民主主義、立憲主義を踏みにじる閣議決定強行を糾弾する (1)安倍政権は、7月1日集団的自衛権行使を認める閣議決定を強行しました。 憲法9条に基づき集団的自衛権を厳しく禁じてきた戦後の「安保政策」を180度変える暴挙です。自衛隊を海外派兵し武力行使することを認める、まさしく「戦争する国」への大転換です。憲法無視、憲法破壊を許すことはできません。閣議決定を厳しく糾弾し、撤回を要求します。 安倍首相と自民党は昨年、「自民党改憲草案」をもとに96条の改憲要件緩和を皮切りに憲法の全面的「改正」を強行しようとして世論の猛反発を受け挫折しました。 かわって安倍首相は、これまで「専守防衛」を基本に積み上げてきた内閣法制局の憲法解釈を根本的に覆す方針に転換しました。それを国民投票でもなく、国会での議論も経ず、密室協議によって公明党を丸め込み、わずか18人の閣僚の賛成によって憲法の「平和主義」−−「戦争をしない国」をあっさりと捨て去ったのです。私たちはこのような暴挙を断じて許すことはできません。 信じがたいことに安倍首相は、“解釈改憲ではない”“従来の解釈の延長上にある”“解釈を整理しただけ”“9条と武力行使は矛盾しない”などと開き直っています。紛れもない解釈改憲、憲法破壊です。 (2)閣議決定直前になって首相官邸前には連日1万人を超える人々が詰めかけ、夜中まで反対の声を上げ続けました。中学生・高校生を始め、多くの若い人たちが参加しました。全国各地で連日反対集会がもたれました。全国の地方自治体の1割を超える190の県市町村で反対・慎重審議を求める決議があがりました。 日本が「戦争する国」になっても閣議決定した年寄りの政治家たちが戦場に行くわけではありません。若者たちが真っ先に戦場に送られ、殺し殺されることになります。国内政治では、医療・介護、福祉、年金、教育などことごとく生活が切り崩され、ますます過酷な労働、低賃金、不安定な雇用にたたき込まれていっています。将来への不安が高まります。国民生活をないがしろにして戦争戦争と血道を上げる安倍政権に対する怒りの声と行動に他なりません。 世論は反対が賛成を大きく上回っています(日経・テレビ東京(6/27〜29) 集団的自衛権反対50%、賛成34%、解釈変更での行使容認は賛成29%、反対54%。毎日新聞(6/27〜28) 賛成32% 反対58%。朝日新聞の7月4、5日の全国緊急世論調査では、集団的自衛権閣議決定が「よくなかった」50%、「よくなかった」は30%など)。 (3)日本国憲法は「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有す」ることを謳い、その保証として9条は、日本が戦争をすることも、武力による威嚇や行使をすることも、戦力の保持も、交戦権も永久に放棄しています。日本がかつて行った侵略戦争への反省から、戦争の惨禍を二度と引き起こさないという強い決意のもとで生まれたものです。9条の放棄は、侵略戦争の反省の放棄、歴史歪曲と一体のものです。安倍首相は条文をつまみ食いして「自衛権を認めていないとは考えられない」などと主観を述べていますが、日本国憲法が成立した厳然たる歴史的事実に向き合うべきです。集団的自衛権行使容認強行は、安倍首相が侵略戦争を美化し「靖国神社」に参拝し戦死者を英霊として顕彰する政治姿勢と一体のものです。過去の侵略戦争を反省しないだけでなく、再び同じ過ちを繰り返そうとしているのです。 歯止めなき米国の戦争への加担 (1)集団的自衛権は、なによりもまず「米国とともに戦争する権利」です。米国は朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争など数多くの戦争を行い、これらの国々を破壊し、甚大な被害を与えてきました。これらの侵略戦争はすべて「自衛」の名のもと、つまり「集団的自衛権行使」「先制自衛権行使」などによって正当化されてきました。集団的自衛権行使容認とは、このような戦争に自衛隊が参加し他国民を殺すこと、そして自衛隊員自身が血を流すことにほかなりません。 閣議決定は(1)戦争に至らない段階=グレーゾーン事態で自衛隊出動の迅速化、早期化による軍事的エスカレーションに道を開き、(2)「非戦闘地域「後方地域」の線引きを撤廃し、国連集団安保での国連軍・多国籍軍への後方支援を可能にし、PKO活動で駆けつけ警護や治安維持活動を自衛隊が行うことを可能にしました。(3)集団的自衛権では自衛権発動3要件なるものによって、武力行使の条件を根本的に転換しました。これまで「日本が武力攻撃された場合のみ、自衛権を発動することができる」としていたものを、「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し」と変えています。そして「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」には、日本が攻撃されていなくても戦争ができるようにしてしまっています。しかし「密接な関係」も「明白な危険」もあいまいで、その判断は時の政権にゆだねられています。したがって、海外での武力行使を政府の判断でどうとでも拡大できるようになっているのです。 (2)安倍首相は1日の記者会見で「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことはこれからも決してありません」と語りました。これは真っ赤なウソです。 閣議決定には、「戦闘地域」と「非戦闘地域」の区別や「武力行使との一体化」の禁止というこれまでの歯止めをなくすことがかかれています。従来の政府解釈では「戦闘地域」には自衛隊は派遣できませんでした。また、他国部隊に武器弾薬を供給することは“武力行使と一体となる」ことから禁じられていました。ところが閣議決定では「戦場」「戦闘地域」であっても“現に戦闘を行っていない他国軍部隊”には武器・弾薬を含めて物資を供給することができることになります。他国軍を守るために駆けつけて武器を使用すること(駆けつけ警護)ができるようになります。住民の鎮圧のために武器を使用することができるようになります(警察・治安活動への参加と任務遂行のための武器使用)。つまり自衛隊は、PKO派遣やイラク戦争のような戦争への派遣において、他国軍の戦闘部隊に武器弾薬を供給する平坦任務を担い武力行使・戦争と「一体化」し、治安維持のためにパトロールし、向かってくる敵には武器を使用する、そのような活動が可能となるのです。 「「現に戦闘を行っている現場」となった場合には支援活動を休止する」と書かれていますが、武器弾薬を供給している最中に、他国軍が戦闘を開始した場合、自衛隊はどうなるのでしょう。単に「支援活動を休止する」だけで済むはずがありません。支援中の自衛隊が「武装勢力」に取り囲まれたとしたら、武器を使用し、敵と戦火を交える以外にありません。戦場の現場で机上の「限定」など何の歯止めにもなりません。 (3)安倍首相の提唱する「積極的平和主義」とは、「けんか外交」と武力による平和です。武力で平和が作れないことは、現在のイラク情勢を見れば明らかです。イラク戦争は米国にとって「先制自衛権」の発動であるとともに、無理矢理国連決議に基づくと強弁し「集団安全保障」における軍事制裁に諸外国をまきこんでいった侵略戦争でした。「大量破壊兵器」をでっち上げて主権国家を崩壊させ、大統領を処刑、100万人にものぼる人々を殺害し、国土を破壊しました。直近のイラクの大混乱、内戦と国家分裂の危機は、米軍主導の10年以上にわたる軍事力行使によって平和がもたらされるどころか、長期にわたって民族・人民に致命的で取り返しの付かない打撃を与えることを示しています。オバマ大統領は、自国がもたらしたイラクの現実を前にして、立ち往生しています。安倍首相はふたたびイラク戦争の過ちを繰り返そうというのでしょうか。 対中軍事挑発、朝鮮半島有事──戦争の敷居を著しく低くする (1)わたしたちが特に危険性を訴えなければならないのは「グレーゾーン事態」です。この新たな概念によって、戦時でもない状況で自衛隊が出動し、戦争挑発することが真剣に考えられていることです。主として「尖閣諸島」を巡って中国軍とことをかまえることが想定されています。 “中国武装漁民”の尖閣上陸に対して警察権を使って治安出動・海上警備活動に自衛隊が出動するというシナリオでが考えられています。しかし中国漁民の尖閣漂流に対して自衛隊が出動したりすれば、中国側の軍事的対抗を呼び起こし、際限のない軍事対決・戦争行為へと突き進むのは目に見えています。現在日中漁業協定を準用する形で、たとえば日本の海上保安庁巡視船が中国漁船の違法操業を発見したときは、中国政府にその事実を通知し、中国に自国漁船の取り締まりを要請するという形で、いたずらに対立がエスカレートし、偶発的な軍事衝突を引き起こさないよう配慮がなされているのです。閣議決定はこのような日中合意・慣習を踏みにじるものです。 しかも日本政府は、このような対中軍事挑発・行動を自衛隊が単独で行うのではなく、米軍を引き込もうとしています。米国は対中関係を重視し、日本が「尖閣問題」で中国と軍事的衝突を引き起こし、意図しない戦争に米軍が巻き込まれることににつよい警戒を表明しています。 日本政府にとって、12月に予定される日米ガイドライン見直しの最大のポイントの一つはこの「グレーゾーン事態」で米軍の関与を明記し、自衛隊の作戦計画に米軍を組み込むこと、米軍が「尖閣有事」を傍観する可能性を排除することにあります。対中軍事衝突時に米軍が自衛隊を支援してくれるという保証を得た上で、堂々と中国に挑発行為を繰り返そうというのです。 しかし、現在の日中対立のきっかけとなったのは2012年9月の日本政府による尖閣諸島の国有化です。これ以降尖閣諸島を巡って緊張関係が続いています。さらに昨年12月に安倍首相が靖国神社参拝を強行したことが中国の反発を招き、政権発足以来日中首脳会談さえ出来ない異常事態が続いています。つまり安倍首相は、対話の糸口さえ摘んでおいて、武力だけで問題を解決しようという構えなのです。 私たちは、現在の日中対立の原因となっている日本の尖閣諸島国有化を撤回することを強く要求します。1972年の日中国交正常化と日中共同声明で尖閣諸島の帰属問題は「棚上げ」とされ、1978年日中平和友好条約の締結時にも「棚上げ」が再確認されました。先述の日中漁業協定などもこれらの棚上げ合意に基づき、軍事緊張を高めないよう配慮されてきたのです。日本政府は72年の日中共同声明の精神に立ち返るべきです。 (2)朝鮮半島有事、周辺有事においても危険性が飛躍的に高まります。現在禁じられている、戦闘に向かう米軍の戦闘機への給油、武器弾薬の供給、米艦防衛の名の下に日米の一体行動などが可能になります。「現に戦闘を行っている現場」以外で何をやってもいいことになるからです。 実際米国による朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)攻撃の一歩手前まで行った1994年の朝鮮半島核危機においては、米政府は日本に対して、海上自衛隊による日本海封鎖への協力、機雷の除去のための掃海艇の派遣、航空自衛隊の北朝鮮領空までの進出、空爆を行う米軍機への援護、民間空港、港湾施設の利用、米軍への燃料の補給、損傷した米艦の曳航など約1000項目にのぼる「協力要請リスト」が出されましたが、日本政府は憲法9条と集団的自衛権の禁止を理由に協力を断念しました。 日本を拠点とした米軍の輸送や武器、弾薬、物資の供給、そのための主要民間空港、港湾の利用、米兵や民間人に甚大な犠牲者が生み出される可能性、日本での負傷者収容能力と体制などが検討され、日本に朝鮮半島有事を闘う体制が整っていなかったことが、米国による北朝鮮攻撃を思いとどまらせた大きな要因のひとつであると言われています。 集団的自衛権は、とりわけ朝鮮半島と周辺有事において、日本の米軍基地と自衛隊基地を総動員し、前線と後方支援、戦闘行為と兵站を一体化し、日米総力で戦争できる体制をつくろうというものにほかなりません。 集団的自衛権は、戦争を抑止するのではなく、戦争への敷居を著しく低くしてしまうものです。それが1994年朝鮮半島核危機の大きな教訓です。 闘いはこれから 日米ガイドライン改定、自衛隊関連法の改悪阻止の運動をつくりあげよう (1)閣議決定の内容は危険きわまりありません。しかし、実際に集団的自衛権を行使するためには、これから少なくとも10数本の関連法を改定しなければなりません。安倍政権はこれを、安保担当相を新設し、日本版NSC会議の密室で準備する方針です。武力攻撃事態法、周辺事態法、船舶検査法、国民保護法、PKO法等々戦後の安保政策を「専守防衛」の枠内に押さえ込んできた自衛隊関連法を全面的に改定しようとしているのです。それは憲法を蹂躙する正真正銘の戦争法体系となります。安倍首相は、これら法案を通常国会に一括して提出する方針を表明しています。もうひとつは12月の日米ガイドラインの改定を行うことで、自衛隊と米軍が集団的自衛権を実質的に行使できるようにしようとしています。 (2)しかし集団的自衛権の行使という戦後「安保」政策の大転換を、閣議決定で強行したというのは、立憲主義、「議会制民主主義」さえ覆す暴挙であり、安倍政権の最大の弱点です。立憲主義を根底から否定する安倍首相のやり方は、9条の問題にとどまらず、基本的人権の根幹、生命や生活の根幹の権利さえ「政府の解釈」によって覆されかねないという危機感が広がっています。また教育現場などでも、9条・平和主義と閣議決定が正反対のものであることから、混乱や反発が生まれるのは不可避です。こんなことが繰り返されるなら、憲法が停止されているのも同然です。絶対に許されません。安倍首相のやり方は憲法改正を支持する学者、理論家などからも厳しい批判を浴びており、安倍首相は自らの行為をデマゴギーでしか正当化できません。 また安倍政権の右翼的な暴走は、世界中から懸念され、アジアのみならず国際政治の最大の危険要因になっています。 最終的には公明党が閣議決定に応じましたが、「平和の党」の看板を下ろすものとして創価学会の下部からも強い不満がくすぶっています。政府は閣議決定の最終段階で、案では入っていた集団的自衛権の8事例を削除せざるをえませんでした。公明党との与党協議で合意できなかったのです。集団安全保障における武力行使=機雷封鎖など、閣議の中でも多くの課題が積み残されたままになっており、矛盾と軋轢を抱えたまま、安倍首相の暴走によって閣議決定を強行したというのが実情です。 安倍政権の支持率は、消費税増税、集団的自衛権閣議決定強行などを経て急落しています。11月の沖縄知事選、来年4月の統一地方選を控えています。安倍政権は決して盤石ではありません。 安倍首相の1日の記者会見では、記者の質問にまともに答えず、しどろもどろの一般的な回答に終始しました。「自衛隊員が血を流す可能性が高まることをどう思うか」という質問に首相は「危険が伴う任務を果たす勇気ある行動に敬意を払う」と問題をはぐらかしました。安倍首相が国民から隠したいこの点にこそ、集団的自衛権の本質があります。米軍の戦争のために日本の若者が血を流すこと、国益のために若者を戦地に送り殺し殺されることです。「戦争する国」を最優先し、生活を破壊し、戦争で血を流すことを強要する安倍政権への批判を強め、閣議決定の危険を知らせていきましょう。 閣議決定後も、全国各地で反対運動が取り組まれています。官邸前などでは、「安倍はやめろ」「ファシズム」など、安倍政権そのものへの怒りが渦巻いています。闘いはこれからです。関連法案の制定=戦争法体系の構築と日米ガイドラインの改定を阻止することで、閣議決定を機能させない運動を作っていきましょう。閣議決定を撤回させましょう。 2014年7月6日 ※周辺事態法 ※武力攻撃事態法 ※国民保護法 ※船舶検査法 ※PKO法 |
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