朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のロケット発射問題に対する日本の対応の孤立化がますます際だってきています。そもそも当初日本政府は北朝鮮が発射を準備しているロケットを「テポドン2号」といい、迎撃態勢に入るかのように危機を煽っていました。ところが北朝鮮が「人工衛星打ち上げ」を3月半ばに表明すると、今度は「人工衛星打ち上げも安保理決議違反だ」などと騒ぎ始めました。そして現在、人工衛星から万が一に落下する可能性があるとして「破片」を迎撃すると息巻いています。首都圏と東北地方にPAC3を配備し、日本海にはSM3搭載のイージス艦が睨みをきかして、「迎撃」に備える様子は異様な光景という他ありません。 ※日本政府は、「破壊措置命令」=ミサイル防衛システム出動をやめよ!(リブ・イン・ピース☆9+25) このような対応は、国際的には極めて孤立しています。人工衛星打ち上げを安保理決議違反で問うという主張も今では全くリアリティがなく、アメリカのゲーツ国防長官でさえ、「ハワイに向かって来るようなら(迎撃を)検討するが、現時点でそのような計画があるとは思わない」と述べ、米軍がミサイル防衛で迎撃することはないとの見解を表明しているほどです。 政府・マスコミは、現実離れをした「北朝鮮の脅威」を扇動し、国民に恐怖感と対北敵愾心を植え付け、国民の関心を恐慌下の生活不安と政治の怠慢・腐敗から逸らせて「北朝鮮問題」に集中させようとしているのはまちがいありません。だから、3月23日に政府高官が「鉄砲を撃ってきたのを鉄砲で撃っても当たらない。(ミサイルを)撃ってきたら当たるわけがない」と発言したことに意見を求められた麻生首相が、「つまらんことを言うんじゃない。緊張感が足りないんじゃないか」と答えたのは的を射ています。「本当のことを言ってどうする」と言うわけです。 ※当たるか?被害は?官邸緊迫 北ミサイル迎撃へ(Yahoo Headlines) それともう一つ指摘しておく必要があると思うのは、恐慌と財政危機下で予算の増額に血道を上げる防衛産業(東芝、NEC、日産、石播といった急激な経営悪化に陥っている独占体は、防衛産業にも深く根を張っている)の影が見え隠れしているということです。米オバマ政権ですら、当たる保証の全くない金食い虫のMD構想の見直しに言及している中で、わが国の防衛産業は、よだれを垂らしてMD需要に食らいつこうとしています。 ※宇宙基本法成立に断固抗議する!(署名事務局) ※[シリーズ日本の軍需産業(上)](署名事務局) 年に何度となく種子島から人工衛星を打ち上げている日本が、他国の人工衛星を迎撃対象にする権利があるのでしょうか。産経新聞ですら、「北朝鮮は建前上は国際条約にすべて従っており、もし『平和的な宇宙活動だ』と主張すれば国際法違反とはいえない」という軍事評論家の江畑謙介氏の発言を紹介せざるを得ないのです。 このことは、現在深刻な問題となっている宇宙ゴミ問題を見れば明らかです。地球を取り巻く宇宙空間に、世界各国の人工衛星の残骸などの極めて多数の宇宙ゴミ(中には放射性物質を搭載したものもある)が浮遊しており、先頃も国際宇宙ステーションがそれらの一つと衝突する危険に見舞われたことが報じられましたが、宇宙ゴミの地上落下問題も少なからぬ危険性をもたらしつつあります。この現実の「落下物」には何の対処もせず、極めて非現実的な北ロケットの「落下物」をうんぬんするのは、欺瞞以外の何物でもありません。 (2009年3月29日 Y.H.) |