[紹介]寿[kotobuki]の『前を向いて歩こう』


 11月4日、『誰も知らない泣ける歌』という番組(日本テレビ系)で、寿[kotobuki]の『前を向いて歩こう』が放送された。寿のファンにとっても超ビックリ。まさかテレビで取り上げられるなんて。寿はライブ活動は活発だけれど、電波に乗ることはほとんどない。実際、この番組の出演者の中でも知っていた人はゼロ。本当に「誰も知らな」かった。
 しかし、その知名度の低さには釣り合わない、すばらしい作品と表現力を持つミュージシャンだと断言できる。寿については、署名事務局のサイトに掲載されている記事をご覧いただきたい。

 『前を向いて歩こう』は、『上を向いて歩こう』の替え歌で、元気が持ち味の寿を象徴する歌。

  前を向いて歩こう 涙がこぼれてもいいじゃないか
  泣きながら歩く ひとりぼっちじゃなかった夜
  幸せは空の上にはないよ
  幸せは胸の中に 肝(チム)の奥に


 今回の番組で初めて知ったのだが、かつては、原曲の『上を向いて歩こう』を歌っていたらしい。ボーカルのナビィがフィリピンのスモーキー・マウンテン(ゴミの山)で暮らす子供たちの、貧しくても夢を失わない姿にふれてから、替え歌で「前を向いて歩こう〜♪」と歌うようになったという。
 元気が出る歌という印象が強いので、「泣ける歌」として取り上げられることに、最初はピンと来なかった。けれども、涙がこぼれるのも気にせず前を向いて歩いていく姿は、苦しい境遇の中でもがいている人にとっては強く胸を打つだろう。そこで流れる涙は悲しみの涙というより、共感の涙、そこからの救いの涙という気がする。

 番組では、ナビィのおつれあいのことが詳しく紹介された。彼は、今年の初め、髄膜炎のため入院し、一時意識不明に陥った。その頃の様子は、ナビィのブログに詳しく書かれていて、彼女がいかに苦しんだか、そしてそれを乗り越えてきたかがよくわかる。
 彼は、未だに食事その他の日常生活を1人でできる状態ではなく、リハビリを続けている。ところが、2006年から実施されたリハビリの日数制限で、6ヶ月を過ぎるとまともなリハビリが受けられなくなる(既にそうなっているはず)。ナビィは7/24のブログで、厚生労働省の理不尽なやり方に怒りをぶつけている。リハビリ制限については既に大きな社会問題になっているが、よく知る人が被害を被る立場になってその話を読み、改めて憤りを感じた。

 と、私生活では大変な苦労をしているナビィだけれど、驚くことに、実際に会ってみると、そんな苦労を全く感じさせないほど、とてつもなく明るい。その秘密はどこにあるのだろう。彼女自身が『前を向いて歩こう』の精神そのものなのだ。

2008年11月11日
リブ・イン・ピース☆9+25 O.U.

[参考]
寿[kotobuki]公式サイト