詐欺まがいの沖縄基地「返還」計画!
移設・新基地建設ではなく、いますぐ無条件に返還を!

7月参院選対策に沖縄を利用する安倍政権の卑劣

沖縄タイムスより
 日米両政府は4月5日、「沖縄米軍基地の返還計画」の合意を大々的に発表しました。しかし一見して明らかなように、従来から合意されたにもかかわらず遅々として進まなかった返還対象地区を並べ、新たな日程を追加したに過ぎないものです。
 しかも「返還日程」というのは口先だけで、「2025年またはその後」などとことごとく日程に「またはその後」を付け加え、ただでさえ遙か先の日程をあいまいにしています。返還計画とはほど遠いものです。事実上の返還放棄、基地を沖縄に固定化するためのものといってもいいすぎではありません。
 普天間飛行場は1996年の日米共同声明とSACO(沖縄に関する特別行動委員会)で5〜7年以内に返還とされていました。那覇港湾施設などは「沖縄返還」直後の1974年に返還合意がなされています。実に半世紀近く約束がずっと守られないまま放置されてきたのです。
クローズアップ2013:米軍6施設返還、日米合意 沖縄の不信ぬぐえず(毎日新聞)
9〜10年は長すぎる…沖縄知事、返還期限懸念(読売新聞)
普天間返還、最短で9年 日米合意(沖縄タイムス)
【電子号外】普天間返還は9年後 キンザー倉庫12年後(沖縄タイムス)
返還計画の米軍施設 減少面積は実際ごくわずか(琉球朝日放送)

 安倍首相は日米交渉で日程の明記を執拗に求めたといいます。7月参院選にむけて、安倍政権が基地問題に取り組んでいるかのようなイメージを振りまいて票を稼ごうという意図は明白です。米側は日程明記に難色を示し「またはその後」を付け加えることで、玉虫色の政治決着をしたのです。ある政府関係者が「明確なのは『その年までは返還が実現しない』ということだけだ」と語っているくらいです(朝日新聞4月6日朝刊)
 「返還計画」の対象地域のほとんどすべてが沖縄県内移転・集約が前提となっています。それは「返還」の名の下、沖縄基地と在沖米軍の運用を強化するために行われる基地機能の強化・集約化にほかなりません。今回の返還合意の正式名が「沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画」となっているように、彼らが目指すものは基地返還ではなく米軍基地の集約化なのです。
沖縄における在日米軍施設・区域に関する統合計画(外務省)
嘉手納基地以南の米軍施設・区域に関する返還計画(読売新聞)

返還ではなく基地機能強化・集約化だ
 最大の焦点である普天間飛行場の返還は、県内移設=辺野古新基地建設を前提とし“早くても2022年以降”といういつになるかわからない時期を提示しています。基地被害・騒音になやまされ、いつオスプレイが落ちてくるかわからない恐怖にさらされる沖縄の人々にとって、普天間飛行場閉鎖・撤去は喫緊の欲求なはずです。基地返還の引き延ばし=基地の固定化は許されません。
シリーズ:オスプレイ固有の根本的な危険性(リブ・イン・ピース☆9+25)
シリーズ[オスプレイ配備を許すな](リブインピースブログ)

 牧港補給地区、キャンプ瑞慶覧など嘉手納基地以南の米軍5施設・区域の返還日程も従来の合意から大幅に遅らせています。嘉手納以南地区は沖縄の大動脈である国道58号沿いの商業圏にあり、米軍基地が位置することで沖縄経済を阻害していることから、沖縄の人々の返還要求は強くあります。とりわけ広大な土地に倉庫がある牧港補給基地は跡地有効利用の計画が描かれています。ところが今回「即時返還」で合意されたのは1ヘクタールだけで、残る129ヘクタールは「2025年またはそれ以降」です。返還されるその1ヘクタールは米軍基地から出ている道ですが、周辺の住民によってすでに長年生活道路として利用されてきたものが名目上「返還」されるに過ぎません。入り組んでいて使い道がないなど米軍に利用価値がなくなった細切れの土地を勝手に返還されたとしてどう利用するのか、どう計画をたてればいいのかと沖縄の人たちは怒っています。
2013年4月9日放送“anchors eye 米軍基地返還計画と沖縄の現実”(スーパーニュースアンカー)は、基地に翻弄されてきた厳しい沖縄の現実を報じている。多くの地権者は60歳を超え、接収された土地からの地代で生活しているため、今更返されたとしてもどうしていいかわからない。逆に高利回り(地代)の優良投資物件として「軍用地」が取引されており、沖縄県外の投資家による投資もある。そこでは、返還の可能性の低い土地ほど、将来の「高収益物件」として値が上がるという。番組は、米軍基地と軍用地に依存せざるを得ない沖縄の一側面について、戦後日本の責任であることを示唆している。
 銃剣とブルドーザーで米軍が奪い軍事基地を造った土地について、日本政府は米軍に返還させる責任があるとともに、沖縄の人々に返還後の生活を保障する責任がある。

 陸軍通信施設や倉庫、輸送関連施設、燃料施設、さらには米兵とその家族のための海軍病院や中学校の移設、広大な敷地を持つ米兵住宅の建設(沖縄住宅統合(OHC))、さまざまな米兵と家族用施設などの移転・建設が「返還」の名の下に沖縄県内に移転・建設されようというのです。負担軽減どころか、沖縄の人々に広大な新基地建設合意を迫るものです。移転先と指定された区域の人たちは「まるで掃きだめだ」と怒りを強め、「詐術だ」「負担減にならない」「生きているうちに返ってこない」などという声がでているのも当然のことです。
辺野古前提に怒る 名護市民集会(沖縄タイムス)

 さらにマス・メディアはふれていませんが、在日米軍基地再編にかかわる費用はすべて日本の国家予算から支出されることが日米で合意されています。米軍再編戦略にからむグアム移転費の一部さえ日本が負担することが密約されており、その総額は3兆円にも上ります。今回の「返還」にともなう移設と新基地建設も全て日本側が支出することになっています。つまり、沖縄の人たちが新たな基地を受け入れることと日本が財政負担に応じることとでこの返還がすすむと恫喝を加えられているのです。 
 すべてが米軍の運用と再編の都合を最優先して立てられた「返還計画」に過ぎません。断じて許されません。米軍基地は沖縄の人たちから勝手に奪ったものです。即時無条件に返還すべきです。
[シリーズ]沖縄にも、大阪にも、どこにも米軍基地はいらない(その6)3兆円を日本側に負担させるために突如リンク(リブ・イン・ピース☆9+25)

辺野古新基地建設を前提とした「パッケージ論」の復活
 今回の合意で重大なことは、嘉手納基地以南の米軍基地返還も、普天間移設も、米海兵隊グアム移転も事実上リンクさせられ、辺野古新基地建設がその前提とされていることです。
 すでに書いたように、そもそも嘉手納基地以南5施設の返還は普天間飛行場の返還とは別物であり、ましてや辺野古基地建設とも全く関係がありません。1996年橋本・クリントン会談での普天間返還合意の日米共同宣言とSACO最終報告によって明記され、沖縄の負担軽減のためにとっくに実現されていなければならない合意事項でした。
 さらに2004年8月の沖縄国立大学での米軍ヘリ墜落事故を挟んで「グアム移転」が突如浮上したことで、それぞれ全く別物であったこれらの事項が2006年の「在日米軍再編のロードマップ」(最終合意 2+2会議)でリンクさせられ(パッケージ論)、あたかも辺野古基地建設が進まなければあらゆる基地返還と海兵隊移転が実現できないかのような神話が信じ込まされるようになったのです。
 昨年民主党政権は、普天間基地移設の進展にかかわらず嘉手納基地以南5施設を返還し、その計画を年内に作るという日米合意を行いました。今回の安倍政権による日米合意はこれらの合意を全く反故にしパッケージ論に回帰するものです。
社説:[基地「返還計画」]パッケージ論の復活だ(沖縄タイムス)
社説:基地返還・統合計画 沖縄だけの犠牲は限界だ 詐術に等しい「負担軽減」(琉球新報)
「辺野古リンクしない」 5施設返還 防衛相説明(琉球新報)

反対の声を踏みにじる辺野古埋め立て申請強行
 安倍政権は、3月22日 辺野古新基地建設のための「辺野古沿岸部の公有水面部埋め立て」申請書を沖縄県に提出しました。これに向け11日には、名護漁協に対して漁業権の一部を放棄させ「補償交渉」をテコに埋め立て合意を引き出した上での強行でした。これら一連の動きが、日米会談にむけた準備であったことは言うまでもありません。
 申請書提出も異様なものでした。午後3時40分頃沖縄防衛局職員が「沖縄防衛局ですけど、埋め立て申請書を提出に来ました」とだけ言い、県土木事務所の2階の担当部局でなく、3階の庶務担当の窓口に提出し、1,2分で立ち去ったといいます。 かつて2011年12月28日午前4時当時の真部沖縄防衛局長が陣頭指揮をとって、沖縄県庁守衛室に辺野古新基地建設の「環境評価書」を運び込み提出した行為と同じやり口でした。
普天間移設:辺野古埋め立て申請 政府、沖縄県に提出(毎日新聞)
【号外】防衛省、県に辺野古埋め立て申請(沖縄タイムス)
辺野古埋め立て申請 国が県へ文書提出(琉球新報)

 安倍首相は2月のオバマ大統領との首脳会談において、最大の手みやげであったTPP参加表明に加え、「辺野古新基地建設の早期進展」を約束し、米国にどこまでも従属することを表明しています。これを受けての日本政府の対応です。
 仲井真知事は、埋め立て申請に対して「理解できない」「不可能だ」と言いながらも、書類の不備がないかぎり事務的に受け取り3ヶ月から1年かけて答えを出すと表明しています。日米合意は、埋め立て申請に対する仲井真知事の判断へ恫喝を加えて拘束しようというものです。
 1月28日、沖縄県全41市町村の首長、議長が首相官邸へ行き、MVオスプレイ12機配備の撤回と7月さらに12機の追加配備中止、嘉手納基地へのCV22オスプレイ配備撤回と普天間基地の閉鎖・撤去と県内移設断念を求め「建白書」を安倍首相に手交し、直談判しました。反基地とオスプレイの飛行に反対する沖縄の人々の声を背負ったものでした。それに対して安倍首相は「地元の理解を得ながら進めていく」と口にしましたが、埋め立て申請強行と沖縄への恫喝で答えたことになります。
1/27・28 NO OSPREY 東京集会 対政府要請行動参加報告(リブ・イン・ピース☆9+25)

「主権回復の日」反対 沖縄への基地押しつけ反対の声を 
 安倍政権は、4月28日「主権回復の日」記念式典開催を閣議決定し、着々と準備を進めています。これは、沖縄県民が「屈辱の日」と記憶した日を祝福するという沖縄県民の心を全く踏みにじる行為です。沖縄を切り捨て、筆舌に尽くしがたい犠牲を押しつけてきた日本の歴史を全く反省しないもので、批判を集中しなければなりません。
4・28式典、県内全首長が反対(沖縄タイムス)
4月28日に県民大会 県議会野党・中立会派(沖縄タイムス)

 沖縄にとって4月28日は、日本の施政権から切り離されて、その後も続く米国による占領統治の始まった日、米軍による土地と住民への蹂躙が固定化された日、日本「本土」からもまたしても捨て石にされた日です。1952年のサンフランシスコ講和条約発効を日本の主権が回復された日として祝おうとする安倍政権の姿勢は、現憲法が米軍占領下で作られた「押しつけ憲法」として、新憲法が必要とのムードを作ろうとする狙いが露骨に現れています。
政府による「主権回復の日」式典開催に反対する声明(沖縄弁護士会)

 この日は旧日米安保条約と日米行政協定(現日米地位協定)が発効した日でもあります。これこそ、日本全土での米軍の無条件駐留を許し、核持ち込みを含む数々の密約を含み、現在まで続く米軍特権、日本の従属的・不平等的・差別的日米関係を基礎づけたものに他なりません。まさに今進む辺野古移設問題と日本の財政負担による米軍基地の大再編計画は、日本が「主権回復」どころか「対米従属」を最優先にしている恥ずべき姿をさらしているのではないでしょうか。
 沖縄では、政府が強行しようとしている「主権回復の日」に対する批判と怒りが高まっています。3月29日、沖縄県議会では“4・28「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」に対する決議”が上がりました。4月28日には同時刻に抗議大会を行うことが決定されています。
 本土からも、「主権回復の日」記念式典撤回、沖縄をこれ以上蹂躙するな、辺野古新基地の建設に反対、基地は無条件に今すぐ返還せよ、の声を上げていきましょう。

2013年4月11日
リブ・イン・ピース☆9+25