うるま市での陸自訓練場新設とミサイル部隊の新設への保革を超えた反対運動

市街地への陸上自衛隊の訓練施設計画撤回3・20に1200人
 沖縄県うるま市のゴルフ場跡地への陸上自衛隊の訓練施設の新設は、地元住民や自治会にも、うる
ま市、県にも事前に説明もなく突然発表された。数十億円の用地取得費用が先日衆院を通過した来年度予算に計上され、地権者との交渉が進められているがまだ契約には至っていない。
 計画地周辺は閑静な住宅地で、年間4万人が訪れて、子供たちが自然を学ぶ「県立石川青少年の家」にも隣接している。訓練予定地に隣接する2自治会から上がった反対の声は、石川地区全自治会に加え、うるま市の全63自治会でつくる自治会長連絡協議会での全会一致の反対に広がった。保革を超えて計画断念を求める「元石川市議会議員OB会」が設立され、保守系のうるま市長やうるま市議会多数派に圧力をかけた。6月県議選への影響を恐れた自民党や保守系の市民、議員も巻き込み、瞬く間に保革結集による計画に反対する『オールうるま』の陣形が形成された。
 玉城デニー知事は、明確に計画の白紙撤回を要求した。2月28日 自民党県連も、白紙撤回にかじを切った。当初、態度を表明していなかった中村正人うるま市長も3月2日、防衛局に白紙撤回を申し入れた。市長は何らかの自衛隊施設を造ること自体「あってはならない」とも踏み込んだ。3月8日、県議会は全会一致で計画の白紙撤回を求める意見書を採択した。
 対中国戦争を想定した南西諸島での自衛隊の基地やミサイル部隊の新設が相次ぐ中で、保守派も含めて一致して、自衛隊施設の新設に反対を表明したことは初めてのことだ。3月10日には17団体が結集して「陸上自衛隊訓練場設置計画の断念を求める会」が結成された。 共同代表の伊波常洋氏は「白紙撤回の考えはない」との姿勢を崩さない政府を批判し、「相当長い闘いになると思うが、保革を超えて多くの団体が結集した。この力で白紙撤回させるまで頑張ろう」と呼びかけた。 宮森小などへの米軍ジェット機墜落事故を語り継ぐ「石川・宮森630会」の久高政治会長もは共同代表の一人となった。事務局長の伊波洋正氏も小学1年生だった1959年6月、宮森小で起きた米軍ジェット機墜落事故に遭遇した体験をもつ。
 3月20日には「住宅地への自衛隊訓練場建設NO!市民集会」に1200人が集まった。集会はうるま市全体への説明会の要求とともに「土地取得の断念」を求める決議を採択した。集会にはうるま市長も参加し、「計画の白紙撤回に向け力を合わせて最後まで頑張る」と発言した。玉城デニー県知事は「教育施設に隣接する場所に訓練場を建設する計画は認められない」とメッセージを送った。

「白紙撤回はない」とする防衛省
 石川は保守地盤で、自衛隊には比較的理解があるとされていた。 防衛省は、予想外の反発に、やむなく開催した訓練予定地に隣接する旭区、東山区の2自治会に限定した説明会で、当初想定していた地対艦・地対空ミサイル部隊の発射機展開 ,ヘリの離着陸や空包を用いた訓練を実施しないと方と説明を変え、県民の怒りを鎮めようとした。このことがかえって住民の怒り油を注いだ。訓練には夜間の行進があり、通常は夕方から翌早朝まで40キロ近く歩くとの説明があった。車両は住宅密集地を避けて走行するとしたが具体的なルートは「検討中」とされた。住民からは「住宅地に近過ぎる」「造られてしまったら口出しできない」と批判の声が上がった。
 沖縄防衛局は、県議会の申し入れに対して「用地の取得後 計画を見直す」が、白紙撤回することはないと突き放した。木原防衛大臣は、衆院安全保障委員会で「結論を得られた段階で地元の皆様に再度、丁寧に説明していく」と述べた。「丁寧な説明」ではなく、圧倒的多数の地元の住民の意志を尊重し計画を断念すべきだ。県議団は3月下旬に防衛大臣への要請をする予定だ。
 政府防衛省は、自衛隊の軍事施設への反対運動の波及を恐れている。計画断念に追い込むことは容易でないが、住民の強固な意志が継続し、全国で反対の声が大きくなれば断念に追い込むことは可能だ。この闘いは、代執行による辺野古の埋め立て工事の強行への抵抗、事故原因が解明されないままでの米軍と自衛隊にオスプレイの飛行再開への抗議、石垣、宮古、与那国等で続く抵抗運動に影響を及ぼす。さらに弾薬庫問題等軍民分離の原則に反する全国の自衛隊の軍事施設の強化に反対する運動にも波及していく問題だ。

陸上自衛隊勝連分屯地へのミサイル部隊の新設の強行
 うるま市では、この問題と並行して、陸上自衛隊勝連分屯地に、先島諸島や奄美大島のSSM部隊を束ねる 地対艦ミサイル(SSM)の連隊本部(第7地対艦ミサイル連隊 )とミサイル中隊が3月21日新設され、3月30日には開設の記念行事が強行される予定だ。ミサイル部隊を「12式地対艦誘導弾」を運用 が予定され、さらに将来は敵基地攻撃可能な長射程の「能力向上型」への置き換えが予想される。3月10日には「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」 の呼びかけで車両が陸揚げされた中城湾港や分屯地前で阻止行動が行われた。中城湾港には早朝から150人の市民が結集し抗議の声が挙げられた。分屯地前では50人の市民がスクラムを組んで座り込みを行った。機動隊はこれを強制排除。3月14日の未明には12式地対艦ミサイルの発射機を積んだと見られる車両を那覇基地から公道を通って同分屯地へ運び入れた。
 陸上自衛隊那覇駐屯地にある第15旅団を師団(独立して作戦を遂行する単位)に格上げし、普通科連隊を1つから2つにして自衛隊員を大幅に増強する。うるま市への訓練施設の建設は、これら一連の動きの一環だ。
 本土ではほとんど報道されない沖縄の軍事要塞化と抵抗運動の動き。三上智恵監督最新作「戦雲」(いくさふむ)で示される事態が現在進行形で進んでいる。うるま訓練場計画に対する住民に不安と怒り、計画断念の闘いを断固支持する。軍事要塞化のひとつひとつの動きの抵抗していくことが重要だ。沖縄と連帯して九州をはじめ本土の自衛隊、米軍基地の強化に反対していこう。対中戦争準備全体に対する「全国連帯」の闘いにつなげていこう。

2024年3月21日 NOW