岸田政権は健康保険証廃止を撤回すべき!「資格確認書」にも反対!
マイナンバー制度を通じた個人情報の完全掌握を許さない!

岸田政権不支持率急上昇の最大の要因は健康保険証廃止とマイナンバーカード強制
 岸田政権の支持率が続落しています。最新の毎日新聞の世論調査では、支持が26%と続落し、不支持が倍を超える68%となっています。不支持の最大の理由の一つが健康保険証廃止強行方針です。加えて漁連との約束を破り周辺諸国の反対を押し切っての原発汚染水放出、武器輸出の大幅緩和、日米韓首脳会談での対中軍事協力強化の確認、麻生自民党副総裁の「戦う覚悟」発言等々反動的な強硬策を次々と打ち出しているからに他なりません。
 健康保険証廃止については、マイナンバーカードを持たない人全員に「資格確認書」を自動交付し、期間も最大5年するという方針を打ち出しましたが、2024年秋に健康保険証を廃止する方針は撤回せず、廃止延期も明言しませんでした。あくまでも強行突破する構えです。この「資格確認書」はあくまでも現行の保険証を廃止することが前提となります。一旦現行の保険証を廃止してしまえば、ほとぼりが覚めた時に政府はいつでも「マイナ保険証」一本に変更できます。しかも、マイナンバーカードを返納した人には「資格確認書」は自動的に交付されず、事実上「無保険者」が大量に生み出される危険性も指摘されています。私たちは「資格確認書」にも強く反対します。
 健康保険証の廃止は、昨年10月に河野デジタル相が突如打ち出しました。2兆円という前代未聞の「ばらまき政策」(マイナポイント)をとってもなお、「22年度中のほぼ全住民へのマイナンバーカード交付」という目標が達成できないことに焦った政府が、一挙に挽回するためにとったのがこの健康保険証廃止です。法律上「任意」であるはずのマイナンバーカードが突如「強制」になったのです。断じて許すことはできません。

健康保険証廃止強行方針で、医療現場は深刻な事態に
 健康保険証の廃止は、マイナンバーカードを持たない被保険者が保険医療を受けられなくし、国民皆保険制度の根幹を揺るがす重大問題です。
 現行保険証で何の問題もなかったのに、「マイナ保険証」の導入によって医療現場は大混乱しています。マイナンバーカードで本人確認ができない、顔認証ができない、暗証番号を忘れた、いったん窓口で10割を負担させる、別人の病歴や投薬履歴が出てくる等々。そして、マイナ保険証で表示された情報が本当に正しい(本人のもの)のかが確信できないため、従来の健康保険証を持参することが推奨されています。介護施設では要介護者の本人確認の問題があり、会話不能や意識不明の重症者は、高熱の子どもの付き添いの親は、本人にかわって家族が薬だけをもらいにくる場合は、医師の往診時は等々初歩的な部分で、医療現場の実態とかけ離れていることが次々と指摘されています。大地震や大規模災害、通信障害や機器不良による確認不可も当然出てきます。日本医師会は健康保険証廃止反対の声明を出しています。全国保険医団体連合会の調査では、「マイナ保険証」に対応できない医療機関の廃業が続出するとの調査結果を発表しました。
 7月時点でマイナンバーカードに保険証利用登録(「マイナ保険証」)をした人は約6500万人で全人口の52%、つまり約半分です。現在の方針に従えば、保険事業者は登録者と非登録者を区別し、非登録者に対してのみ「資格確認書」を発行・配布するという膨大な事務を抱えることになります。実務的に見ても登録・非登録にかかわらず現行の「健康保険証」をそのまま使えるようにするのが現実的であり、むしろ「マイナ保険証」を持っているほうが、前記のようなリスクが高まるのです。健康保険証の廃止方針を撤回するしかありません。

政府・財界の狙いと全貌を明らかにしよう
 なぜ、政府はこれほど急ぐのでしょうか。マイナンバー制度の目的と全体像は何なのでしょうか。その目的は2つです。第1に、住民一人ひとりを「プロファイル」(諸個人の情報や経歴を全て集約)して掌握・管理し、そのデータを増税、医療や介護など社会保障の削減、教育・労働・軍事等の反動政策に利用すること、第2に、それらを財界・独占資本の新たな市場、新たな利潤追求に利用することです。経済同友会代表幹事の新浪氏は「廃止の期限を守れ」と岸田首相に要求したことにも表れています。
 国民が全く知らないところで、政府・財界は、聞こえの良い「デジタル社会」「ITイノベーション社会」の名の下に、とんでもない「監視社会」構想を推し進めています。すでに官民一体の巨大プロジェクトとその実現の道筋 (「統合イノベーション戦略(内閣府)」と首相をトップとする推進機関「CSTI(総合科学技術イノベーション会議)」等)が立てられています。マイナンバー制度と全住民情報のマイナンバーカードへの紐づけはその軸です。
 政府は今年6月9日に、以下の個人情報とマイナンバーカードとの一体化を加速する重点計画を閣議決定しました。一部自治体での母子手帳との一体化(2023年度中)、運転免許証ICチップ情報との一体化(2024年度末まで)、カードと生体認証(顔・指紋等)との紐付け、教育データとの紐付けなどです。
 しかし、構想の全体は10年前の2013年に始まっていました。デジタル庁の前身ともいえるIT総合戦略本部が作成したものです。マイナンバーカードを軸に2016年には国家公務員の身分証、民間企業の社員証、住民票や印鑑登録等のコンビニ交付、2017年にはマイナポータルシステムを構築することで、税、社会保険料の納付、年金支給等の一体化、2018年には運転免許証、医師免許証、教員免許証、学歴証明(卒業証書)、健康保険証との一体化、そして2019年にはほぼすべての住民がマイナンバーカードを保有する社会の実現を展望していました。並行してマイナンバーカードのICチップを民間にも広く開放し、資格試験や入学試験等への活用、興行チケットの販売、デビッドカード、キャッシュカード、ポイントカード、診察券とも一体化し、官民合わせてマイナンバーカード一枚で生活にかかわるすべてのことができ、個人情報のすべてが一枚のカードに蓄積、引き出しができるという社会を描いています。すなわち住民一人ひとりの個人情報をかき集めて、プロファイルして掌握・管理するという壮大な計画です。ターゲットを絞れば、リアルタイムでその人物の言動を監視することもできる恐ろしいものです。
 これらがすべて強行されれば、住民はマイナンバーカードを身分証として常時携帯することを事実上義務化され、文字通り、赤ちゃんがお腹にいるときからその先天性障がいの有無や出生地、予防接種の状況、入学以来の成績、高校や大学の学歴、卒業と就職、生活圏や交通機関の利用状況、収入と納税、動産・不動産の売買、いっさいの銀行口座開設、健康診断、通院や投薬、保有資産状況や相続、年金受給までがすべてマイナンバーカードを通じて記録され、個人は丸裸にされてしまいます。そして自分に関する情報をすべて一枚のカードに入れて絶えず持ち歩いているというリスクを負うことになるのです。

マイナンバー制度は15年10月に開始されたが、個人情報の漏洩や国による管理への不安・反発を抑えるため、マイナンバーの利用は、法律で社会保障・税・災害対策の3分野に限定し、目的外使用を禁止した。しかしこれは、スムーズに導入するための方便であり、当初から「小さく生んで大きく育てる」(導入してから利用範囲を拡大する)ことを狙っていた。実際、安倍政権は19年にマイナンバーカードを健康保険証として使えるようにする健康保険法改定、行政手続きでカードを利用する場面を増やすデジタル手続き法、戸籍とマイナンバーを紐づける戸籍法改定を成立させた。
 そして今年6月の法改定には、保険証廃止の他にも重大な内容が含まれている。1つは、社会保障・税・災害対策の3分野に限定されていたマイナンバーの利用範囲の拡大だ。自動車の登録、美容師や建築士など国家資格の更新、外国人の行政手続きなどで、マイナンバーを利用できるようにした。犯罪的なのは追加で利用する個人情報の内容を、法改定によらず省令だけで決めることができるようにしたことだ。「利用範囲は法律で厳格に規定され、目的外使用は禁止されているら安心」という導入当初の約束は反故にされた。
 もう1つは、公金受取口座の紐づけだ。一定期間内に本人が「拒否」通知をしない限り、年金や児童手当等の支給を受けるために行政機関が把握している口座のマイナンバーへの紐づけが、自動的に「承認」されてしまう。コロナ禍での1人10万円の給付といった公金を受け取るための口座と位置づけられてはいるが、今後対象が拡大され、個人の所得・資産の把握という、マイナンバーの本当の狙いが顔を出してくることは間違いない。


マイナンバー制度は戦争する国づくりの一環
 それだけではありません。政府・支配層が一体となった一人ひとりのプロファイル化は、情報管理による住民の思想や行動の分類化を可能にします。それは国策のための人民支配であり、国家と財界の利益を最優先にすることです。人民大衆からの税金は余さず搾り取る一方、社会保障費は「最小限まで」削減する。住民の国家への貢献度を測り、国家・資本の役に立たない住民、抵抗する住民をあぶり出すシステムでもあります。一人ひとりにかかる医療や教育のコストと労働力としての貢献度を測り、国家・資本にとっての「生産的人間」「非生産的人間」を判別し、「改善」を「自己責任」化すること(生き抜く力)やその「能力」を数値化することさえ構想されています。その内容は、「マイナポータル」等を通じて本人にも分かるようにし、「生きているのが申し訳ない」「貧困は自己のせい」「進学するのは無駄」「自分は社会のお荷物」などと思わせ、医療、生活保護、教育などの現場で、究極の自己責任と功利主義で切り捨てていこうというものです。


マイナンバーカードの普及・利用の推進に関する関係省庁連絡会議(第4回、23年4月17日)資料3より

 また「台湾有事」等情勢が緊迫した場合には、個人情報から戦争に反対する人々をあぶりだして未然に予防弾圧を加えることさえできます。同時に、戦争遂行に必要な人材、たとえば救急外来外科医、大型車両や船舶などの特殊免許、車両整備などの有資格者、それに健康状態や家庭環境・収入なども判断して、戦争遂行に最適な人材を選び出すことが可能になります。これは形を変えたかつての在郷軍人名簿(市町村兵事記録)です。「兵事記録」は、本籍地、戸主名、本人と家族の職業・職階・学歴・専門知識と技能・財産・病歴・思想状況・信教・賞罰、健康状況の甲・乙・丙の等級、得意スポーツや近隣での評判まで記録されていました。マイナンバーカードに紐づけされる個人情報の巨大な集積は、戦前よりずっと精緻なものとなり、戦争動員(徴兵・徴用)の最も有効な道具となるのは間違いありません。

マイナンバー制度は、住民票のある人全員(外国籍を含む)に、12桁のマイナンバー(個人番号)を割り当てるものである。すべての人が固有の番号を持ち、他人と区別される。番号は原則として一生変わることはなく、死亡しても同じ番号が他の人に割り振られることはない。
 マイナンバーカードの裏にもこの番号が記載されている。しかし、このカードにはこれとは別の番号も書き込まれている。その番号(シリアルナンバー)は、印刷はされておらずそのままでは見られないが、カード裏のICチップに書き込まれている。
 何のために2つの番号があるのか? マイナンバーの利用範囲は前記の通り法律で規定されており、6月の法改定までは3分野に限られていた。また、マイナンバーを含む情報は「特定個人情報」とされ、違反した取り扱いをすると罰則がある。不安・反発を抑え「安心感」を演出するために、利用に一定の制約が加えられている。
 シリアルナンバーにはこうした法的制約がない。今問題になっている健康保険証との一体化も、このシリアルナンバーを使って被保険者の情報と結びつける。健康保険のような公的な制度にとどまらず、政府はこのシリアルナンバーの利用を民間に積極的に開放し、利用拡大を進めている。カード更新の際にシリアルナンバーは変わり、その点がマイナンバーとは異なるが、新旧のシリアルナンバーを紐づけ、個人情報を引き継ぐことは可能だ。
 すでに、オンラインでの証券口座開設や携帯電話レンタル契約での本人確認など、商業利用が進んでいる。マイナカードを使う人とそれを使ってできる手続きが増えれば増えるほど、情報は普遍性を持ち利用価値が高くなる。保険証との一体化も「医療DX」の名の下に被保険者のデータを集め、医療産業に生かすためだ。このようにして、シリアルナンバーを使った手続きを民間に開放し、そこで得た個人情報を利潤追求の道具とするのが、シリアルナンバーの使い道なのである。マイナカードを持ち、様々な手続きに使うと、こうして自分の個人情報をばらまくことになるのだ。ある自民党議員は「使い勝手がめちゃくちゃ良い。マイナンバー制度の肝はここにある」と言っていたという(5月2日朝日新聞)。


健康保険証廃止方針を撤回させ、マイナンバー制度を廃止させよう
 あたかも日本の個人ID化が遅れているかのようなイメージがふりまかれていますが、G7でIDカードと健康保険証を紐づけている国はありません。情報漏洩や窃盗の恐れがあり、プライバシーの侵害や「監視社会化」に対する懸念が根強くあるからです。

実はマイナンバー法では、住基ネットで禁じられていた「警察へのデータ提供」を禁じていない。「特定個人情報」の提供には、前記のように制限があるが、その例外として「刑事事件の捜査」(マイナンバー法19条15)が挙げられている。監視社会化は、目に見えて一気に進むものではないが、様々なデジタル決済サービス、解禁された給与のデジタル払い、今やどこにでもある監視カメラと顔認証技術、自動車のナンバーを読み取るNシステムなど、すでに利用されているデジタル技術との親和性を考えれば、そのような社会との垣根は低い。

 私たちは以下を要します。まず第一に、国民皆保険制度を揺るがしかねない健康保険証廃止法を次期国会で破棄すること。第二に、マイナンバーカードと各種証明書、各種情報との紐づけをやめること。マイナンバーカードを廃止すること。第三に、マイナンバー制度そのものを廃止すること。
 私たちは、マイナンバーカードを持たないことを呼びかけます。すでに持っていたとしても健康保険証や運転免許証と紐づけないこと、紐づけてしまった場合は解除すること、そしてカードの返納を呼びかけます。 
 マイナンバーカードに個人情報を吸い上げられ、国と独占資本によって情報を握られ、マイナンバーカードなしでは生活できなくなってからでは遅いです。マイナンバーカードを拒否しましょう。制度としてマイナンバーカードの廃止、マイナンバー制度の廃止を求めましょう。健康保険証廃止方針を撤回させましょう。

2023年8月28日
リブ・イン・ピース☆9+25