ハイチへの自衛隊派遣は、PKO協力法の明白な違反 鳩山内閣は1月25日、与党党首級でつくる基本政策閣僚委員会を官邸で開き、国連平和維持活動(PKO)協力法に基づきハイチへ自衛隊を派遣することを決定した。これは、ハイチ危機を利用して新たな自衛隊の海外派遣に乗り出す暴挙である。普天間問題が膠着する中、1月15日に期限が切れた自衛艦インド洋給油活動に代わって「海外派兵」を行うまたとないチャンスとして、「国連平和維持活動」の名の下に300人もの武装部隊を送り込もうというのである。鳩山首相は派兵する自衛隊を「工兵部隊」としているが、拳銃や小銃などの武器を携行したれっきとした武装部隊である。目的は最も必要とされている医療でも食糧支援でもない。 今回の派兵方針は明らかにPKO参加5原則さえ逸脱している。紛争当事者間の受け入れ同意などの派遣条件がないのである。地震前は、外務省幹部もハイチの現状がPKO5原則に合致しないと認めていたほどだ。地震が起きたから5原則に合致するようになったなどと言えるはずがない。地震を理由にすれば抵抗が少ないことを見越した、どさくさ紛れの違法行為である。 ※ハイチ大地震:PKOで陸上自衛隊を派遣 政府が方針(毎日新聞) ※政府、ハイチにPKO派遣 300人規模、自衛隊に準備命令発令(日本経済新聞) 地震被害に乗じた米軍の「ひそかな占領」に高まる批判 米軍はすでに治安維持を主目的に、海兵隊を中心に16000人もの兵員を派兵している。侵略戦争さながらの空母カールビンソンまで派遣し、沖からハイチ情勢を伺っている。米国は、「被災者の空輸」を口実に、キューバ領空の飛行を要求した。キューバ政府は人道的観点からこれを認めた。キューバがすでに医師、救急隊員、医療従事者ら500名近くの医療協力者をハイチに派遣し、負傷者らの治療に奔走しているのは言うまでもない事である。中南米諸国では、米の海兵隊派兵に対して強い反発が生まれている。ボリビアのモラレス大統領は「災害を利用して軍事的に占拠することはできない」と批判した。ベネズエラのチャベス大統領は「米軍がひそかにハイチを占領している」と糾弾している。それだけではない。フランスやイタリアの閣僚のあいだからも「目的は救援であるべき」「軍事的介入はいらない」などの声が相次いでいる。 ※「援助名目に米がハイチ占領」 ベネズエラ大統領が批判(朝日新聞) ※ハイチ救援批判に不満爆発 軍事介入は「誤解」と米長官(共同通信) ※反米左派のボリビア大統領が米軍のハイチ占拠を批判(世界日報) ハイチ人民のための真の援助を そもそも米国は、2004年2月、ハイチの政情不安に乗じてハイチ情勢に介入し、米軍を侵攻させてきた経緯がある。今回も米がハイチにいち早く大規模な軍隊を派兵したのは、「反米国家」ベネズエラとキューバをにらむ絶好の地理的条件にあるからに他ならない。ハイチの治安の悪化を阻止し、巨大な米軍の支配下におくことは、米国にとっての死活の利害なのである。北沢防衛相は26日の記者会見で、「(ハイチは)米国の玄関口みたいなところなので、米国世論も非常にいい感じで受け止めている」と述べた。この言葉こそ、まさに米国の政治的利害が絡むハイチに自衛隊を派遣し治安維持に関わりたいという意図を露骨に表明したものである。 ※ハイチPKO、対米改善の狙いも=北沢防衛相(時事通信) 中米の遠い国ハイチで起こった巨大地震被害に対して私たちができることは限られている。現時点で死者は12万人にも登り、最終的には20万人に達するとも言われている。だが、その巨大な被害状況を利用して、武装組織である自衛隊を海外派遣するような事があってはならない。日本政府は真にハイチ人民のために、被災者のために医療や食糧などの人道援助に徹して行うべきである。 2010年1月26日 |