この映画は、マイケル・ムーア監督が描きたかったコアだという。1%の富裕層が残り95%の低所得層の富を集めたよりも多くの富を握っている超格差社会の元凶が資本主義(キャピタリズム)だというドキュメンタリー。100年に一度の金融恐慌のカラクリが小学生でも2時間でわかると豪語する。 資本主義社会とは、他人がどうなろうと自分のお金を増やしたいという強欲を合法的に認める社会だったのだ。現在のアメリカは富裕層中心でウォール街が国を動かしている。これは決して民主主義ではない。 マイケル・ムーアによれば、アメリカも昔は民主主義だったが、レーガン大統領の「強いアメリカ」「小さな政府」以降狂ったという。 富裕層は、国をも利用して私腹を更に肥やし、恐慌や人の命までもお金にするのだ。それも法律までつくりあげて合法のもとで行なっていたのだ。 マイケル・ムーアはウォール街を「狂ったカジノ」と表現する。彼らは不正を問われないように、ワザと複雑にした複合金融商品を開発し扱っていた。大量生産・大量消費・投資に向かわせてバブルが作られ、はじけるのだ。つまりウォール街が国を動かしていると。 映画では恐慌で国民の税金を投入され利益を得た奴らまで紹介してくれた。マイケル・ムーアらしく、「私たちのお金を返してくれ!」とドルのマークのついた大袋をもってウォール街に突入もした。 この映画は具体的な映像と人物が描かれていて、イメージをつかみやすかった。すごいシビアな現実なのに、ふと笑えてしまう・面白がれてしまう楽しい映画でもあった。そう、アメリカンジョークと明るさも魅力だ。また国民もいつまでも耐えているわけではなく、多くが怒り始めたという反撃も見ものだ。最後にマイケル・ムーアは言う。国民のための体制を取り返すには民主主義が必要だ、そして「僕1人では無理だ。みんな、立ち上がろう!」 資本主義は格差の拡大をもたらすものでひどいものだとつくづく思い知らされた。 弱い立場の人の犠牲がなくなるよう、民主的に行動するしかないんだと思った。 [関連記事] マイケル・ムーアの最新作「キャピタリズム〜マネーは踊る〜」(リブインピースブログ) ──以下は映画のストーリー紹介── 映画は家を追い出される場面から始まる。それは突然で銀行も知らなかったという。いつの間にかその家が転売されていたのだ。そして保安官によって強制執行が行なわれた。銃を持ちドアを蹴破る勢いだ。その家は先祖代々守ってきた土地に自分が設計した家だった。ただ食べるために真面目に働いてきたのに、追い出されたのだ。こんなことが、合法的にアメリカで行なわれている。それは資本主義だからだ。 転売するハゲタカは、売主への同情はなかった。物件探しはネット。戦場のデータ収集と似ているという。直接目の当たりにしないから、同情を持ちにくいシステムだ。これも、合法だ。 かつて、アメリカは資本主義によって世界一豊かで自由を謳歌していた。それは第二次世界大戦でアメリカが勝利したからで、中流である限り資本主義はたしかに素晴しかった。資本主義は、社会が何を求めているかを自由競争制によって勝ち取ることで社会が発展するという。だが発展の動機は「利潤」、自分が儲けるためだったのだ。 カーター大統領は、「消費生活にひたりすぎた。人間性まで富によって決定・・・」と言い、労働者の賃金をアップする、自由競争制に歯止めをかける流れもあった。 しかし、1981年11月4日、レーガン大統領が就任。 資本主義の発展である「強いアメリカ」「小さな政府」をスローガンに軍事費増加と福祉予算削減・規制緩和などを推し進めたのだ。このスローガンは日本でも他人事ではない。そうして経済界とウォール街を結びつけ「企業のような国」になっていく。そしてレーガンは再選した。結果アメリカの産業基盤が解体。法律も資本主義の矛盾を極限まで広げるのに一役買う、最富裕層の税は減少し一般国民の税負担は増えた。医療保険も薬も医療費もアップ。そして市民の半数が生活保護となり、格差が拡大した。雇用では、儲けがあるのに「リストラ」される。何万人がリストラされ無職になっても「競争力を高めるため」の「リストラ」は堂々と行なわれたのだ。 そうやって消えたGMの街の紹介もあった。解体された物のクズが残る荒地だった。2008年のクリスマス前のある日、3日前の通知で組合員250人が突然解雇になった。その理由は銀行が融資を断ったからだという。労働者からは「一生懸命働いた仕打ちがこれか」「ここでの職場仲間は第二の家族だ。ひどい仕打ちだ」という声があった。これも資本主義の結果だ。 それでもブッシュは「資本主義はグッド!」という。「資本主義は職業選択の自由を与えるものだ、人々が望むものを買うことができる」からだと。そこで「家の差し押さえ」の看板が映し出されてさらに皮肉る。 自由競争制はなんでもかんでも利潤動機に還元してしまう。市民の家を奪い、市民の税金・医療保険・薬・医療費は増加。パイロットなのに生活保護。無断で従業員に生命保険(企業は『くたばった農民保険』と呼ぶ)をかけて儲ける企業。少年院を民営化にしてどんどん少年少女を入れる裁判制度をつくる。…これらは全て現実なのだ。 もはや、人命も人生も富裕層の道具になっている。さらに国から援助までもらっている。その援助は市民の税金だ。貧しい人のお金が富裕層にばらまかれるのだ。 場面は変わって神父へ資本主義についてインタビュー。 「全ての慈善に反する資本主義」「不道徳で汚らわしい、猛烈なる悪だ」「根本的な原理が間違っている」 キリスト教信者のブッシュは資本主義について言う。 「私有財産制度・利潤動機・自由競争は道徳的で神の教えに沿う」 資本主義は富裕層にとっての天国を作るのだ。 そしてウォール街――狂ったカジノの紹介だ。今や、金融界に就職したら有利だからと頭脳はウォール街に集結。不正を問われないように、ワザと複雑にした複合金融商品を扱っていた。 「そこは働けば働くほど世の中を悪くするところです。」 天才的な思いつきは「家を担保に融資する」ことだった。これは結局家を追い出す手口となった。そして家を取り上げられるように、銀行は「規制緩和」を経て「サブプライムローン」を誕生させた。 ところが政治家担当のローン係の証言は、「金利は最小、手数料もとらない」ときた。ウォール街を監督する側の人間にはやさしいローンだったのだ。2001年、住宅ローンが異常だとFBIが言い始めるとブッシュはFBIを移動させた。そしてCEO(最高経営責任者)は逃げた。 金融危機は耐えていた国民を・・・「ウォール街は税金泥棒!」と富裕層に初めて向かわせた。オバマ大統領の選出もその1つだ。しかし富裕層は抜け目なくオバマに大金を献金した。また、アンケートで社会主義よりも資本主義をとる若者が37%に減少している。 そしてオバマ大統領になって家から住人を追い出していた保安官が法を犯し始めた。差し押さえをやめたのだ。「家族から家を取り上げるのは良心が許さない」 また、「住民パワー」で、追い出された家を占拠する闘いもあった。「不法侵入」扱いで9台のパトカーがすぐやってきたが、近隣の住民も共に闘った。「空き家が増えると私たちの家の資産価値が下がるから困る」。そして少女がいう「人をホームレスにするってどんな気分よ」そんな民衆パワーで警官は去ったのだ。 ある議員は言った「家の差し押さえはコピーの書類ではできない。原本でないと効力がない。今差し押さえがいっぱいありすぎて原本もってない!だから堂々と家を取り戻しなさい!」 労働者も闘いはじめた。 「事前通告なしの解雇はおかしい」とオーナーや銀行に言うんだ! そして座り込みストを始めた。 会社と銀行の間で契約していたことなのに、どうして従業員が罰を受けるのか? 警察との実力行使に備え、徹底的に闘う覚悟をもつ労働者達。 救済金で救われた銀行、仕事もないのにどうして銀行だけを助けるの? ストを何日も行なった。 ストに対し「世の不正に挑むことは正しいことだ」と司祭が応援にも来た。 そして、支払われるべき給与の要求を大統領も認め、シカゴの市民も応援にやってきた。 6日間のストでシティバンクと会社は全面的に要求を受け入れた。 その額6000ドル。 これは労働者が1つになって得たもの。ただ当たり前のものを得るためだけど、闘わなければ得られなかったものだ。 ウォール街に対する労働者一揆の始まりか? 協同組合みたいに、工場経営できないかと労働者同士が話ししている会社の紹介もあった。 マイケル・ムーアは幻の第二の権利章典を紹介する。「安全と繁栄の基盤が全ての国民にある」「経済的不安から免れる権利」−−これは、雇用・保険・教育・家・有給休暇などを保障するものだ。これを提唱した人物はこの一年余り後、第二次世界大戦が終わる前、急死したという。未だアメリカ国民にはどれも保障されていない。 第二次世界大戦での敗戦国は、憲法で保障されているものも多いのにと皮肉。 そこで日本は「全ての労働者には団結権がある、教育を受ける権利もある・・・」と紹介されていた。大切に守っていかねばならない。 一握りの人だけが裕福になる体制を許しているからそれをとりかえさねば、そのためには、資本主義でも社会主義でもなく、民主主義に!マイケル・ムーアは民主主義を取り戻そうと熱く訴えた。 最後のマイケル・ムーアのメッセージは「僕1人では無理だ。みんな、立ち上がろう!」だ。 2009年12月24日 |