朝日新聞の検証報道に、とってもいない首をとったかのように騒ぐ歴史歪曲主義者たち 悪意とデマに満ちた、日本軍「慰安婦」問題を否定する発言が相次いでいる。 朝日新聞は8月5日と6日に「慰安婦問題を考える」というタイトルで特集を組んだ。産経新聞を筆頭として右派勢力が「『慰安婦』問題は朝日新聞の捏造」とキャンペーンを張っていることに対して、反論したものだ。私たちにはその内容はとりたてて新しいことはない。右派の攻撃の的になっている「吉田証言」が証拠としては使えないということは、1993年の時点ですでに私たち運動の側も確認していたことであり、そのことが「慰安婦」問題を否定する根拠にはならないというのが私たちにとっては常識である。朝日新聞自身も「『慰安婦』問題は強制連行の問題だ」などと主張したことはないし、今回の検証記事も「戦時中、日本軍兵士らの性の相手を強いられた女性がいた事実を消すことはできません。慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質」と、至極真っ当なことを主張している。 しかしこの朝日新聞の検証を受け、「朝日新聞の大誤報」などという批判の嵐が吹き荒れている。 その中でもっとも権力の中枢にいる人物が、自民党の石破幹事長だ。朝日新聞報道当日の5日には、「国民の苦しみや悲しみをどう解消するかだ。わが国だけでなく、取り消された報道に基づき、日本に怒りや悲しみを持っている国、韓国に対する責任でもある」と発言し、「検証を議会の場で行うことが必要かもしれない」と国会招致の可能性まで示唆した。 また、橋下市長も例によって発言をエスカレートさせた。「僕が発言したことがきっかけとなって朝日新聞が白旗を上げたことは、政治家冥利に尽きる」とまで言い、朝日の罪は大きいと豪語している。 日本軍「慰安婦」問題の本質は戦時性暴力問題であり、性奴隷制度であるということにある。日本軍の管理する慰安所で暴力等により自由を奪われ、本人の意志とは関係なく日本軍兵士の相手をさせられたという事が、その本質であって、強制連行の有無など関係ない。国際社会ではこの問題に関して日本への批判が強まっているが、「強制連行があったからダメ」などとは誰も主張していない。もちろん朝日新聞自身も。 しかし否定派は、「吉田証言」を否定することで「強制連行はなかった」=「『慰安婦』問題は捏造」と主張する。騙されて連れて行かれたのは本人の責任であって、強制連行でなかったから責任はないのだと、そんなことでもいいたいのだろうか? 「強制連行はなかった」論は、日本軍「慰安婦」問題の本質を理解した上で、あえて故意に議論をそらすデマにすぎない。誰も主張していないことを主張しているかのようにデマを振りまき、日本軍「慰安婦」問題を全否定しようとしているのだ。 自身の出した公式文書まで意図的に捻じ曲げ、「日本軍『慰安婦』制度は性奴隷制度ではない」と主張する安倍政権 そしてそれは右派が敵視している朝日新聞に対してだけではなく、政府が行った「河野談話の検証結果報告」に対しても行われている。それも発表した政府自身の手によって。 6月20日、1993年に公表した「河野談話」の検証結果が国会で発表されたが、これは日本維新の会が「談話に裏付けはなく、(韓国への)政治的配慮で強制性が認められた」として検証を求めたのに対し、安倍政権が応じたものだ。産経新聞などでは「河野談話で示された『慰安婦』強制を裏付ける事実はない。唯一河野談話作成の直前に行われた元『慰安婦』の聞き取りのみで強制を認めた」とキャンペーンを張っており、維新の会もこれに乗って、安倍政権を右から後押ししていた。 そもそも「河野談話の見直し」は、安倍総理の政治公約のひとつであり、悲願でもあった。しかし「河野談話見直し」言及後から、アジア被害諸国にとどまらずアメリカからも批判を受け、断念せざるを得なかったという経過がある。 この検証作業で、産経新聞がキャンペーンするような、「元『慰安婦』の聞き取りのみで強制を認めた」という主張は否定されたが、その内容はおおむね日本の「誠実」な調査と外交「努力」を追認する以上の何物でもない。日本軍「慰安婦」問題を日韓の外交問題に矮小化させていること、アジア女性基金で日本の対応の誠実さをアピールしていることに腹は立つが、「強制連行は確認できなかったが、募集、移送、管理等において全体的な強制性を認定した」というのが全体的な骨子であり、日本政府は検証で河野談話そのものを追認した。 しかし日本政府はあろうことか7月の国連自由権規約委員会の場で、日本政府は「『慰安婦』制度を性奴隷制度と呼ぶのは不適切である」と主張しだしたのである。これは日本政府の新たな試みだ。そして「河野談話の検証結果でも、いわゆる『強制連行』は確認できないということが確認された」とわざわざ念を押している。 強制連行がなかったから性奴隷制度ではないという主張は、国際的には全く通用しない。 そしてもちろん「河野談話の検証結果」の骨子はそんなところにはない。河野談話を追認することで、日本軍「慰安婦」制度が性奴隷制度であると間接的に認めているようなものなのだが、日本政府はそんなことにはお構いなしだ。 さすがにこれは国連自由権規約委員会のメンバーのひんしゅくを買った。その結果、委員会は最終所見で「委員会は、公人によるものおよび締約国の曖昧な態度によって助長されたものを含め、元『慰安婦』の社会的評価に対する攻撃によって、彼女たちが再度被害を受けることについても懸念する」と表明し、責任者処罰と謝罪、教科書への記載などが要求されることとなった。 デマに対抗し、何度でも本当のことを言い続けよう! 朝日新聞の検証報道への攻撃にしても、「河野談話の検証結果」の利用の仕方にしても、書いていないことをあたかも書いてあるかのように事実をねじ曲げ、主張するという点が共通している。素直に読めばそんなことは書いていないのに、産経新聞を初めとする右派勢力も日本政府自身も、悪意を持って意図的にそれを行っている。 そして多くの人は、実際の記事なり「検証結果」を実際に読んでいるわけではないから、それが真実だと信じ込まされてしまう。普通の人は、まさか政府が、新聞がウソをついているとは思わない。 今後政府は「政府の公式見解を教科書に載せる」としているが、政府の公式見解そのものがデマであるのに、それを堂々と教科書に載せ、ウソを教え込む時代に入っていく。 ヒトラーは「ウソを100回言えば真実になる」と言ったそうだが、こんな簡単なウソがまかり通る時代になってきた、正しいことが真実ではなく、声の大きいものの言うことが真実となる時代になった。そしてこれまでの動きを見ればわかるように、安倍はデマの利用方法を熟知している。 ここ最近の日本軍「慰安婦」問題を巡る情勢は、集団的自衛権の問題と同じく、日本が新たな時代、ファシズムの時代に入ったのだと予感させるに十分だ。 デマに対抗するには、あくまでも真実を言い続けるしかない。真実が通用しない新たな時代に入ったと言うことを認識した上で、私たちは何度でも声を上げよう。 日本軍「慰安婦」問題は日本軍・政府が組織的に犯した犯罪であり、性奴隷制度そのものだ! 2014年8月23日 |
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