6月12日、アメリカのトランプ大統領と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の金正恩委員長が会談し、両国は朝鮮半島の非核化と北朝鮮への安全の保証を確認しました。両国のトップが直接会談したのは歴史上初めてのことです。私たちは米朝首脳会談を朝鮮半島の緊張緩和、平和、安定に向けた歴史の大きな流れの始まり、新しい時代の始まりとして歓迎し支持します。 米朝首脳会談で、(1)トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えると約束し、(2)金委員長は朝鮮半島の完全非核化への確固たる揺るぎない約束を再確認しました。さらに両国は、(3)新たな米朝関係の確立と(4)朝鮮半島で持続的で安定した平和体制に向けた努力を確認しました。(5)両国は完全非核化と朝鮮戦争終結をめざした板門店宣言を確認し、(6)不明米兵の遺体返還を約束しました。会談後、トランプ大統領は、朝鮮戦争はまもなく終わるとコメントし、米韓の側から合同軍事演習を中止することを示唆し、北朝鮮が核実験場爆破に続いてミサイル実験場の破壊を提案したことを明らかにしました。両国は非核化と安全の保証の具体的な内容についてすぐに交渉することになっています。 米朝首脳会談は、初めて両国のトップが会っただけでなく、限定攻撃、斬首作戦、軍事的威嚇が続く状態から平和と安定、非核化の方向に大きく舵を切った歴史的転換点でした。トランプ大統領は「相手を脅かすことはしたくない」と言明しました。戦争の危険は大幅に低下しました。それをさらに確固としたももにする事は南北、周辺諸国の人々の心からの願いです。 日米メディアのひどすぎる報道 米朝首脳会談に対して米の民主党、共和党の一部、リベラル系と言われるメディアは悪意に満ちた態度で酷評しました。「中身がない」「譲歩しすぎ」「だまされるな」等々。このような態度には驚くばかりです。彼らの批判の中心は「合意が具体化していない」ことではなく、朝鮮半島の平和と安定への転換そのもの、北朝鮮に対する安全の保証そのもの(相手を主権国家と認めること)に向けられています。米の支配層、メディアは軍産複合体と深く結びついています。彼らは戦争の火種がなくなっては絶対に困るのです。今回の首脳会談への評価ほどそのことを露骨に表明したことはありませんでした。 日本政府とメディアも同様です。安倍首相は会談を一応「歓迎」しましたが、それは拉致問題に利用できると考えただけです。河野外相らは未だに「最大限の圧力維持」「制裁徹底」の繰り返しています。メディアの酷さは例を見ないほどでした。保守系だけでなく全部の新聞がけち付けのオンパレード。だまされるな、信用するなの大合唱でした。彼らは米朝両国が非核化と安全の保証で合意し実行することが成果とは考えていないのでしょう。彼らは北朝鮮が悪の国で、絶対にだまそうとすると考えているのであり、そんな国相手の成果とは一方的に武装解除させ、裸踊りをさせる以外にないと考えているのです。日本のメディアとそれに導かれた日本の世論には北朝鮮に対する極めて歪んだ偏見や悪意、根深い差別意識があります。私たちは北朝鮮を米と同様の一個の独立主権国家と認め、そのトップが朝鮮半島の非核化と北朝鮮の安全の保証で合意し、両国間に信頼関係が構築され始めたことを前向きに受け止めるべきです。 具体的に進み始めた朝鮮半島の非核化と平和と安定化 「中身がない」――とんでもありません。もちろんトランプ大統領はいうように具体的な内容を文章化する時間はなかったでしょう。しかし、すでに米韓が合同軍事演習の中止や韓国軍の演習縮小を決定し、北朝鮮がミサイル実験場破壊を表明し、不明米兵の遺骨返還に踏み出しています。昨年11月以来北朝鮮は核実験、ミサイル実験をしていません。双方が段階的・同時的に措置を取り始めています。朝鮮戦争の終結が次の課題です。米も板門店宣言を受け入れた事で、朝鮮戦争の終結も近いのです。同時に、米朝間では非核化と安全の保証の具体的な過程について交渉が進められています。非核化と朝鮮半島の平和と安定化、何よりも両国間での信頼醸成措置として具体的な内容が一つ一つ進んでいます。 すでに朝鮮半島の平和と安定を前提にこの地域で次に向けた協議が進んでいます。中国は北朝鮮に対する制裁解除を要求しました。韓国は南北関係の改善の協議を進め、開城工業団地再開に向けた調査を始めました。ロシアも北朝鮮を通じて韓国までの鉄道連結を提案しています。平和への道が進めば、地域の経済協力をすすめる環境が整い始めています。 米朝会談をもたらした歴史的な力 「嘘つき」の批判も、まず米政府を問題にするべきです。イランの例を見るまでもなく、定められた協定さえ守らない、政権が変われば態度が変わるのは米政府の方です。米朝枠組み合意や6者協議も米政府に振り回され、結局つぶれました。北朝鮮に対しては歴代政府は一貫して北朝鮮の体制崩壊か一方的な非核化を追求してきました。トランプ大統領は就任以来、軍事作戦の実行を模索しましたが被害が大きすぎて不可能であり、次には中国やロシアまで巻き込んで史上最大の経済制裁で包囲しても北朝鮮を屈服させられず、結局話し合いで解決する道を選ばざるを得なくなったのです。アメリカの力の限界がこんな形で現れたのです。 さらに朝鮮半島での戦争は絶対に許さないという人民の力が各国政府を後押ししています。キャンドル・デモで前政権を打倒した韓国民衆の力が文政権を後押ししています。朝鮮半島の非核化の決意を固めた北朝鮮金委員長の呼びかけに即座に応え、南北関係の改善に転換し、板門店宣言で米朝首脳会談への道を空けたのは南北の協力した力です。地域の平和と安定を願う中国、ロシアが過程を後押ししました。米日韓中ロが制裁で北朝鮮を包囲する体制は、北朝鮮と韓国、中ロが米に交渉による非核化と平和・安定を求める体制に転換しました。トランプ政権に朝鮮半島の非核化、朝鮮戦争の終結と平和協定、北朝鮮との共存を求める力が歴史的な大きな流れになっているのです。 歴史の流れに逆らう安倍政権の軍拡と改憲 安倍政権はトランプが米朝交渉で拉致問題を話したと聞いて、拉致問題を持ち出して日朝会談を行えば支持率上昇の好機と色めき立ちました。しかし、北朝鮮側は早急には動くつもりはなく、進捗はありません。河野洋平氏がいみじくも言ったように「平壌宣言履行と日朝国交正常化」を先に解決しないと拉致問題も解決しないのです。日本側のメディアが北朝鮮が一方的に加害者側であるかのように描くのは間違っています。日朝間では第2次大戦と植民地支配の処理が未だ終わっていません。加害者側であった日本からの謝罪と賠償、それに基づく国交正常化が終わっていないのです。日本の政府と人民はこの責任を果たさねばなりませんし、それを忘れたり、北朝鮮に対する賠償をあたかも援助であるかのように考えることは許されません。私たちは自分自身の過去の侵略・植民地支配の責任と向き合い真摯に反省するとともに、被害国に対する根深い差別や偏見の意識を克服しなければなりません。 朝鮮半島での軍事的緊張が大幅に減れば、在韓米軍の撤退も現実のものになるでしょう。昨年以来の米軍の動きでも明白なように、在日、在沖縄米軍の活動の多くが朝鮮半島に向けられており、在日、在沖縄米軍撤退、基地撤去の絶好のチャンスなのです。ところが、安倍政権は米朝の非核化・平和協議に抵抗するだけでなく、従来から進めてきた軍事力増強計画をそのまま突き進もうとしています。最近では、(1)北朝鮮のミサイル対応で、必要なくなるはずの秋田と萩へのイージス・アショア建設強行、(2)朝鮮半島出動を主任務とする米沖縄海兵隊の辺野古新基地強行、(3)さらには、軍事費の2倍化(GNP比2%)など、かつてない大軍拡計画である新防衛大綱と新中期防を作成し、これまでの軍拡のテンポと規模拡大を加速させようとするなど、朝鮮半島の平和の流れに逆行する政策を採り続けています。さらには憲法改悪で堂々と戦争のできる国にしようとしています。歴史の流れの前に無駄なあがき、許しがたい愚行と言うほかありません。いま米朝会談を契機に起こっている流れをさらに進めるためには、トランプ政権はもちろん、安倍政権に対して朝鮮半島の平和と安定、日本の軍備縮小、在日米軍撤退を要求する運動の力で突きつけていくことが必要です。大衆的な運動を作る条件はかつてなく有利に成熟していきます。力を合わせて安倍政権打倒、軍拡反対の声を上げましょう。 2018年7月1日 |
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