大阪府の松井知事・日本維新の会幹事長と橋下大阪市長・日本維新の会共同代表がオスプレイの訓練を大阪の八尾空港で受け入れると表明したことを聞いて驚き、あきれた。 もとよりこの「提案」の意図は、「『慰安婦』は必要」とか「沖縄の米軍は風俗を利用したらいい」という女性蔑視・人権無視発言で巻き起こった内外からの批判をそらさせようとする苦し紛れの思いつきであることは誰の目にも明らかだ。八尾市長が即座に受け入れ拒否をしたのは当然である。それをわざわざ頼まれもしないのに八尾市に押しかけて、強大な知事の許認可権限を笠に着て、市長に同意を強要するなどもってのほかである。 オスプレイ問題で唯一の解決策は、今すぐ全機を米国に撤去させる以外にはありえない。 その立場を踏まえたうえで、八尾空港案の荒唐無稽さを見ていくことにする。 まず挙げられるのは、すでに指摘されているように、空港/飛行場面積の圧倒的な違い。 八尾空港の面積は、狭いといわれる普天間飛行場に比べてさらに狭く7分の1(普天間480ha 八尾70ha)しかない。そして八尾空港周辺は、普天間以上に人口密度が高く、滑走路の敷地境界ギリギリまで住宅や工場が密集している。学校や図書館など公共施設も隣接しており、大型商業施設にも近い。 滑走路の延長線上・着陸進入路の下を、JR関西線と国道25号線、外環状線が横切っていて、同じく大動脈である近畿自動車道と中央環状線が滑走路の離陸延長線上にあり、そのすぐ南に並行して名阪国道と阪神高速道路が走るなど、八尾空港は交通の要衝に位置している。 通常八尾空港に着陸する場合は、風向きの関係でA滑走路の27へ東側からアプローチすることになる。この場合障害となるのは生駒山地に属する高安山から信貴山に連なる400m級の山並み。
これがA滑走路の東側に屏風のように南北に連なっているので、空港でタッチアンドゴーを繰り返すセスナ機や、オートローテーションの訓練をするヘリコプターは、高安山の西麓をかすめるようにファイナルターンし、着陸しなければならない。 セスナ機の翼面荷重はオスプレイのわずか10分の1、70kg/u程度だ。着陸速度も100km/h以下なのでこうした狭い空域での訓練が可能だが、それでも2008年8月19日、同空港に着陸進入中の第一航空のセスナ機が、エンジントラブルのため滑走路までたどり着けず、八尾市内の大阪外環状線弓削交差点東側の市道に不時着し、乗っていた2人が軽傷を負う事故が発生している。軽いセスナ機で、しかも偶然正面に道路があったからこその幸運な事故だった。 しかし重量1t程度のセスナ機と違い、機体重量が25tもあるオスプレイで、飛行機モードでのアプローチ速度はプロップローターの助けがあっても最低でも200km/h以上になる。それも滑走路に正対して進入した場合なので、主翼面積の過小なオスプレイで通常の飛行機のような場周経路を辿って着陸しようとしたらたちまち失速するだろう。このため、飛行機(STOL)モードでのタッチアンドゴー訓練は狭い八尾空港の空域では不可能だ。 次にヘリコプター(VTOL)モードはどうだろうか。 実際には有名無実化しているが、2012年9月19日に日米合同委員会が合意した文書での「運用ルール」では、一応「普天間飛行場における離発着の際(中略)運用上必要な場合を除き通常、米軍の施設および区域内においてのみ垂直離着陸(VTOL)モードで飛行し(以下略)」と、とくにオスプレイの事故が多発しているVTOLモードでの飛行は一応飛行場敷地内に限定するとしている。事故の危険性と騒音の問題からVTOLモードを制限するポーズをとらざるを得なかったのだ。 しかし狭い八尾空港では「施設および区域内」も何もあったものではない。メインのA滑走路の南側境界はすぐ民有地になっていて、空港周辺の風向の関係で場周経路は滑走路の南側空域となるので、すべて境界外での飛行になってしまう。 したがって、さきほど触れたイズミヤなどの大型商業施設や病院、林立するマンションなどがある市街地の真上で轟音をまき散らしながら訓練することになってしまう。 そのことを知ってか知らないかは不明だが、松井知事本人のマンションはまさにその商業施設に隣接して建っている。自分はオスプレイの下敷きになって死んでも本望かもしれないが、巻き添えにされる八尾市民をはじめ周辺自治体の住民にとっては大迷惑だ。大体こんな初歩的なことがわからないとは信じられないし、わかってやっているとしたら犯罪的である。 八尾空港では、頻度は少ないが天候によってA滑走路の西側から着陸し東に向けて離陸するケースも見られる。 この場合は、大阪市域側から大動脈の中央環状線を眼下に見ながらの着陸進入となる。八尾市東部からの着陸に比べてさらに人口稠密地帯である。 そんな場所で、オートローテーション能力が欠如し、滑空着陸能力もセスナ機の3分の1以下(揚抗比4.5! 石ころといっても差し支えない)しかないオスプレイでは、どの飛行モードでもささいなエンジントラブル(1基でも停止したら墜落のリスクは普通のヘリどころではない)で即不時着もしくは墜落となり、結果として後述するように未曾有の被害をもたらすことになるのは明白である。 この場合当然先に述べたように高安山に向かっての離陸となるが、滑走路の延長線上にはすぐ住宅地が続き、また国道25号線とJR関西線、さらに外環状線が横たわり、眼前には高安・信貴の山並みが迫るという狭隘で気流の不安定な地形上を離昇することとなる。その際にエンジントラブルが発生すれば、ほとんど姿勢を立て直す暇もなく不時着/墜落となるだろう。 ここで重要なのがオスプレイの特殊な機体構造だ。 他の飛行機ではセスナ機の例と同様不時着即炎上とならないかもしれないが、オスプレイ/ボーイング787は別だ。両機に採用された極めて燃えやすい機体構造により、両機とも墜落は回避できたとしても、地上との摩擦熱程度でも発火するので、不時着即炎上・全焼となるのだ。(これまでもオスプレイは事故で跡形もなく燃えつきた例が多い) その際、機体を構成するカーボンナノチューブ複合材料の母材であるエポキシ樹脂は、燃焼時にダイオキシンを盛大に発生するので、消火活動さえ困難となる。もちろん住民の広範なダイオキシン中毒被害も避けられない。 ちなみに、伊丹空港に着陸する大型旅客機は、生駒山地の信貴・高安方向から奈良県側を山脈に沿って高度を下げつつ北上し、生駒山頂付近で左旋回して伊丹にアプローチするコースを飛行している。このコースと八尾空港への離発着コースはきわめて近い。 もともと八尾空港は、定期便こそはるか昔になくなったものの、多数の飛行機やヘリが頻繁に離発着する日本有数の利用回数を誇る第2種空港だ。 訓練飛行用のセスナ機やヘリ、報道機関の社用へりや民間企業のビジネス機をはじめ多様な用途に使用される約180機の固定翼機やヘリが常駐している。 とくにドクターヘリや報道ヘリの給油や海難救助・消火救難基地としての機能は代替手段がない重要な機能である。加えて大阪府警・大阪市消防庁のヘリの基地でもあり、さらに陸上自衛隊中部方面隊のヘリが配備されるなどしているため、離発着回数は年間38,000回にのぼっている。関空や伊丹では代替不可能な重要な空港施設なのだ。 さらに重要なことは、近年八尾空港は、大災害の発生に備えるとして大阪府の中部防災拠点に指定され、敷地内に被災した府民のための非常用食糧や毛布等を保管し、また救援物資等を集配すための機能を有する備蓄倉庫・物資集配センターが設置されていることである。 松井知事は知らないようだが、これは大阪府が指定した施設なのだ! 以上簡単に見ただけでも、八尾空港には(そして日本全土どこにも)オスプレイを受け入れる余地など全くないのだ。 やはりオスプレイは今すぐ国外に去ってもらうしかない。 2013年6月12日 電話:06−6208−7237 FAX:06−6202−6950 E-mail: 大阪市HP→組織一覧→政策企画室(お問合せ等)→総務担当 <松井大阪府知事への抗議先> 電話:06-6910-8001 FAX:06-6944-1010(専用ファックス) E-mail: https://www.shinsei.pref.osaka.jp/ers/input.do?tetudukiId=2012100014 <田中八尾市長への要請先> 電話: 072-924-3809 FAX: 072-924-0032 E-mail: hisyo@city.yao.osaka.jp |
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