辺野古に米軍基地を新設することに反対して、そのための現況調査を拒否している名護市に対して、政府が新たな攻撃を開始した。防衛省沖縄防衛局が、名護市の現況調査不許可に対して1月28日、「行政不服審査法」に基づく異議申し立てをおこなったのである。 ※沖縄防衛局は、辺野古ダムでの水生生物調査については名護市長、大浦川のマングローブへの立ち入りについては名護市教育委員会に異議を申し立てている。名護市や教育委員会によって、国が現況調査をする権利を侵害されたというのである。 「行政不服審査法」というのは、行政府の違法または不当な処分などに対して国民が不服を申し立てるためのもので、行政による国民の権利・利益の侵害に対する救済と行政の適正な運営確保を目的とする法律である。 このような、公権力に対する弱者としての国民の救済を目的とした法律を利用して、政府が、米軍基地建設に反対する名護市の稲嶺市政に新たな攻撃を仕掛けたのである。表向きは沖縄の民意を尊重すると言いながら、民意に基づいて米軍基地建設を拒否している名護市に受け入れを強要しようと圧力をかける。全く許しがたいことである。政府はただちにこの異議申し立てを撤回すべきである。 「米軍再編交付金」支給打ち切りに続く暴挙 政府は、昨年12月には、名護市に対する「米軍再編交付金」の支給を中止して財政的な締めつけを行い基地受け入れへの転換を迫った。名護市はこれに対して厳しく批判する一方で、基地交付金にたよらない予算編成で市財政を運用していく方針を示し、基地受け入れ断固拒否の姿勢を改めて鮮明にした。また昨年夏ごろからはじまっていた「ふるさと納税」による名護市支援運動が一挙に拡大し、多くの人々から名護市への寄付がよせられるようになった。 ※「ふるさと納税」とは、出身地に関わりなく、応援したい地方自治体に寄付することができ、それが住民税の控除対象となる制度である。 今回の「行政不服審査法」を使った攻撃は、このような手詰まり状態を打開しようとする政府の窮余の策でもある。行政法の専門家からは、法律の趣旨からはずれた想定外のことであり、国が不服申し立ての適格者であるかどうかさえ疑問である、との指摘がなされているほどである。 政府の名護市攻撃を報じない大手マスメディア このような政府の不当な対応は、沖縄現地では翌29日、即座に大きく報じられた。「沖縄タイムス」と「琉球新報」は、ともに第一面トップで報じた。しかし、本土の大手メディアは全く報じていない。政府要人が次々と沖縄を訪れて「説得」を試みていることは大きく報じるが、それとは裏腹の今回のような事実は報じない。沖縄から国民の目をそらせることのできるニュースネタをさがしては、それをことさら大きく報じているようにみえる。 沖縄で生じている重大な事態を、大手マスメディアは全国民に知らせる義務がある。政府が法を悪用してまで名護市に圧力をかけていることにダンマリを決め込むことは許されない。 政府・防衛省へ全国から抗議の声を挙げよう! 名護市稲嶺市長は、防衛局からこの申し立てに関する説明は一切なかったことを指摘し、沖縄に理解を求めると言いながら言行が不一致である、と政府の姿勢を批判している。実に、申し立ての文書が突然名護市総務課長の机の上に無造作に置かれていたという。名護市側は昨年11月、親川敬副市長が沖縄防衛局に直接出向いて、拒否する考えを伝えていた。事前の説明も何もなく、いきなり異議を申し立てるという防衛局のやり方に、政府の不誠実で強圧的な姿勢が集中的に表れている。 国家権力の濫用を許してはならない。沖縄の民意を踏みにじる異議申し立てに反対しよう。全国から、政府・防衛省に対して抗議の声を挙げよう。名護市に対する政府の不当な攻撃をやめさせよう! 抗議先 政府(内閣官房) TEL:03-3581-0101 FAX:03-3581-3883(目安箱) https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html 防衛省 TEL:03-5366-3111 FAX:03-5269-3270 メール:infomod@mod.go.jp (参照) 「国、名護に異議申し立て / 辺野古調査不許可で」(沖縄タイムス 2011.1.29) 「法律『想定外』の矛先 / 名護に異議申し立て」(沖縄タイムス 2011.1.29) 「防衛省 名護に異議申し立て / 普天間移設 現況調査拒否で」(琉球新報 2011.1.29) 「社説 主客転倒の手法である」(沖縄タイムス 2011.1.31) 「防衛局の異議 法理念に反する不当圧力」(琉球新報 2011.2.1.) 「防衛省異議申し立て / 『名護締め付け』鮮明」(琉球新報 2011.1.29)「ふるさと納税急増」(琉球新報 2011.1.6)など(「地元紙で識るオキナワ」) 2011年2月4日 |