2009年2月26日、大阪地裁で「靖国イヤです訴訟」の判決が言い渡されます。 これは、2006年8月11日、靖国神社に合祀された戦死者の遺族が国と靖国神社を相手取って、合祀に使用された名簿(霊璽簿等)からの氏名の抹消と慰謝料の請求を求めた裁判です。政教分離に関する訴訟の中では、初めて靖国神社をも被告としました。 原告が一貫して主張しているのは、戦死した親族が遺族の意志に反して靖国神社に合祀され続けているのはまったく理不尽だということです。これに対する靖国神社の態度は、「遺族の意志には関係なく合祀基準を決め、戦死者を合祀するのが、明治天皇によって創建されたとき以来の靖国神社の教義である」というものです。それが、靖国神社の「信教の自由」だというわけです。 今でこそ一宗教法人となっている靖国神社は、戦前には軍の一機関であり、国家組織そのものでした。敗戦によって軍が解体される時に、靖国神社は「宗教法人」となることでその存在を許されました。しかし、国との密接な関係は、現行憲法における政教分離規定で禁止されているにもかかわらず、実質的に引き継がれました。200万人もの戦死者の合祀は、国・地方自治体の多大な人的財政的援助なしにはとうてい不可能でした。この詳細は、今回の裁判に証拠として出された『新編 靖国神社問題資料集』によって、初めて具体的に明らかにされました。 原告が慰謝料請求の根拠としているのは、「敬愛追慕の情を基軸とした人格権」の侵害です。これもまた、この裁判で初めて提起された新しい観点です。これは、かつて最高裁で法的保護に値しないと否定された「宗教的人格権」とは異なって、原告がどのような宗旨を抱いているかに関わらず、親子兄弟などの人格的結びつきから生じる権利として位置づけられています。 靖国神社は過去の亡霊ではありません。小泉首相がその在任中何度も靖国神社を参拝したのも、単に過去の戦争を美化するだけではなく、これから戦死者が出た場合に備えようとしていることは明らかです。現に、自衛隊はイラクから撤退したのもつかの間、ソマリアという新たな戦場に向かわされようとしているのです。 こうした状況の中で、どんな判断が出されるのか、非常に注目すべき裁判です。ぜひとも歴史的瞬間を見に行きましょう。 また、判決の前日25日(水)には、田中伸尚さんを講師にお招きした「判決前夜集会」もあります。こちらにもぜひ参加しましょう。 2009年2月15日 大阪Na
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