ホンジュラス人民による選挙ボイコット闘争の勝利
──米国とクーデター政権の共謀が白日の下に

かつてない大規模な投票ボイコット、それをごまかし糊塗した大統領選
 11月29日にホンジュラス大統領選がおこなわれ、「60%を超す投票率で穏やかな状況であった」と、大手マスメディアは一斉に報じた。しかし、実際はそれとは全く異なることが明らかになってきている。
 「60%を超す投票率」というのは、ホンジュラス選挙管理委員会(TSE)が投票日の夜に早々と発表した「開票率98%で棄権率38.14%」という数値をもとに、米国の大手マスメディアが一斉に報じ、日本のメディアもそれをそのまま報じたものである。しかし、そのTSEの発表した投票率、投票者数、登録有権者数そのものから計算して棄権率は62%になるということを、ホンジュラス議会の一人の議員が指摘した。TSEは「まちがい」を認めざるをえなくなって、開票率は50%を超えたところだと「訂正」したというのである。全国の投票所で抗議行動をおこなった「反クーデター人民抵抗戦線(FNRG)」は、独自の投票モニターを集計し、棄権率は少なくとも65〜70%であったと発表した。また、抗議行動には警察や軍や準軍暴力組織などによる凶暴な弾圧がおこなわれた。そのような事情は、大手メディアでは全く報じられていない。「60%を超す投票率で穏やかな状況であった」などというのは、全くのデタラメである。
※参照:domingo 29 de noviembre de 2009 / Comunicado No. 40 / DENUNCIA EL FRACASO DE LA FARSA ELECTORAL

信じがたい不正選挙
 さらに驚きあきれることには、クーデター政権は投票者の指にインクで印をつけ、投票した人を対象に家庭用電気器具や家を景品とした宝くじをおこなったという。大手スーパーマーケットは、投票したことを示す指のインクを見せた人には特別割引を実施したという。また、カトリック教会は、投票しないことは死を免れない罪だと説いた声明を発したという。そのようなことまでしても、全くの虚偽報道で高い投票率であったと偽らねばならなかったのである。
 大手メディアの報道とはまったく異なるこのような状況は、現地の状況を系統的にフォローし連帯しているオーストラリアのGreen Left に掲載された記事で明らかにされている。
Honduras: Big poll boycott exposes US-backed regime

 その他に、米国のWorkers World でも、今回の大統領選がクーデター政権にとって「惨憺たる大失敗」であったことが明らかにされている。そこでは、棄権率についてのGreen Left の記事と同様の内容などに加えて、現地の状況を観察するために代表団を送ったグループの報告などが紹介されている。訪れた数十の投票所はどこもガランとしていて、投票者よりも選挙監視者や世話人の方が多かったこと、平和な抵抗運動の行進に対する警察の凶暴な弾圧の現場に居合わせたこと、抵抗運動のリーダーのリストを各市の市長が作成するよう求められていて、そのリストに載せられた人々への弾圧が選挙前夜におこなわれたこと、などである。さらに驚くことには、選挙は軍事包囲下でおこなわれたと伝えられているが、それに800人の米軍部隊が加わっていたという。

人民の抵抗闘争は持続している
 Workers World は、ロサンゼルスやヒューストンで、米国にいるホンジュラス人のために設けられた投票所の様子をレポートした記事も掲載している。それによれば、ロサンゼルスには約40,000人のホンジュラス人がいるが、投票したのはほんの数百人だけであること、逆に投票に反対する多くの人々によるにぎやかなデモンストレーションが午前8時から午後4時まで続いたこと、などが報じられている。また、ヒューストンでも投票所で抗議行動がおこなわれ、ホンジュラス以外のラテンアメリカ諸国出身者も多く参加し、盛り上がった抗議行動がおこなわれた様子が報じられている。
Hondurans boycott fraudulent election
Protests in U.S. denounce fraudulent Honduran elections

 米国とクーデター政権が結託して演出した「民主的」選挙は、米国に完全に追随するわずか数カ国だけが認める方向に傾いただけである。ほとんどの国とすべての国際諸機関・諸機構は認めない立場を堅持している。現地の人々にとっては事態は全く明らかであり、FNRGは選挙ボイコットは勝利したと声明を発表した。人民の抵抗闘争は持続している。

 以下に、Green Left の記事の要約と、Workers World の記事の中にあるFNRGの11月30日のコミュニケを紹介する。

2009年12月19日
リブ・イン・ピース☆9+25


<Green Left の記事の要約>

ホンジュラス:大規模な投票ボイコットが米国に支えられた体制を暴露する
Honduras: Big poll boycott exposes US-backed regime

 ホンジュラス選挙管理委員会(TSE)のエンリケ・オルテスは、11月29日、軍事クーデターによって成立した体制による選挙が「ホンジュラス人民」の勝利であると発表し、それは「金文字で記録される」日となるであろうと述べた。オルテスは正しい、ただし理由付けは間違っている。選挙は、まさしくホンジュラス人民の勝利であった、−−独裁に民主的な顔を与えることを意図した偽りの選挙に対して、正当な大統領セラヤと「反クーデター人民抵抗戦線(FNRG)」が呼びかけた選挙ボイコットに応えた人民の勝利。
 人々は大挙してボイコットした。11月29日の声明でFNRGは述べた、「眼前で生じていることを見るのに特別の眼鏡はいらない」と。「我々の組織が全国でおこなったモニターによれば、棄権率は少なくとも65〜70%であり、これは歴史的に見てかつてない最も高いものである。」

 これは何も驚くに当たらない。8月におこなわれたホンジュラスの世論調査では、クーデターを支持するホンジュラス人は17%しかなく、たいていはセラヤの復帰を望んでいた。
 投票日の夜、TSEは98%の開票で棄権率はたったの38.14%であるという数値を発表した。そして、右翼の「国民党」候補者ポルフィリオ・ロボが勝利を宣言した。ところが、国会議員エルビア・アルヘンティーナ・バレは、TSEが発表した数値と登録された投票者数とを比較して、もしTSEの数値が正しければ棄権率は62%であることを指摘した声明を発表したのである。TSEは、「まちがい」を認めざるをえなかった。そして、開票は実際には50%を超えたところだと「訂正」した。投票率がずっとはるかに高かったと偽ろうとしたTSEのずうずうしい試みは、バレ議員の指摘の正しさと事態の深刻さを示している。

 11月29日にFNRGは次のように述べた。「ホンジュラス人民は、クーデターと独裁の候補者を罰した。−−彼らは皆、高い投票率があったと世界の世論に信じさせようとして四苦八苦するだろう、実際にはそんなものはなかったのだから。」
 国連、EU、OAS(米州機構)は、クーデター政権の偽りの選挙に正当性を与えることを拒否して、選挙監視員を送らなかった。
 選挙後セラヤはこう述べた。「選挙はおこなわれたかもしれない。しかし依然として権力に就いているのは、同じ軍事当局であり、同じ議会であり、私に反対して行動した同じ人々である。それで、これはいったい何を解決することになるというのか? 絶対に何も解決しない。」

 2005年に大統領に選ばれて、セラヤは最低賃金を60%引き上げ、企業利益に打撃を与えた。そして、ベネズエラとキューバによって牽引される反帝国主義の貿易ブロックALBA(米州ボリーバル同盟)に参加した。セラヤは、新憲法を起草するための憲法制定議会への道を開くことをめざして、拘束力のない国民投票をおこなおうとした。その投票日の早朝、軍がセラヤの住居を急襲し、彼を誘拐しコスタリカへ追放した。パジャマ姿のままで。
 これが貧困大衆の持続的な大衆的反乱に火をつけた。毎日の大衆的デモンストレーション、ストライキ、占拠、道路封鎖は、この貧困な中米の国に日々数百万ドルの負荷をかけた。人民の抵抗は、9月にセラヤが極秘のうちにホンジュラスに帰国したとき、いっそう高揚した。彼はブラジル大使館に庇護され、今もそこにいる。
 クーデター政権は、人民の抵抗に対して、ますます激しくなる残虐性で応えた。数十人が殺され、また行方不明となり、数千人が拘束された。FNRGは、軍と結びついた殺戮部隊の復活を厳しく非難した。抑圧は、投票の準備過程で強められた。選挙は、治安部隊による包囲の下でおこなわれた。しかし、抵抗は続いている。

 AFPは次のように伝えている。選挙後の大衆集会での抗議者たちは、「指を空高く上げてインクがついていないことを示している(投票者の指にはインクでマークがつけられた)。」
 カナダの労組活動家タイラー・シプレイは、選挙日にホンジュラスの首都テグシガルパで次のように述べた(11月29日 http://canadiandimension.com/blog/2607/)。「私が出向いた所すべてで、人々は私に語った。普通ならこの通りでもあの通りでも人でいっぱいなんだ、選挙の日は、まともなら大きなイベントなんだ、でも今日はまちがいなくそれがあてはまらない、と。」
 農民の権利のために闘っているグループ Via Campesino の活動家ラファエル・アレグリアは、11月30日に次のように述べた。「[クーデター政権は]冷蔵庫などの家庭用器具や家さえも投票者のための宝くじの景品にしたんだ。人々を投票させようとして。」大きなスーパーマーケットも、投票したことを示す指のインクを見せた人には、特別割引をした。カトリック教会は、投票しないことは死を免れない罪だと説いた声明を発表した。
 抑圧は投票日にも続けられた。治安部隊は、抗議を蹴散らすために水放射カノン砲や催涙ガスも使った。殴打や逮捕が繰り返され、行方不明者も出ている。負傷者の中には外国人記者や人権監視者も含まれていた。

 警察の暴力や脅しの中で選挙がおこなわれたという事態は、米国政府が即座に選挙を歓迎し新政権を承認するのを何ら妨げなかった。米国政府は、クーデター政権に対して、すべての援助を停止することも軍事的な結びつきを打ち切ることも拒否していた。
 クーデター政権の中心的なもくろみは、国際的孤立を緩和するために選挙を利用することであった。選挙前には、セラヤ大統領を投げ捨てた政権を正式に承認した政府や国際機関は皆無であった。
 「ホンジュラスの行方不明者・被拘束者の家族のためのセンター」のディレクター、バーサ・オリバは、11月30日にこう述べた。「彼らは軍事クーデターの上にクリーンな顔を置くために、民間人の道化師を公的地位に就けたのだ。」
 しかしながら、多くの政府と国際機関が協力を拒否している。クーデター政権は、これまで以上に露骨な姿勢になっている。FNRGは、11月30日に「祝勝」と抗議の行進を組織した。ホンジュラスの人々が、クーデター政権を打倒し制憲議会を手に入れるために闘い続けることは、明らかである。そして、エリートに好都合な憲法が人民の利益になる憲法へと民主的に転換されるであろう。
(以上、Green Left の記事の要約)

<以下はWorkers World の記事にある「反クーデター人民抵抗戦線(FNRG)」の11月30日のコミュニケ>

11月30日のコミュニケで「反クーデター人民抵抗戦線(FNRG)」はホンジュラス人民と国際社会に次のように宣言した。

1.独裁という状況の中で11月29日にオリガーキーによっておこなわれた選挙の道化芝居は、完全な失敗に終わり、それは、この選挙とその結果を不法・不当なものと宣言した我々の提起の正しさ、さらに1月27日に就任する体制を承認しないという我々の立場の正しさを確証している。

2.我々は民主的で誠実・正直な政府を要求する。そして全世界に、この選挙の道化芝居を拒否し、1月27日に就任式をおこなうであろう政府を認めないように求める。

3.少数者の権力に保証を与えるための、正当性・合法性が全く欠如している選挙がおこなわれたことで、憲法制定議会の設置こそが、すべてのホンジュラス人民を政治に参加させるという要求を実現する代替案となっている。我々は、憲法制定議会を求めて闘いを継続する。

4.我々は繰り返して言う、現在の事実上の政権とその継承者がおこなうあらゆる行為を人民は認めないであろう、と。我々は、特に、人権侵害者に対するいかなる恩赦も拒否するということを強調する。

5.我々は、この機会をとらえて、「被拘束者・行方不明者の家族親戚ホンジュラス委員会」の活動を顕彰し高く評価する。この組織は、27年にわたって、すべての人に人権が保障される社会の建設と真実と正義を求めて闘ってきたのである。

このコミュニケはここに宣言する、「我々は抵抗し続ける、そして我々は勝利する!」

(以上.by H.Y.)

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