住民投票・ロシア併合には反対します ロシアは9月下旬に、占領下のウクライナ東部・南部4州でロシアへの併合に関する住民投票を行い、圧倒的多数の住民が支持したとして、10月5日にプーチン大統領は南部2州の独立と4州のロシアへの併合手続きを終えました。 私たちはこのウクライナ東部・南部地域の住民投票・ロシア併合に反対します。国家主権・領土主権の侵害であり、国際法に違反するからです。現在いる住民の圧倒的多数がロシアへの帰属を望んだといいます。彼らの多くは2014年以来、ウクライナ政府からの差別、虐待、虐殺を受けてきました。ですからウクライナ政府からの住民保護・防衛的措置の側面は否定できません。しかし、戦争状態、占領下での住民投票は自由意志と公正さに疑問が残ります。ウクライナイ側に避難した住民の意思も反映されません。本来なら、住民すべてが参加し、公正さが保障されなければなりません。このためにも停戦と政治的解決が必要なのです。 ウクライナ戦争の階級的・基本的評価は変わらない 他方、住民投票と併合問題を、前記の米・NATO主導の戦争拡大スパイラルと切り離して考えることも誤りです。メディアは、一つ一つの出来事をロシア批判のためにだけバラバラに報道します。4州併合だけを取り出して、ロシア批判、ウクライナとNATOの側の戦争拡大正当化に使います。惑わされないようにしなければなりません。歴史過程を無視すれば事の本質を見誤るのです。 今回の2月以降の事態について、私たちはロシアのウクライナ侵攻に反対です。独立主権国家に対する軍事侵攻は、国連憲章、国家主権と領土主権不可分性の侵害であり国際法に違反します。しかし、ロシア−ウクライナ関係には、今回の戦争に至る歴史的な背景、経緯があります。この理解抜きには、停戦・和平交渉の意義も、永続的な和平の道の意義も見出すことができません。 今回の戦争の直接的・根本的原因は、米・NATOが直接間接に介入した2014年の「マイダンクーデター」による親ロシア政権打倒に始まります。米は莫大な資金と人脈で育成した反ロシア勢力、ネオナチ勢力を利用し、ウクライナ軍をネオナチ化したのです。ゼレンスキー・ネオナチ政権は、反ロシア=ウクライナ民族主義を前面に出し、東部2州のロシア系住民への虐殺と弾圧を続け、2国間・多国間で合意した東部2州の和平合意(2つの「ミンスク合意」)を守らず、破棄し続けました。戦争は7ヶ月ではなく8年間続いているのです。そしてゼレンスキー政権はクリミアを奪還するために、自国を対ロシアミサイル基地にするために、NATO加盟を企てました。 今ではゼレンスキー政権が一方的な被害者、聖者として世界中に宣伝されていますが、反動的・軍国主義的で、ネオナチと一体化した軍隊をもってロシア系住民を虐殺した残忍な政権であるのです。 ヨーロッパの永続的安全保障の枠組みしか解決できない マイダン・クーデターをそそのかしたのも、ゼレンスキーの好戦的野望を後押ししたのも米・NATOです。この一連の歴史過程を主導したのは、ソ連社会主義崩壊以降以降の米・NATO帝国主義による東方拡大=ロシア封じ込め、プーチン打倒政策です。ロシアを属国化し、その石油・天然ガス・鉱物資源を略奪することが究極の目的でした。 ロシアが2月に先制攻撃したために事態は複雑になりましたが、今回の戦争の歴史的起源、根本原因を見誤ってはなりません。元々、今回の戦争は、米・NATOによる資本主義ロシアに対する帝国主義戦争なのです。さらに戦争拡大スパイラルの現局面では、危険な冒険主義的好戦的性格が前面に出ています。従って、戦争の推進力である米・NATOに矛先を向けて非難・批判を集中する必要があるのです。 一部の論者はロシアの一方的撤退を主張します。しかし、戦争スパイラルの中でのロシアの一方的撤退は何を意味するのでしょうか。少し考えれば容易にわかります。東部2州とクリミアのロシア語系住民に対する報復と大虐殺、大惨劇が起こるのです。そしてウクライナが米・NATOの新たなロシア攻撃拠点になり、中距離核兵器が配備されます。そうなれば、次の米・NATOとロシアとの本格戦争が起こるだけです。(すでにスウェーデンがNATOに加盟すれば核爆弾を配備する話になっています※1) まずは、即時停戦・和平が必要ですが、それはヨーロッパ全域の永続的和平の枠組みへの第一歩として位置づけられなければなりません。ロシアに一方的に犠牲を強いるのではなく、東部・南部のロシア語系住民の安全と自由を保障するシステムを作ること、米・NATOの東方拡大、ロシア打倒戦略を断念させることが絶対条件です。そうでなければ安定して平和を維持することなどできません。 ※1 NATO加盟なら核配備容認も スウェーデン新首相 米・NATOのかつてないグローバルな戦争介入 米・NATOは、ウクライナでの「代理戦争」を拡大しながら、同時に「台湾有事」で対中戦争挑発を加速させ、さらに、新たに「朝鮮半島有事」に乗り出しています。そして、イランでも政権転覆を策動しています。 米軍は台湾周辺、東シナ海、南シナ海で威嚇的な軍事行動を繰り返し、自衛隊鹿屋基地には無人偵察機部隊を新たに配備しました。朝鮮半島、日本海、黄海でも空軍力の総力を挙げた大規模な米韓軍事演習を行いました。それは朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を狙ったもので、北朝鮮が空軍機を発進させミサイル実験を繰り返したのは米韓共同軍事演習に対する牽制と対抗です。バイデン大統領は、米空母を日本海に2度にわたって展開し、対北朝鮮、対中国挑発を続けています。ここでも日本が加担し、日本海では日米韓の共同訓練で北朝鮮を威嚇しています。イランでは米の介入による反政府暴動を警戒して政府支持の大規模なデモンストレーションが行われています。 米軍が3つの正面で戦争を構えるのはかつてなかったことで、異常というしかありません。それが各地で政治的軍事的緊張を急速に高め、偶発戦争も含めて戦争の危険性を高めていることは言うまでもありません。しかし、西側政府・メディアは、米軍の行動や米韓の軍事演習の危険性は無視し、中国、北朝鮮、イランを一方的に非難するばかりです。メディアの多くが西側政府に都合の良いことだけを一方的に垂れ流す現状は政府のプロパガンダ機関に成り下がったと言うほかありません。 反米・反帝の反戦運動を強めよう 米では全米統一反戦連合UNACや女性反戦団体コードピンクなどの反戦運動が10月15−22日の週、中間選挙の選挙戦の最中に「ロシアと中国に向けたワシントンの戦争を止めよう!イラク、シリア、ソマリア、パレスチナ、あらゆる場所での終わりのない戦争を阻止しよう!戦争ではなく、住宅、気候、医療におカネを!」を掲げて全米・全世界50カ所で街頭行動を行った。イギリスでは郵便労働者や鉄道労働者がストライキを闘い、反インフレ闘争の先頭に立っている。Enough is Enough(いい加減にしろ! もう我慢できない!)キャンペーンが行われ、50万人が参加する行動が行われました。ドイツではノルドストリームを爆破されたにもかかわらず、ショルツ政権はウクライナ支援を強めていますが、国内ではショルツの軍事費の大幅増=再軍備と対ロ戦争・制裁強化への反対が強まっています。暖房・パン・平和をスローガンに各地で行動が行われ、左派はインフレ反対に反NATOを合わせて主張しています。ウクライナに戦争を押しつけ続けている米国と西側政権に矛先を向けた闘いに連帯して即時停戦・交渉で解決しろ、自国の軍事費増・軍拡と闘う声を広げましょう。 2022年11月13日 |
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