘し、一人一人が心から集まりたいと思えるような運動を作り上げていく必要性を訴えました。組合の労働者は、かつて自分の子どもの卒業式で不起立をした思い出などを語りながら、原点に戻って排外主義の批判を訴えていかなければならないと述べました。
 学校現場からは3人の教師からの発言がありました。管理教育が強行されている学校での良心的教師との出会い。「モンスター・ペアレンツ」と言われるが、親の学校への不満や抗議を真摯に受け止めることで築く人間関係は、条例案にあるような抗議を禁止することではなしえないことなど、現場での経験に基づく体験が紹介されました。また「日の丸」・「君が代」問題にゲームセットはないと、『明日へのマーチ』の替え歌で闘争への意欲が表明されました。

 最後に会場から8名の発言がありました。東京都でこの春たった1人の処分者となった人は、「東京都での処分者がゼロにならなくてよかった」とユーモアをもって自分の活動を紹介しました。ココロ裁判の原告の一人は、教師の処分の先に子どもへの弾圧があると警鐘を鳴らしました。小学校で障害児学級の担当をしている教員からは、天皇制が存在する限り「日の丸」・「君が代」は侵略のシンボルであり続けており、民主主義を貫くことの必要性が力説されました。広島からは戦前の軍国主義教育は人間を鬼にし、その教育が今もまた始まっているとの訴えがありました。支援学校の教師でもあり、キリスト教徒でもあるという人からは、戦争中に日本のキリスト教会が韓国の教会に宮城参拝を押しつけた歴史を反省し、人を神とする「君が代」に反対していくことが表明されました。次の人もクリスチャンで、賛美歌と「君が代」の両方を歌うことはできないと述べられました。点字の印刷に携わる人は、「ルールはおれが決める」と言う橋下に対して、せっかく見つけた仕事である私の畑を踏み荒らすことは認めないと怒りをあらわにしました。最後に大阪高教組に所属する教員からは、「行動すると逆手に取られる」と弱腰の組合執行部に対して、組合員の署名を集めて臨時大会を開くことが決まったとの報告がなされました。

 最後に集会には記名者数で760人余が結集し、「「君が代」強制大阪府条例をなくせ!橋下知事による「教職員処分」の条例化を認めない!」署名は1万筆を越えたことが報告されました。9月27日にはこれらの署名をもって議会に請願をおこなう方針が提起され、集会決議が万雷の拍手で採択されました。

2011年9月26日
リブ・イン・ピース☆9+25