国・県・岩国市との1992年「密約」(NLP夜間着艦訓練合意)が岩国住民に苦渋を与え続けている実態を暴く。 1992年に防衛施設庁と山口県、岩国市が「滑走路の沖合移設事業に関連し、NLP(夜間着艦訓練)を将来とも受け入れざるを得ない」との内容を紙に書き、担当者の捺印と署名がある密約が発覚した。山口県と岩国市が米軍再編のはるか以前から空母艦載機の訓練移設問題を協議していたのである。 この「密約」は、2001年に報道機関が国・県・市との議事録を報道して、暴露された。 番組では、密約に署名した岩国市の当時の担当者に取材している。担当者は「事務的には表に出さないでおこうと確認した。どこから出たのか。当時の大蔵省、現在の財務省から、なぜ岩国基地を沖合移設しないといけないのかの理由がいるとして、国がNLPをいってきた。それなりの理由がないと大蔵省が、この事業を認めてやろうと言わないので、不承不承文章にした」と答えた。1997年、この密約は住民に知らせないまま、岩国基地滑走路の沖合移設事業が開始された。 11年前、当時の岩国市長はこう語っていた、「所詮、平和とかいっておってもイデオロギー的観念論的にいっても、この5年、10年基地はあるわけですよ。基地周辺の人は墜落とか騒音から逃れられない。地獄の沙汰も金次第ということですよ」と笑いとばしていた。 周辺住民は「本当に絶望的というか、希望がもてないと言うか、そういう現状だ」と話している。この地区の住民の7割が身体的精神的影響が出ていることがわかった。 2006年空母艦載機の岩国移転計画が出たとき、前岩国市長は反対し、住民投票で賛否を決めようとした。住民投票の結果は圧倒的に受け入れ反対だった。しかし、国は岩国の民意に耳を貸さず、市庁舎建設への34億円補助金凍結という「ムチ」をふるった。 岩国市愛宕山地区は、滑走路沖合移設の為の土砂の供給とその跡の宅地開発のために、住民は土地を手放した。その愛宕山宅地開発も235億円の赤字を出し、中止に追い込まれた。そこへ国は、米軍住宅建設を打診してきている。岩国市議の田村順玄さんは「空母艦載機を持ってきて米兵住宅を建設するというと、山を売ってくれないので、土砂だけださせてから、愛宕山は中止します。米軍住宅に売りますでは、最初から仕組まれた詐欺だ」と怒り声で話している。 2007年暮れに、前市長は民意に訴えるため辞職し市長選が行われた。移転容認の新市長が当選し、補助金と134億円の交付金が交付された。 基地周辺住民は今年5月、愛宕山地区への移転を市に要請した。1930年代に旧日本軍に土地を接収され、そのまま米軍基地に強制接収された住民の70年後の決断は住み慣れた土地の集団移転だった。「今でも凄まじい被害をもたらしているのに、さらに空母艦載機を持ってくるのか」と住民は怒りと憤りの声をあげている。 私はこのドキュメントを見て、岩国への米軍再編による空母艦載機の移転が、住民に重大な被害と苦悩を背負わせていることを思い、改めて移設反対の思いを強くした。 2008年10月6日 |