稲田防衛相は辞任せよ!
南スーダンPKO自衛隊部隊を全面撤退させるべき!

「日報」開示請求を黙殺・情報隠蔽して、自衛隊派遣を強行
 南スーダン首都ジュバで2016年7月に、政府軍と反政府勢力との大規模な衝突が起き、戦車も繰り出され、死傷者数百人、PKO派遣の中国兵士2人の死亡が出た。自衛隊の「日報」はこの生々しい状況を「戦闘」と記述していた。政府はこれを隠してPKO部隊を派遣していた。
 防衛省はジャーナリスト布施祐仁氏の「日報」の情報公開請求を10月3日に受理していた。しかし、11月15日、安倍政権は南スーダンの状況を隠蔽したまま、新任務「駆けつけ警護」を付与する実施計画を閣議決定した。11月20日、稲田防衛相の訓示をうけ、「駆けつけ警護」が初めて付与された部隊を出発させた。政府が自衛隊PKO部隊派遣を行う上での情勢判断の根拠としたのは、国連の報告でも自衛隊の「日報」でもない。稲田防衛大臣のわずか一日の自衛隊宿営地視察(10月8日)だけである。
 政府・防衛省は、陸上自衛隊南スーダン派遣部隊の「日報」開示請求を黙殺・情報隠ぺいしてPKO派遣を強行したのである。

戦闘の生々しい状況報告と黒塗り文書
 12月2日付で防衛省は、「日報」を破棄していたとして不開示を決定、稲田防衛相に報告した。河野太郎衆議院議員が防衛省に問いただすと、12月26日、「日報」の電子データがあったことが判明し、さらに防衛省はその1か月後の1月27日に稲田防衛相に報告したという。そして2月6日に河野議員に文書開示した。河野議員が7日に発表したことでやっと国会の論議の場に提出された。開示までの経過を見ると、国民に対しても、国会に対しても悪質で意図的な隠ぺいを行ったとしか考えられない。
 開示された「日報」は、重要な部分が黒塗りにされて隠されている一方、戦闘の生々しい記述がある。「SPLAとSPLA-iOとの戦闘が生起」「宿営地周辺での・・・流れ弾への巻き込まれ、市内での突発的な戦闘への巻き込まれに注意」「近傍にて砲迫含む銃撃戦」「■■に弾着■■が負傷」「■■が攻撃」「激しい銃撃戦」「TK射撃含む激しい銃撃戦」「宿営地5、6次方向で激しい銃撃戦」「宿営地南方向距離200トルコビル付近に砲弾落下」等々(注:SPLA=政府軍とSPLA-iO=反政府軍。■■は黒塗り部分)
 また、「和平合意の進捗は進展が乏しく、ジュバにおける両勢力の戦闘により、さらに時間を要するものと思料」との記述もある。
【全文】自衛隊は南スーダンで「戦闘」していたのか。黒塗りの日報、公開します

 すなわち、自衛隊の宿営地が脅かされ、自衛隊員の負傷・巻き込まれの危険が切迫するほどの緊迫した状況が生起し、「停戦合意」とはほど遠い、南スーダンの現状が報告されているのである。完全にPKO派遣5原則が崩れていることを物語っている。
※PKO参加5原則(外務省)
(1)紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。
(2)当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。
(3)当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。
(4)上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は、撤収することが出来ること。
(5)武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。

稲田防衛相の答弁は立憲主義の否定
 さらに稲田防衛相の驚くべき発言が飛び出した。2月8日の衆院予算委員会で、「戦闘」という記述があることについて民進党議員から認識を問われた稲田防衛相は、“一般的な用語では戦闘だが、法的な意味では武力衝突”“憲法9条上の問題になるので「戦闘」ではなく「武力衝突」という言葉を使っている”などと答弁したのだ。
稲田氏の発言は以下。
 「事実行為として武器を使って人を殺傷したりものを壊す行為はあったが、国際的な武力紛争の一環として行われるものではないので、法的意味における戦闘行為ではないという意味だ。国会で答弁する場合には、憲法9条上の問題となる言葉を使うべきではないということから、私は武力衝突という言葉を使っている。(8日 衆院予算委)

 安倍政権は、「戦闘」を「国際的な武力紛争の一環として行われる、人を殺傷し、または物を破壊する行為」と定義している。憲法9条に基づくPKO参加5原則は、「紛争当事者間の停戦合意」を派遣する条件として定めている。PKO「日報」に記載されている「戦闘」が南スーダンにあると認めると、憲法やPKO派遣5原則に抵触し、PKO派遣は出来ないことになる。「SPLAとSPLA-iOの戦闘」とは、まさしく「国または国に準ずる組織を紛争当事者とする戦闘」である。
 すなわち稲田氏は、“戦闘という言葉を使ってしまうと憲法9条違反で自衛隊を撤退しなければならなくなるので、そういう言葉は使わない”と言っているのだ。こんなことが許されるなら、自衛隊宿営地への砲撃や内戦や大量殺りくやありとあらゆる事態がおこったとしても「不時着弾」「武力衝突」「死亡事象」などと言い換えて、自衛隊海外派兵にしがみ続けようとするだろう。

政府・自衛隊制服組が組織ぐるみで事態の隠蔽と捏造を指示 
 それだけではない。稲田発言が問題になった翌9日、河野克俊統合幕僚長は記者会見で、「日報の表現を制約するつもりはない」とした上で、「戦闘行為は即時に自衛隊の活動に大きな制約がかかる。法的に戦闘という意味を自衛官として知っておく必要がある」と指摘し、「戦闘という表現が議論を招くことを踏まえて日報を作成するよう部隊に指示を出した」と言ったのである。つまり、現場の自衛隊員に対して、“日報作成時に、問題になるような言葉は使うな”と命じたというのだ。これは政府と自衛隊制服組が、組織ぐるみで、国民の目から南スーダン自衛隊PKOの実態を覆い隠そうとしているということに他ならない。
PKO部隊に法的意味指導=目撃状況を「戦闘」−南スーダン日報問題で制服組トップ

稲田防衛相は辞任せよ!自衛隊は南スーダンPKOから全面撤退せよ。
 朝日新聞報道によると、南スーダンについて国連が「各地で治安が悪化し・・「壊滅的」な規模に達している」とする機密文書を国連安全保障理事会に提出していたとある。AFP通信が入手した文書によると「政府軍や反政府勢力の指揮下で次々と民兵集団が台頭しており・・」と指摘しているとある。このような南スーダンの現状は、「戦闘」が一般的な意味か、法的な意味かなどと答弁している状況ではない。
 2月10日、国会前では、市民等数百人が「大臣やめろ!」と抗議した。政治学者や野党議員は「憲法に抵触する行為も言い換えれば合憲になるのか」「立憲主義の否定だ」と声をあげている。15日、民進、共産、自由、社民の野党4党は稲田防衛相の辞任を要求する方針で一致したと発表した。
 私達も、憲法改悪を許さず、戦争する国にさせないために、それぞれの持ち場から、声を上げていこう。稲田防衛大臣を辞任させよう。南スーダンPKOから自衛隊はいますぐ、全面撤退せよ。

2017年2月17日
リブ・イン・ピース☆9+25