橋下知事は、朝鮮学校無償化を無条件で認めよ
度重なる民族差別・人権侵害発言を撤回し、謝罪せよ

在日韓国・朝鮮人を狙い撃ちにした教育差別・民族差別をやめよ
 鳩山政権と橋下大阪府知事が行おうとしていることは、在日韓国・朝鮮人の子どもたちの教育を受ける権利を踏みにじることで、新たな民族差別を行うことである。在特会なる団体が朝鮮人学校に押しかけ、グラウンドや教育備品を破壊し、民族差別感情に乗じて人権を踏みにじっていることと全く変わらない。いやむしろそれ以上に悪質である。政府も大阪府も、在特会の反人権・民族差別キャンペーンや暴力行為を封じるどころかそれに便乗し、予算権限を使い権力を濫用して朝鮮人差別を公然と行おうというのである。
 国連の人種差別撤廃委員会は3月16日、高校無償化の対象から朝鮮学校を除外することを人種差別として強い「懸念」を表明した。在日コリアンや中国人の子弟の学校が「公的支援や補助金などの面で差別的扱いを受けている」と指摘し、朝鮮学校の除外問題についても「子どもたちの教育に差別的な影響を及ぼす行為」の一つとして言及し、日本政府に対して「教育の機会提供に一切の差別がない」状態を確保するよう勧告したのである。
高校無償化:国連委、朝鮮学校除外を懸念 差別改善を勧告(毎日新聞)
Committee on the Elimination of Racial Discrimination Seventy-sixth session(OHCHR)

 橋下知事は、国による高校無償化に上乗せして府が独自に実施しようとしている私立高校無償化から朝鮮学校だけを対象外にするだけでなく、これまで府内の朝鮮学校11校に支給してきた「外国人学校振興補助金」(生徒1人当たり年間約7万円)の支給を取りやめるとしている。そして橋下は、朝鮮学校に対して、“カネが欲しければ北朝鮮や朝鮮総連との関係を断て”などと要求するまでに至っているのである。絶対に許してはならない。

公然と民族差別・人権侵害発言を連発する橋下知事
 私たちは、大阪府知事によって白昼堂々、メディアを通じて何百万人もの前で、公然と行われている差別発言を徹底して糾弾しなければならない。
 橋下は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のことを「暴力団」、「ナチス」、「不法国家」となじり、朝鮮学校は「暴力団とお付き合いのある学校」だとまで言っている。だが北朝鮮は国連にも加盟しているれっきとした主権国家である。事実として「暴力団」と同じではない。「不法国家」でもない。日本は独自の判断で国交をもっていないに過ぎない。北朝鮮はまた、ホロコーストを行ったナチスと同じではないし、歴史的事実として間違っていることは言わずもがなだ。
 橋下知事が言う拉致問題は、外交問題の俎上に乗せ、国家的な対話と交渉の進展によって解決していくべき課題である。拉致問題はその解決のために真剣に取り組むべき課題であり、差別や排除のための宣伝の手段に使うようなことがあってはならない。橋下知事がやっていることは、拉致問題、暴力団、ナチス、不法国家というような幼稚な連想を積み重ねることで、北朝鮮=とんでもない国というイメージを膨らませ、人々の差別感情を増幅させているだけだ。それを朝鮮人バッシング、援助の切り捨てのために利用しているのである。全く許し難い。
 府のトップが公然たる民族差別、人権侵害を繰り返して平然としている。そうした発言が批判もされず、放置されている。全く問題にしないメディアの責任は重大だ。露骨きわまりない民族差別発言を批判もせず、面白おかしく垂れ流している。同時に、それを異常とも思わず受け流してしまう日本社会も問われている。
「北朝鮮と暴力団は基本的に一緒」助成問題語る橋下知事(朝日新聞)
橋下知事「北朝鮮はナチスと同じ」 朝鮮学校無償化問題で(産経新聞)

 橋下知事の本心は「(朝鮮学校が)不法な国家体制とつきあいがあるなら、僕は子どもたちを取り戻し、ちゃんと正常な学校で学ばせる。そうしないと朝鮮の皆さんに対する根深い差別意識が大阪府からなくならない」という発言に端的に表れている。差別がなくならない原因は、「正常でない」学校で学ばせている在日の人々にある。橋下が気に入らない北朝鮮と朝鮮総連と関係のある朝鮮学校で学ぶような者に援助をしてやる必要はない、不利益を被るとしてもそんな学校に通ってるのが悪い、ということだ。おまえの子どもが差別されるのは、朝鮮学校なんかに通わせているからだ。朝鮮学校に行く奴が悪い。そんなやつは徹底して差別してやる。援助もしない。こんな論理がまかり通ればどうなるのか。自分が気に入らない特定の民族団体とのつながりを理由に無償化しないなど、民族差別以外のいったい何だというのか。
 これは、9.11以降米国で、アラブ・イスラム系の団体がバッシングを受け、アラブ・イスラム国出身というだけで逮捕され、拷問され、投獄され、職を奪われ、差別と排除を受けた米国のマイノリティへの扱いそのものである。
 橋下知事の発言には、60年以上にわたって在日韓国・朝鮮人の人たちによって作られてきた、また一部の日本の支援者によって支えられてきた朝鮮学校を締め上げ、あわよくばつぶしてしまおう、社会から抹殺してしまおうという悪質な意図さえ含まれている。

 「民族差別ではない」などと厚顔にも語るその同じ口で、まさに今煽っている反北朝鮮キャンペーンこそが、在日韓国・朝鮮人の人々、中でも朝鮮学校に通う子どもたちへの嫌がらせ、犯罪行為を助長してきたのだ。橋下は、度重なる民族差別・人権侵害発言を撤回し、謝罪すべきである。

橋下知事は、朝鮮学校に対する卑劣な要求を撤回すべき
 3月12日、大阪朝鮮高級学校(東大阪市)などを訪問した橋下知事は、大阪朝鮮学園の辛正学理事長ら学校関係者と会談し、「北朝鮮や朝鮮総連と一線を画せ」と居丈高に要求した。
 朝鮮学校の教職員や生徒たちは、メディアの監視のもとで、橋下知事を「歓迎」し朝鮮学校の良さを精一杯アピールすることを強いられた。そもそもこのような訪問自身が批判されなければならない。橋下知事が、助成の可否の判断をする特権を持っているかのように描き出すメディアが批判されなければならない。
 本来、朝鮮学校には、橋下知事と面談する義務も要求について検討する義務もない。大阪府の各種学校認可や助成金手続の際にカリキュラムが提出されているはずだ。それによって府は、朝鮮高級学校の教育課程が高等学校に相当することを確認しているはずである。にもかかわらず、朝鮮学校を無償化しないというならば、その理由を説明しなければならないのは大阪府の側である。朝鮮学校の側が知事の「尋問」を受け入れ、その「お眼鏡にかなう」対応をすることが無償化の条件になるというのは、全く逆だ。必要のないことを朝鮮学校に強いる、そういう空気を作り出している日本社会の問題である。

 日本政府は、朝鮮学校を各種学校扱いし、冷遇してきた。そのため、卒業しても国立大学の受験資格を得られず、各種スポーツ大会からは閉め出され、通学定期としての割引も受けられなかった。これらは、本来あって当然の権利であったが、朝鮮学校にとっては、長く、粘り強い運動の末に、ようやく獲得することができたものである。朝鮮総連はこうした運動の中で大きな役割を果たしてきたという歴史的事実がある。
 北朝鮮との関係も同じだ。金正日氏らの肖像画を外せという知事の要求に対して、学校側は、日本政府が一切援助を行わない中、長年学校を支えてきた北朝鮮からの支援金に対する感謝を表したものと説明した。特に、経済的に厳しい中で学校を作ってきた在日1世の心情を考える必要があると答えた。
 だがそもそも、無償化問題と全く関係のない朝鮮総連や北朝鮮の関係を問うことそのものが許されない。日本政府と橋下知事がすべきことは、日本の植民地支配や侵略戦争、差別と抑圧の歴史を顧み、在日韓国・朝鮮人と子どもたちを不当に劣悪な条件に放置し、教育を受ける権利を奪ってきたことを真剣に反省し、国や府として十分な助成を行うよう政策転換することである。

 会談の最後に橋下知事は信じがたい恫喝の言葉を発した。「自由を求めるのか、公金を求めるのか」と選択を迫ったのだ。これこそ在日韓国・朝鮮人を愚弄する暴言である。「カネが欲しければ自由を売り渡せ」、オレの言う通りにしろということである。カネを武器に、生徒たちを人質にして、朝鮮学校や朝鮮総連をねじ伏せようというのだ。卑劣極まりないやり方だ。 橋下知事がやろうとしていることは、在日韓国・朝鮮人から自由を奪い、朝鮮学校や民族教育のあり方に好き勝手に介入しようというものだ。こんなことを許してはならない。橋下知事は発言を撤回し、謝罪すべきである。
「朝鮮学校、総連と一線を」橋下知事 学校側は検討約束(朝日新聞)

無償化からの排除は、民族教育の保障に反する
 民族教育の権利は、国際人権規約B規約、子どもの権利条約、人種差別撤廃条約等によって保障されている。これらの国際条約および教育を受ける権利を定めた日本国憲法、「教育の機会均等」を保障した教育基本法から、日本政府と地方自治体には、民族教育を受ける機会を保障する義務がある。
 冒頭で紹介した国連人種差別撤廃委員会は日本政府に対し、アイヌ語や琉球語を義務教育で教えるべきだと勧告した。現行の学校教科書について「少数者」の歴史や文化をより反映したものに見直すことも勧告した。少数民族、被抑圧民族の権利は十分に保護され、尊重されなければならないのである。政府や知事がやろうとしていることは、これに真っ向から対立している。
 民族教育の内容に条件を付けることは許されない。朝鮮学校独自の教育内容──朝鮮語という母国語、植民地支配の歴史、抗日闘争の誇るべき歴史、日本帝国主義の戦争犯罪など──を理由に無償化から排除するのは許されない。ましてや、北朝鮮や朝鮮総連との関係がどうとか、肖像画がどうとか、教育の内容とはまったく関係のないことを云々するのはもってのほかである。
 既に衆議院を通過した高校無償化法案が成立すれば、4月から公立でも私立でも高校相当の各種学校であっても、通う生徒1人あたり、全日制で約12〜24万円/年が支給される。にもかかわらず、朝鮮学校の生徒たちだけは放置されることになる。「第三者機関の設置」も「夏以降への結論の先延ばし」も、朝鮮学校に対して一層の苦渋を強要するものであり、結局は支給しないための方便でなのである。先延ばしするのではなく、今すぐ支給を決定すべきである。
朝鮮学校、結論は夏以降に=高校無償化で−文科相(毎日新聞)

 橋下知事は、既存の補助金さえも剥奪しようとしている。このような理不尽を黙って見過ごすことはできない。朝鮮学校を守り、十分な助成を行わせることは、何よりも日本人の責任である。橋下知事の朝鮮学校への不当な介入に抗議し、朝鮮学校無償化を無条件で認めるよう要請しよう。度重なる民族差別・人権侵害発言の撤回と謝罪を要求しよう。

抗議・要請先:大阪府「府政への意見」
 TEL:06-6910-8001 FAX:06-6910-8005
 https://www3.shinsei.pref.osaka.jp/ers/Uketuke/Form.do?tetudukiId=2008040001

2010年3月25日
リブ・イン・ピース☆9+25