「グアム移転協定」の衆院強行採決を糾弾する!
 沖縄に負担を押しつける辺野古新基地建設反対!

 4月14日、政府・与党は衆議院本会議において「グアム移転協定」(批准承認案)を強行採決した。辺野古に新基地建設を押しつけ、グアムでの米軍基地建設に日本の国家財政をつぎ込むというかつてない内容だ。与党は、衆院解散総選挙を念頭に、ごり押しで協定承認を急いでいる。米軍再編を規定した工程表(「ロードマップ」2006年)は「政治声明」にすぎず、承認されずに政権が交代すれば解消される可能性もあるからだ。衆院で与党が圧倒的多数を占める現国会で何としても力で押し切ろうというのである。協定は条約に準ずることから、仮に参院で否決されても「衆院の優越規定」で参院送付後30日で自然承認されることになる。政府は5月上旬、協定発効を狙っている。
 沖縄県議会は、3月25日の2月定例会最終本会議で、グアム移転協定を批准しないよう政府に求める意見書を可決している。強行採決は、現地の声を無視し「議会制民主主義」の衣をもかなぐり捨てる暴挙である。我々は断固糾弾する。
米海兵隊グアム移転:協定承認案が衆院通過 民主など反対(毎日新聞)

 クリントンが日本に乗り込んで、辺野古基地建設とグアム移転負担を迫る
 2月17日、中曽根弘文外相とクリントン米国務長官は、「在沖縄海兵隊のグアム移転に係る協定」(グアム移転協定)に正式に署名した。「ロードマップ」の具体化が全く進展しないことに業を煮やし、クリントンが直接日本に乗り込み実現を迫ったのである。普天間飛行場の代替えとしての辺野古沿岸部への新基地建設押しつけと米海兵隊のグアム移転、沖縄北部東村高江(ひがしそんたかえ)への6カ所の米軍ヘリパッド(着陸帯)建設がパッケージになっている。沖縄の負担を軽減するどころか、環境破壊を進め基地被害を拡大するものだ。政府は沖縄の頭越しに新たな米軍基地の建設を強行しようとしているのである。
在沖米軍再編めぐる協定に署名 日米外相(朝日新聞)

 辺野古の海上基地にはヘリコプター用のヘリパッド4カ所の併設が計画されている。辺野古には垂直離着陸機MV22オスプレイの配備が検討されている。辺野古に加え、ジャングル戦闘などの訓練が行われる北部演習場のある東村高江と辺野古との間をオスプレイが頻繁に低空で飛び回ることになる。何度も墜落事故を起こしているオスプレイの配備で、新たな騒音被害と墜落事故の恐怖を沖縄住民に強要しようとしている。
「構造欠陥を証明」/沖縄配備に危機感/米・オスプレイ墜落事故(琉球新報)
オスプレイ・県民を欺く欠陥機の隠ぺい(琉球新報)
在沖米軍ヘリ墜落事故糾弾  イラク戦争=軍事優先、人命無視の暴挙 米軍、墜落ヘリ同型機の飛行を強行(署名事務局)

 昨年7月沖縄県議会が辺野古移設反対決議を可決したにもかかわらず、沖縄県民の意思は無視された。仲井真弘多知事が求める辺野古新基地の沖合移動さえ顧みられなかった。辺野古で行ってきた環境アセスメントの現地調査は、3月14日突然打ち切られた。沖縄防衛局は、4月3日に「普天間飛行場の名護市辺野古沿岸部への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)準備書」を県などに提出し、専門家が求めたジュゴンの生態を考慮した複数年調査や沖縄防衛局が必要と認めていた台風時の調査をすることなく、新基地建設をごり押ししようとしている。
「影響軽微」に疑問 普天間アセス/環境調査打ち切り 地元の要望反映せず(沖縄タイムス)

 米軍グアム基地を私たちの税金で建設するなど絶対に許せない
 米軍の世界戦略の中で、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、台湾海峡に加えて、中東にも直接出撃できる場所としてグアムが戦力強化されている。米軍全体でも21機しかないB2ステルス爆撃機3機の配備(1機に80発の衛星誘導爆弾を搭載。朝鮮半島まで2時間で到達する)、B52戦略爆撃機6機の常駐、攻撃型原子力潜水艦3隻の配備、空母用に岸壁の拡張工事など、グアムの出撃基地としての強化が進んでいる。
 今回の北朝鮮ロケット発射問題に絡んでも、米太平洋軍が、グアムのアンダーセン空軍基地を拠点に、最新鋭のステルス性能を持った戦闘機F22と爆撃機B2による大規模な合同演習を行ったことが暴露されている。東アジアと極東、太平洋地域に対して大きな脅威をもたらすものである。
B-2 aircrew participates in exercise in Pacific(Air Force Link)

 このグアム基地強化を日本の国家予算で建設するというのが「グアム移転協定」の正体だ。政府は2009年度予算で、在沖縄海兵隊のグアム移転の日本側経費負担として346億円を充てているが、そこには米軍再編に伴う巨額の基地整備費が含まれている。346億円のうち202億円が、グアム島の米海・空軍の施設の基盤整備に使われる。174億円がグアム海軍基地内にあるアプラ港の基盤整備事業に、28億円がグアム・アンダーセン空軍基地の土地造成や上下水道管の埋設などに使われることがわかっている。しかし、アンダーセン空軍基地に移るのは米軍岩国基地などの若干のヘリにすぎず、アプラ港建設は沖縄海兵隊と行動をともにする強襲揚陸艦や原子力空母の入港を可能にするための港湾整備に他ならない。
在沖米海兵隊グアム移転協定 実質は「米軍再編」推進(琉球新報)

 沖縄からグアムに移転するとされているのは第3海兵遠征軍司令部、第3海兵師団司令部、第3海兵役務支援軍司令部、第1海兵航空団司令部、第12海兵連隊司令部等、基本的には司令部要員である。ところが、上で述べたようにグアムに日本の予算で建設されるのは、これら司令部要員が入る施設とは全く異なる。空軍の基地施設そのもの、海軍の軍港そのものであり、沖縄の海兵隊移転とは直接の関係はない。それが、「海兵隊の移転に伴い必要とする事業」と名付けられる。そうすれば何でも許される、グアムの基地整備そのものに国家予算を使っても許されると言うのである。
米海空軍施設費も負担、海兵隊グアム移転巡り202億円(朝日新聞)

 出資・融資に上限なし 歯止めがきかない日本の財政負担
 グアムには、米本土などから陸・海・空・海兵隊の様々な戦力が移転し、増強することが計画されている。日米両政府は、意図的に沖縄からの海兵隊移転と一連のグアム基地増強を一体化させ、グアム基地増強に日本の国家予算を支出することができるようにしている。その結果日本側の財政負担は歯止めがきかなくなっているのである。
 オバマのアメリカは、軍事費の抑制と組み替えを余儀なくされているが、それはアフガンやイラクなどブッシュ政権の帝国主義的侵略政策を引き継ぎ、重点配置するめだ。米国は日本の国家予算を使って米軍再編計画をさらに追求しようとしているのだ。これが象徴的に現れているのがグアム移転協定なのである。協定の調印によって、従来の政治文書から、条約と同レベルの合意に引き上げられ、米軍再編の促進のテコにされようとしている。日本政府の財政負担は今後さらに増えていくのは間違いない。
オバマ大統領:兵器調達見直し方針 国防費抑制を加速(毎日新聞)

 協定では、グアム移転に伴う日本側負担について「28億ドルの額を限度」と決めているが、それ以外に出資、融資などで32.9億ドルが予定されている。この出資や融資には上限が無く、「民間の融資先が見つからない場合、出資で穴埋めすることもある」(防衛省)という。しかも返済期間は「50年程度」(同省)で無利子だ。確実に返済される見通しはなく、政府には融資が焦げついた場合の保証責任もある。結局は、日本の国家財政で無制限の負担を強いられることになるかもしれないのである。
 
 「グアム移転協定」承認に反対を
 人民生活の無視も甚だしい。政府は今国会で協定の承認をし、米軍への予算配分に法的根拠を得ようとしている。また、そうすることで、普天間基地の名護市辺野古沿岸部への移設や東村高江の米軍ヘリパッド建設に法的拘束力を持たそうとしている。
 民主党は口では協定承認案反対と言いながら、衆院採決を認めた。対米関係を重視する立場から、在日米軍再編の内容そのものについては明確な反対はしていないのが実情だ。反対の世論を一層高めていく必要がある。
 また、衆院外交委員会での議論を通じて、デタラメが次々と明らかになっている。移転予算がグアムの軍事基地建設に際限なく使われる問題、1万8千人の海兵隊が移転すると言いながら、実際には3千人程度でしかない問題等々。与党は、日本の基地負担が軽減されるかのような幻想を振りまき、グアム移転協定を認めさせようとしている。重大な問題にフタをしたまま、協定の承認、グアム移転・辺野古新設、東村高江ヘリパッド新設へ踏み出させてはならない。協定の承認に反対しよう。グアム基地建設への国家予算のくれてやりに反対しよう。

2009年4月14日
リブ・イン・ピース☆9+25