ウクライナの火薬庫爆発で劣化ウランがばらまかれた可能性
真相の究明と劣化ウラン弾の使用禁止を!

 5月13日にウクライナ西部にあるフメリニツキ―Kheminytskyの弾薬庫がロシアのミサイル攻撃を受けました。弾薬庫には4発のミサイルが着弾したようで、弾薬の誘爆が起こり2度の大規模な爆発が起こりました。通常のミサイル爆発では起こらない巨大で異常なきのこ雲が上空まで立ち上りました。
 もしもこの弾薬庫に劣化ウラン弾が備蓄され、それが爆発、燃焼、拡散したのなら、被害はウクライナのみならず欧州全体に及びます。ウクライナ政府が科学的調査を行い結果を公表しない下で、限られた情報だけでは劣化ウランが環境中にばらまかれたかどうか判断することはできませんが、とりあえず現状で分かる範囲で状況をまとめます。
ウクライナの都市フメリニツキー:ロシアは劣化ウランの殻を蒸発させましたか?(globalreserch;弾薬庫の様子とキノコ雲のビデオを見ることができます)

 爆発の直後からSNSなどでさまざまな情報が飛び交いました。その中で空中のガンマ―線線量が突然跳ね上がった(スパイクした)というものが相次ぎました。フメリニツキーでは12日に直ちにスパイクが現れました(下のZlattei71のtwitterのAとB)。しかし、同じウクライナ国内のテルノポリ、フミルニク、ヴァヤ・ウシッア等では環境レベルにとどまっています。爆発は13日の早朝と言われますから、12日にすでに放射線レベルが上昇したことは不可解です。しかしその後も放射線レベルは上がったままです。またポーランドのウクライナ国境に近い地域の放射線モニターに明確なスパイクが出現し、放射線レベルが一時的に50%前後跳ね上がりました(3番目の図表参照)。到達時間から見てもフリメニツキーの爆発の噴煙が流れてきて、その中に放射性物質(劣化ウラン)が含まれていた可能性があります。フリメニツキ―はポーランドからキエフ(キーウ)に向かう途中にあり、ウクライナ軍の弾薬庫がありました。近いうちに始まると言われているウクライナ軍の反攻にむけてNATO諸国からポーランドを通じて運び込まれた大量の弾薬やミサイルが一時的に貯蔵されていた可能性が大きい場所です。英国がウクライナに供与したチャレンジャー戦車用の劣化ウラン弾が大量に貯蔵されていて、弾薬庫の爆発で劣化ウラン弾が燃焼・飛散したために周囲で放射能レベルが上がったのではないかという疑惑の声があがったのも当然と言えます。放射線レベルのスパイクは2日ほど遅れてポーランド国内の多くの観測地点で観測されています。その結果、ポーランド国内では放射能汚染が起こっているという住民のパニックが生じたと報じられています。
「フメリニツキー劣化ウランの更なる最新情報。グレブ・ゲオルギエヴィッチ・ゲラシモフによる優れた研究。(twitter;Zlatti71/@djuric_zlatko)
ロシアのミサイル攻撃により、危険で環境に悪い劣化ウラン弾を含むウクライナの大規模弾薬庫が破壊される(NaturalNews;和訳)
フメリニツキーの巨大な「キノコ」爆発が「劣化ウラン」の主張を再燃させる(Newsweek2023/5/15)







 こういう中で、この問題について注目すべき論説の一つが5月19日にスプートニクに掲載されたクリス・バズビー氏のインタビュー「ウクライナの劣化ウラン爆発;「環境災害」の危機に瀕しているヨーロッパ」※です。クリス・バズビー氏はイギリスの科学者で、英国国防省劣化ウラン監視委員会DUOBの委員(2000-2005年)、英政府の放射線リスク調査委員会CERRIEの委員(2000-2004)を務め、欧州放射線リスク委員会ECRRの科学書記を務めています。バズビー氏はイラク戦争の経験から劣化ウランが燃焼した微小な粒子は長距離を飛ぶこと(イラク戦争の際はイギリスでも検出されました)を指摘し、チェルノブイリ事故後に整備されたモニターステーション網の多くの地点で、コメリニツキーの爆発の後でガンマ―線の急上昇(スパイク)が現れたことを問題にしています。また、バズビー氏は劣化ウランは健康に影響がないだとか、ガンマー線を出さないなどという政府側の宣伝は嘘であり、劣化ウランの238Uの娘核種トリウム234はガンマー線を放出するので放射線モニターで検出可能だと言っています。もちろん劣化ウランの弾丸や貫通穴からは何年経ってもガンマ―線が検出できます。だからウクライナ政府がフリメニツキー弾薬庫周辺の調査を行えば直ちに真実が明らかになりますが、ウクライナ政府はこの問題について否定、ないしは沈黙しています。さらに非常に不可解なことに、ヨーロッパ全土に配置された欧州委員会共同研究センターJRCの放射線環境モニタリングREM※についてドイツから管理されているWebベースのシステムEURDEPがが一時ダウンしてデータ提供を止めました。切断前にダウンロードしていたデータはポーランドの東部(ウクライナに近い側)で爆発地点から北西に250キロ離れた地域で15日に明確なスパイクがあり、ガンマ―線のレベルが50%も跳ね上がったことを指摘しています。ちなみに、その後復旧したREMのデータ※から見る限り、ポーランドの多くの地点で15日、17日に明確なスパイクがあり放射能を含む放射能雲(プルーム)が通過したことを思わせるデータになっています。
ウクライナの劣化ウラン爆発:「環境災害」の危機に瀕しているヨーロッパ(5/19付け)
欧州委員会共同研究センターJRCの放射線環境モニタリングREMのマップ

 バズビー氏が取り上げたもう一つの例はポーランド東部のルブリンのマリーキュリー研究所でのデータです。ここでの測定者は、ガンマー線のスパイクが主としてビスマス(とタリウム)からのものであるとし、ビスマス214は地面のウランとラジウムから生成した放射性ラドンガスRn222から生じたもので、大気圧の急速な変化、または降雨があった場合にピークが現れる、だから何も心配ないと暗に言っているようです。しかしバズビー氏は、フメリニツキーからの放射能雲(プルーム)を識別するタイミングでポーランド全土でガンマー線が上昇していることを説明できない、何よりラドンを地面から引き出す可能性のある大気圧の変化はなかった、ルブランにはわずかな降雨があっただけだと反論しています。もしそうならば、やはり劣化ウランの燃焼による粒子から発生した可能性は否定できません。
Radiation spikes in the air appeared in eastern Poland(バズビー氏が言及しているのと少し違いますがウクライナ側のデータです)

 最後にバズビー氏はウクライナの爆発現場で通常の消防士ではなくロボット車両を使用して爆発現場を片付けていることに疑問を示しています。何のためにロボット車両が必要なのか、バズビー氏はチェルノブイリと福島でしか目にしたことはなかったと指摘します。
ロボットの消火装置(Algernonのtwitter、ただし工場の現場のようであり、弾薬庫ではない可能性があります)

 バズビー氏は、もし彼の推測が正しければ、環境災害が発生しており、劣化ウラン粒子はポーランド、ドイツからヨーロッパ全域に拡散するだろう、そしてバルカン半島やイラクで引き起こしたように遺伝的損傷と死をもたらすだろうと警告しています。

 もちろん、さまざまな情報がある中で全部に整合性のある説明はまだありません。ウクライナ国内の放射線モニターには明確な放射線上昇や放射性の雲が流れたと思われる証拠は明らかになっていません。キチンと真相を究明し,結果を公表することが必要です。今回の爆発について、ウクライナ当局は黙殺しています。しかし、本来彼らが調べればすぐにわかることです。そして住民の命と健康に責任を持つウクライナ当局はその調査をする義務があります。

 最後に、バズビー氏も指摘していますが、たとえ弾薬庫爆発に劣化ウラン弾が含まれていなくてもウクライナと欧州全体の人々が直面している危険自体は変わりません。なぜならウクライナ政府は英国から与えられたチャレンジャー戦車で劣化ウラン弾を撃ちまくり、ウクライナの国土を劣化ウランをばらまくつもりを変えていないからです。使われた劣化ウランは放射性の微粒子となって国中に拡散し、人体に入り,あるいは環境中に蓄積されるでしょう。劣化ウラン弾は破壊した装甲車両の兵士を殺傷するだけでなく、長期的には広大な地域住民の健康被害、遺伝障がい、ガン増加などを引き起こします。いったんばらまかれてしまえば、元に戻すことはできません。ポーランドで一部の人々が今回の爆発でパニックになったといわれますが、ウクライナ政府とNATOは実際に放射能による環境汚染を全面的にやろうとしているのです。とうてい正気の沙汰とは思えません。
 さらに劣化ウラン弾の使用は、ロシア軍による劣化ウラン弾の使用を呼び起こします。あるいはヨーロッパ全域への戦争の拡大、さらに欧州核戦争の危険さえ強めるものです。劣化ウラン弾の使用をやめることは緊急の重要性を持っています。

2023年5月24日
リブ・イン・ピース☆9+25