「冬の兵士」日本ツアーへのアダム・コケッシュのメッセージ

こんにちは。アダム・コケッシュです。今はアメリカ、ニューメキシコ州からですが、あと2週間で日本を訪れます。

本当に楽しみです。私とリック・レイズの日本ツアーを実現させてくれた方々、そしてIVAWを支援してくださる方々のご尽力に感謝します。[訳注:原文では「IVAWの私とリック・レイズ」となっていますが、きれいな日本語にしにくいのと、IVAWの代表という立場はまずいということがあったので、このような訳にしました。]

日本の皆さんに私の経歴と帰還兵としての経験をお話しできて光栄です。私は1999年に17歳で海兵隊に入隊しました。信じるもののために命をかけたいと思ったからです。入隊に際しては、国内外を問わずすべての敵に対抗して合衆国憲法を支持し、これを守ると宣誓しました。

自ら志願して民事部隊のチームとともにイラクに行き、二〇〇四年2月から9月まで三等軍曹としてファッルージャで服務しました。あのときあの場にいることに意味がありました。心から人の役に経ちたいと思って志願したのです。われわれの活動でイラクの人々の暮らしが良くなり、民事部隊の任務は人助けになっていると思っていました。しかし、現地で気づいたのは、こうした考えが間違っていたことです。良かれと思ってしていたことですが、そして、一部の地域では少しは役にたったかもしれませんが、大きな眼で見れば無益なことでした。しかも、われわれが使命を果たすために与えられてしかるべき支援と優先的扱いはありませんでした。

2004年のファッルージャでは、マシンガンを装備したハンビー6台がつかなければどこにもいけませんでした。われわれ海兵隊の6名のチームでは何もできません。そこで、歩兵部隊の指揮官に頼み込んで車列のあとについて任務を果たしに行きました。歩兵部隊にわれわれの存在価値を証明するためにスローガンまで作りました。あまりに情けなかったからです。スローガンは、「あなたのお悩みを代行します」。立派に聞こえるし、われわれも当時はおもしろいと思いました。が、落ち着いてよく考えてみると、これは異常です。部隊がイラクに派遣され、その目的は、他の人が悩まなくていいようにするというわけですが、その「他の人」には、命令系統の一番上までが含まれます。うそじゃない。自分たちが、臭いものにかぶせるフタであるかのように感じました。見せ掛けだけのために派遣されていた。アメリカ兵がイラクの人々と交流しているところを私が撮った写真は、プロパガンダ用の雑誌に掲載され、われわれのおかげで暮らしが良くなっているとイラクの人々の納得させるために利用されました。現実を見ればとてもそうは納得できないからでしょう。

というわけで、私はまるで隠蔽のためのフタでした。このことでひどく悩みました。われわれがやっていることだけでなく、われわれの使命そのものが憲法と矛盾していることが問題でした。私はその憲法を支持し守ると誓ったのです。

さて、日本では、先日の選挙で民主党が圧勝しました。熱い思いでこの動きに力を貸した人たちが望んだような変革が実現することを、私は願っています。少なくとも一党体制が終わりとなり、人々が真の変革を求めているのだから、すばらしい機会です。本当に変革が実現すればいいと思います。というのも、アメリカでも選挙があってオバマ政権が誕生し、民主党が議会の第一党となりましたが、残念ながら、オバマ大統領に投票した多くの人々が期待していた変革は、新政権の外交政策には見られません。

ただ、私個人としては騙されてはいませんでした。細かい点を見れば、オバマがしようとしているのはブッシュの政策の継続だとわかっていました。実際少し驚いたのは、アフガニスタンへの増派はブッシュよりさらに好戦的だということです。イラク撤退の予定も遅れや延期が出ている状況で、実際にはブッシュのときよりもはるかに悪い。

これは日本にも影響します。皆さんがどのように決断を下すのか、そして、現在国民的な議論となっている、アメリカのイラクとアフガニスタンに対する外交政策を支持するのかどうか、支持するならばどの程度か、ということ。そしてまた、「世界規模の対テロ戦争」とは結局どういうことなのかにも。自民党であれ、民主党であれ、また軍産複合体の誰彼であれ、国連決議が出れば憲法9条に抵触しないと言っていますが、ここで皆さんにお願いしたいのは、政治家の法律論議に騙されないでほしいということです。軍事上あるいは法律上の正当化は実際には意味がないからです。重要なのは日本の人々が何を求めるか、そして人々の価値観が日本の外交政策にどう反映されるかなのですから。

また、日本には私たちと同じような帰還兵の皆さんがおられ、いまも戦争の過酷さを記憶しています。目の前で死んでいく兵士を見、戦争の苦しみに直接触れ、PTSDになって還ってくるイラク帰還兵たちと同じ体験をした方々です。日本には戦争を自分の体験として語ることのできる人たちがまだおられるのです。実情を認識していないかもしれない政権内の人々に戦争による苦しみを伝える必要があります。われわれの帰還兵としての経験を語ることで、なんらかのお手伝いができれば大変嬉しいことです。

ともかく、どうか、アメリカの過ちに引き込まれないでください。アメリカはこれまで過ちを犯してきました。大きな間違いをいくつも犯しています。特にいま現在の外交政策、つまり占領軍がリベラルな国造りと称して行う力の拡張ですが、これはアメリカ憲法が求めることでは断じてありません。アメリカの安全保障にも、アメリカ国民の利益にもかなっていません。

どうかアメリカの行動に取り込まれないでください。政治指導者は、法律的な正当化をし、これでいいのだと思わせるようにするでしょう。だまされてはいけません。アメリカの過ちの共犯になってはいけません。

最後に、招聘してくださってありがとうございます。メッセージを聞いてくれて、ありがとう。イラク/アフガニスタン帰還兵の声を聞いてくれて、ありがとう。帰還兵は体験を語ることにより、アメリカだけでなく世界中の人々に戦争の真実を伝えたいと思っています。人間として、だれもが無関心であってはならないことです。戦争の痛みを知って、何らかの行動を起こしてほしいと思っています。

どうもありがとうございました。