12月13日夜、オスプレイが沖縄県名護市安部の海岸浅瀬に墜落した。米軍の事故で最悪のクラスAとなった。事故原因は、夜間の空中給油訓練中に、給油ホースのロックが外れ、プロップローター(回転翼)がちぎれたホースに接触・損傷したとされている。 しかし、不安定なオスプレイで、給油母機の主翼の後流に煽られながら、視界の狭い暗視ゴーグルを付けて夜間に給油訓練をするなど論外である。海兵隊は、事故のわずか6日後の19日に、県民の抗議を無視し、現場にオスプレイの機体が残り、事故の詳細も隠したまま訓練を再開した。臭いものにフタ、綻び始めた同機の「安全神話」を取り繕うための暴挙である。そして安倍内閣は、唯々諾々とそれを追認した。いつ事故を繰り返してもおかしくないオスプレイの飛行を再開した、米軍と安倍政権を断固糾弾する。 オスプレイ固有の欠陥で墜落した 今回の墜落事故は、通常の飛行機やヘリコプタでは起こりえない。双発の固定翼機では、破損したプロペラのエンジンを停止し、そのまま飛行して着陸場所を探す。片発飛行はありふれた訓練項目の一つだ。また一般的な軍用輸送ヘリは、ローターが機銃弾にも耐える強度があるので、給油ホースの衝撃程度では墜落しない。全エンジンが停止する最悪の条件下でもオートローテーション(ローターを自由回転させて滑空するように降下)により安全に降りられる。しかし、軽量化最優先で脆弱なオスプレイのプロップローターは、ホースの衝撃でも深刻な事態になる。その状態ではヘリモードに出来ない。強行すれば揚力の不均衡で横転する。そもそもオートローテーション能力の欠如したオスプレイで、ヘリモードに変更する意味はない。 しかし飛行機モードでも、オスプレイの異常な高翼面荷重と劣悪な滑空比のため、一つのプロップローターでは飛行を継続できない。結局失速ギリギリの高速で降下するしかなかった。大直径のプロップローターが海面に触れて翼は折れ、機体も海面に激突して四散した。たまたま海面上だったので火災は免れた。 オスプレイは高い失速速度のため、少しのエンジントラブルでも飛行ができなくなる。2008年6月21日、イラク上空を飛行機モードで巡航中の米海兵隊162戦隊のオスプレイは、全エンジン出力のわずか17%低下で緊急着陸を余儀なくされた。オスプレイは常にギリギリの状態で飛行している。 開発時に十分なFOD対策と試験を実施しているのか疑わしい 今回明らかになったことは、事故画像でも明らかなように、オスプレイのプロップローターの構造が、せいぜい風力発電用プロペラ程度の強度しか有しないということである。通常、飛行機の開発時の強度試験では、FOD(Foreign Object Damage エンジンのエアインテークに砂や火山灰などの異物が混入し、エンジンにダメージを与えたり、降着装置によって巻き上げられた小石や何らかの破片による機体の損傷、もしくは飛行中の鳥との衝突=バードストライクによる被害など)を考慮して、鶏などを機体にぶつけるテストを実施する。しかし今回、給油ホースとの衝突程度で致命的な損傷を受けたことから考えると、おそらくオスプレイのプロップローターにはこのテストを実施していないと思われる。 さらに危険なのは、海兵隊と自衛隊が、無謀にも日本の山間部で共同飛行訓練を実施しようとしていることだ。その場合は、鶏程度ではない大型の猛禽類との衝突の可能性が極めて高くなる。それらと衝突すれば間違いなく墜落は免れないだろう。この点でも、オスプレイの飛行訓練は暴挙である。 オスプレイの重大事故は頻発する 2015年5月17日にハワイで訓練中の海兵隊のオスプレイが、右エンジンの故障で墜落し、海兵隊員2名が死亡し、20名が重傷を負った。海兵隊は、指揮官の「着陸場所の選定ミス」を事故原因に挙げた。しかし、事故現場はヘリコプタが常用する野戦訓練用着陸帯(LZ)だった。「ヘリコプタのように離着陸できる」オスプレイなら、同様に着陸できると指揮官が判断したのも当然である。市民が撮影した動画には、オスプレイが砂塵の渦の中に機影を消し、再び現れたときは墜落間際で、すぐに機体が着地横転して炎上する姿が捉えられている。事故の原因は、オスプレイのエンジンに吸い込まれた砂塵が高温で溶解し、コンプレッサータービンのブレード上にガラス固化体を形成し、エンジン出力が低下したことによる。この事故に直面した海兵隊は、高江のヘリパッドに芝生を貼ることに強く固執した。しかし「尖閣有事」では、誰が、いつ、芝生を貼りに行くのだろうか? 沖縄に配備されたオスプレイは、判明しただけでも今回を含め24機中3機が事故を起こしている。最初は、2014年6月の被雷事故である。当時米海軍安全センターは、海兵隊の報告を受けて、沖縄のMV22オスプレイが6月27日に駐機中被雷したとして、損害額200万ドル(約2億円)以上の「クラスA」事故に分類した。 沖縄県の問い合わせに対しても現地の米海兵隊は、「6月27日ごろ、普天間に駐機中に落雷の被害を受けた」と事実と異なる回答で事故の隠蔽を図った。今年になって、「駐機中の落雷」は真っ赤なウソで、実際は6月26日に岩国から普天間に飛行中のオスプレイが、宮崎県小林市の上空で被雷し、右側プロップローターと制御機器を損傷していたことが暴露された。辛うじて普天間に着陸したものの、一つ間違えば大事故は免れなかった。 もう1件は、上記の給油訓練に参加していた別のオスプレイが、前脚を出さずに胴体着陸した事故である。事故の詳細は「軽微」として今も隠されている。 しかし、卵の殻のように脆いフルモノコック構造のオスプレイは、わずかな損傷でも強度が保てなくなる。実際アリゾナ州ユマで、2007年8月21日の緊急着陸時に前脚を破損したオスプレイは、修理不能で秘かに廃棄された。こうした事故隠しの累積で、2009年の段階で帳簿上在籍するはずのオスプレイが、すでに40機も行方不明になった。 オスプレイの欠陥・事故隠しは米軍の宿痾となっている。2010年4月9日に、米空軍のCV-22オスプレイ(横田に配備予定)がアフガニスタンで墜落し、兵士4人が死亡、16人が負傷した事故の調査は、フライトレコーダーの「行方不明」と、生き残った副操縦士の「記憶喪失」で打ち切られた。 イエメンでも発生したクラス「A」の重大事故 沖縄の事故に続いて、1月28日にはイエメンでも重大事故が発生した。対アルカイダ作戦支援で揚陸艦マキン・アイランドから飛び立った米海軍のオスプレイが墜落した。この作戦で特殊部隊SEALsのメンバー1人が死亡、4人が負傷した。映画「ブラックホークダウン」の再現である。海軍は、兵士を収容作業中に「ハードランディング」して飛行不能となったとしている。「ハードランディング」と「パイロットの操縦ミス」は米軍のオスプレイ事故報告書で常に使われる欠陥隠しの常套句である。 証明されたオスプレイの低い稼働率 オスプレイは存在そのものがスキャンダルだ。実際は劣悪な能力しかないのに、巨大な軍産複合体・ボーイング/ベル社は大量の宣伝媒体で、単なる「目標値」を「実績値」と偽装したオスプレイの「高性能」を全世界に振りまいた。売り込みのため、海兵隊の退役将軍を多数雇い入れてペンタゴンに圧力をかけ、関連工場の立地州選出の議員たちを動員して強引に議会工作を行った。 しかし、オスプレイの根本的な欠陥は隠しおおせなかった。 2009年に米会計検査院(GAO)はオスプレイの監査結果の聴聞会を開催した。 その場で、米軍の基準を大幅に下回るオスプレイの低稼働率が暴露された。複雑怪奇な構造のため、1飛行時間あたりの整備コストが11,000ドル以上に達したことが指摘された。出席した下院議員エド・タウンズは、「オスプレイは暑い日には問題があり、寒い時期には問題があり、砂でも問題があり、高地でも問題がある。オスプレイは『出来ないことのリスト』の方が、『出来ることのリスト』よりもはるかに長い」と指摘した。 それは事実で証明された。イラクに派遣されたオスプレイ部隊は、何の装甲もなく強い可燃性のある機体への被弾を恐れて、前線から遠く離れた基地に配備された。 鳴り物入りの配備にも拘らず、任務は高官たちの事務連絡飛行と、兵士の洗濯物などの軽輸送に限定された。そんな任務でも、1億ドル分の予備部品はすぐ払底し、特別に派遣されたボーイング/ベル社の技術者グループの奮闘も空しく、オスプレイの稼働率は惨憺たるものだった。わずか150時間の運転で、高価なロールスロイス製エンジンは新品に交換された。 アフガニスタンでも明らかになった高い事故率 米海軍安全センターが昨年1月に発表したアフガニスタンでの米海兵隊機の事故レポートでは、2010-2012会計年度の間に同地域に配備されたMV-22オスプレイは、90.4飛行時間毎に1回事故を起こした。オスプレイ以外の航空機の平均事故率は3,746.8飛行時間ごとに1回の事故発生だった。(前ページ図参照) この期間にオスプレイは計723.6時間飛行した。同時期にオスプレイと同数が配備されたCH53Dヘリコプタは5,630時間飛行し、同系列のCH53Eは19,480時間飛行した。「高性能」が売り物のオスプレイの飛行時間は、他の大部分の航空機よりも大幅に少なかった。 「高性能」は一度も達成されたことがない「目標値」にすぎない オスプレイは、ヘリと比較して、はるかに高速で長大な航続距離を持つと売り込まれてきた。ペンタゴンと日本政府は、「高性能」なオスプレイが日本の安全保障に貢献するとして、沖縄への配備を強行した。「対米従属」批判が党是の日本共産党の「赤旗」でさえ、軍事「専門」誌の、誇張され水増しされた記事を鵜呑みにして、「脅威」を「論評」している。しかしオスプレイの性能は全くの眉唾である。 完全武装の兵士を24名搭載可能とする能力は、米会計検査院によって、せいぜい14名と評価された。「ペイロード(積載量)4,536kgでの航続距離1,758km 以上」や、「フェリー飛行距離(荷室全体に燃料タンクを設置した時)3,593km」などの数値は一度も達成されていない。 「フェリー飛行」時は全備重量60,500ポンドとなるが、オスプレイは19年間の開発期間と現在までの実戦配備期間を通じて、一度も54,500ポンド以上で離陸しなかった。イラクやアフガニスタンでは、通常のヘリコプタと同じ高度・同じ距離を、より少ない搭載量で飛行することしかできなかった。 「速度性能」も大幅に水増しされている。輸送機では、「瞬間最大風速」にすぎない「最大速度」は評価に値しない。重視されるのは、最大の輸送量と、最長の航続距離を効率的に実現する持続可能な「巡航速度」である。これを最新のCH-53Kヘリコプタとオスプレイとで比較すると、前者の314km/hと後者の388kmでは大差がない。しかしこの388km/hという数値は、護衛の任に当たる戦闘用ヘリコプタには速すぎ、逆にFA18などジェット戦闘機には遅すぎる中途半端で無意味なものである。逆にVTOL(ヘリモード)での最大搭載量(オスプレイは2.7トン、CH-53Kは14トン)や実用航続距離、運航コスト、機体取得価格などの面でオスプレイはほとんどの現用ヘリコプタより劣っている。 あらゆる意味でオスプレイは危険である。低性能と欠陥隠しのスキャンダルが露見しつつある下で、さらに無理な「作戦」を実行させようとするペンタゴンの衝動が強まり、ますますその危険性は増大している。オスプレイの飛行を今すぐ中止せよ。米空軍の横田へのゴリ押し配備と、木更津での整備実施、自衛隊への新規配備をやめよ。オスプレイ全機を沖縄から、日本から撤去せよ。 2017年3月9日 |
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