ロシア軍は即時停戦し、撤兵せよ
米・NATOの東方拡大=ウクライナ加盟反対
岸田政権の米・NATO支持、武器輸出に反対する

[1]

(1) 私たちが訴えたいのは、今回の戦争の原因そのものからして、ロシアへの一方的非難では和平に向けて一歩も前進しないと言うことです。ロシア非難と同時に、米・NATO諸国をも非難すること、ロシアに停戦・即時撤退を要求すると同時に、米・NATO諸国政府とゼレンスキー政権に対してウクライナのNATO加盟撤回を求めることです。この2つを同時に押し出すことが必要だと考えます。
 これ以上、犠牲者や避難民を増やしてはなりません。ウクライナでは戦闘による市民の犠牲者が日増しに増えています。これからハリコフ、キエフという大都市の攻略が始まれば、その被害は計り知れません。すでに200万人以上の市民が隣国に避難しています。ザポリージャ原子力発電所付近での戦闘は、火災を引き起こしました。核被害を引き起こさせてはなりません。2月27日にプーチン大統領が核抑止部隊に特別態勢を取るよう命じたことは、核戦争をどう喝の道具として使うものです。欧州はおろか世界中を核で恫喝するなど絶対に許されません。

(2) 世界中でウクライナで人々が殺されていることに抗議し、ロシアを非難し、すぐに戦争をやめろの声が上がっています。世界中のウクライナの人々が抗議活動を行っています。米国でも、ヨーロッパでも、日本でも、ロシアの侵攻に抗議し、即時撤退を呼びかける行動が、若者を含めて広がっています。戦争の非人道性、市民の犠牲に怒った人々が次々と参加しています。戦争反対の声はロシア国内からも上げられています。
 私たちは改めてロシアの軍事侵攻に反対します。ロシアは直ちに侵攻を停止し、停戦すべきです。ウクライナとの政治的協議での解決を目指し、軍隊を撤退すべきです。そして同時に、米・NATOは東方拡大とウクライナのNATO加盟を断念すべきです。

[2]

(1) ウクライナを巡る状況は極めて危険な局面に入りました。戦争の新しい拡大に反対することが全世界の反戦平和運動に迫られています。
 ウクライナのゼレンスキー大統領はウクライナ上空を「飛行禁止区域」に指定するようNATOに要求しました。これはウクライナ上空に入ったロシア機をNATO軍が撃墜しろという要求です。NATOのストルテンベルグ事務総長も米国のブリンケン国務長官も、ロシア対ウクライナの戦争がロシア対米・NATOの、全面戦争に拡大しかねないと拒否しました。
 しかし、ゼレンスキー大統領は改めて「弱腰だ」「見ているだけなのか、助けろ」「今後の犠牲者はNATOの責任だ」とNATOを非難し繰り返し「飛行禁止区域」設定、つまり全面戦争を求めています。さらにゼレンスキー大統領がポーランドにミグ戦闘機の供与を求めたことに対して、ポーランドから飛び立って供与すると攻撃に参加したとみなされることを恐れ、ポーランド政府はミグを米軍に供与し米軍基地からウクライナに供与すること提案しました。今度は自分が戦争参加とみなされることを恐れた米政府との間で対立しています。
 また、彼は市民を避難させる「人道回廊」を拒否し、設置後も非協力的です。世界中から志願兵・傭兵(その実態は米・NATOの諜報機関が指揮する武装勢力および民間軍事会社兵士ら)、イスラム武装勢力を集め、戦闘拡大を進めています。民衆の犠牲をいとわない徹底抗戦ということでしょうか。
 ここにゼレンスキー大統領の本質が現れています。戦争をNATO、欧州や世界全体に拡大してロシアを敗北させ、ドンバス、クリミアを奪還したいという野望を持っているのです。私たちはゼレンスキーの冒険主義にも反対です。

(2) 米欧日など西側諸国は、NATOを巡るロシアとの交渉も、停戦や和平を巡る対話を一切せず、ただウクライナを焚きつけてロシアと戦わせるだけです。真に停戦や和平を求めるなら、バイデンはゼレンスキーを焚きつけるのではなく、率先して停戦・和平に動きべきです。ところが正反対のことをやっているのです。大量の武器・弾薬、軍事情報、軍事要員・諜報機関、大量の傭兵、民間軍事会社兵士を送り込んでいます。国連決議やEU決議で包囲し、経済制裁、民間機のEU上空飛行禁止、IT企業や西側のグローバル企業に懲罰的な投資引き揚げをさせ、金融市場から締め出し、ロシア経済を締め上げています。
 「飛行禁止区域」やミグ戦闘機供与に反対するのも、ただ自らは高みの見物をするという立場からです。バイデン政権は、参戦せず、ウクライナ政府の尻を叩き、ロシアに譲歩し、停戦や和平に動かないよう圧力をかけ続けています。
 米英政府は遂に、「亡命政権構想」を打ち出しました。これはウクライナ現地を泥沼の戦争に持ち込む道です。絶対反対です。
 米の戦略的な狙いは、ロシアを疲弊させ、あわよくば敗戦に持ち込み、プーチン政権を追い詰め打倒すること、それを梃子に国際政治における中ロの影響力を後退させることにあります。イラクやアフガニスタンへの侵略戦争で衰退した国際的な政治的・軍事的・経済的覇権を取り戻そうと考えているのです。

(3) 私たちは、もう一度、今回の戦争の本質、歴史的根源を振り返る必要があると思います。西側政府・メディアが洪水のように垂れ流す一方的なロシア非難の大合唱に反対します。
 「戦争は別の手段による政治の延長」という言葉があります。戦争に至る複雑な当時国間の政治過程全体を、歴史的経緯全体に遡る必要があります。すなわち今回の戦争をロシアが侵攻した2022年2月25日から始めるのではなく、昨年の2月21日のゼレンスキー政権の新政策に始まるロシアとウクライナ、ロシアと米・NATO諸国の昨年からの動き、2014年の「マイダン・クーデター」、ソ連崩壊時のソ連と米欧諸国とのNATOの東方拡大を巡る国際公約などに遡ることです。

[1] なぜ今、プーチンは、ウクライナに侵攻したのか? 実は、ゼレンスキー大統領は昨年2月21日に、演説を行い、自らの世論の支持が低下し始めた段階でウクライナ民族主義=反ロシア主義に訴え、勝負に打って出たのです。自らの延命のための火遊びです。
――第1に、NATOに加盟し、クリミア、ドンバス(東部2州)の奪還を目指す。そのために加盟申請から加盟までの計画を米・NATOに要請する。
――第2に、これを今年2022年中に実現する。
 その後、昨年3月には、東部2州の停戦と政治解決に向けた「ミンスク合意」を履行しないと言い放ちました。

[2] ゼレンスキーのこの強硬姿勢を後押ししているのが米・NATO諸国です。昨年12月〜今年1月にかけて行われた米ロ会談で、ロシアが掲げた要求に「ゼロ回答」を続けて、ロシアを追い込みました。
 「NATOに加盟するのはウクライナの主権だ」という意見が流布しています。それは間違った非常に危険な意見です。前記の如く、ゼレンスキーはNATOに加盟して、ロシア系住民が多数の東部諸州とクリミアを奪還すると宣言したのです。NATOに加盟してクリミア奪還に動けば、「集団的自衛権」で、米・NATO軍は自動的にロシアとの全面戦争になるのです。それがNATOという軍事同盟の怖さ、集団的自衛権の怖さです。
 そして米国やNATO諸国はこうしたNATO加盟を否定せず受け入れるようなそぶりを見せたのです。だからゼレンスキーは、NATO加盟の撤回を求めるロシアの提案に耳をかさず、戦争になっても構わないという態度をとり続けたのです。この[1][2]の出来事が今回のロシアの侵攻の直接の引き金です。
 プーチンとロシアの行動の根底には、ナチスドイツとの熾烈を極めた反ファシズム「大祖国戦争」で2700万人もの膨大な犠牲者をだした歴史的事実があるのです。

[3] それ以前に米欧の西側政府・メディアが煽動した「マイダン・クーデター」があり、これが引き起こした内戦があります。米欧政府によって大統領に据えられたのが、ゼレンスキーの前任者ポロシェンコです。
 凄惨な内戦の責任は、米・NATO諸国とウクライナ極右勢力にあります。選挙で選ばれた親露派のヤヌコヴィッチ大統領を追放するために「大衆運動」の形で政権転覆を実現したのです。これを指揮したのが当時のオバマ政権であり、今回の戦争を裏で操っているバイデン(当時副大統領)であり、ヌーランド(当時は国務次官補、現バイデン政権の国務次官)です。明らかに米・NATO諸国による内政干渉でした。この時、西側メディアは真実を報道したでしょうか。否、です。むしろマイダン・クーデターを「民衆の反乱だ」と礼賛しました。
 きっかけはEUとの政治・貿易協定を見送ったことでした。当時ウクライナはIMFの債務奴隷に成り下がり、新規借金の条件としてIMFから民営化や年金引き下げやガス料金値上げを要求されていました。ところが、民衆の鬱屈した不満は本来の矛先である西側政府・IMFに向けるのではなく、ヤヌコヴィッチに向けるよう煽動されたのです。暗躍したのはCIAの出先機関「全米民主主義基金」(NED)や米欧系「人権団体」など、政権転覆の際に必ず顔を出す内政干渉機関です。
 このクーデターの際に、米・NATOは、極右・ネオナチ民兵アゾフ大隊を組織し、ウクライナ軍隊と一緒に行動させ、ウクライナ民族主義を高揚させ、ロシア系住民を襲撃しました。これが東部諸州のロシア系住民の安全・保護をロシアが要求してきた発端です。しかし、アゾフ大隊は、巨大化し、正式に「国家親衛隊」として大統領の片腕にまで格上げされたのです。2014年から8年間のロシア系住民への襲撃と虐殺を指揮してきた米・NATOとウクライナ政府の責任は重大です。

[4] そして米・NATO諸国による「東方拡大」戦略です。東ドイツの西ドイツへの併合の際の「NATOはドイツから1インチたりとも拡大しない」との合意は、1990年に当時のベーカー米国務長官とゴルバチョフ書記長との間で、ドイツのコール首相やゲンシャー外相も合意した、今も守るべき国際公約です。ところがその後、5回にわたり拡大したのです。1999年3月、NATOは、ポーランド、ハンガリー、チェコの加盟を正式に承認。この結果、ウクライナはNATO加盟国及びロシアとそれぞれ国境を有することになりました。これ以降、ウクライナ加盟が焦点になり続けたのです。
 しかも、この拡大の過程で、モスクワを標的にした核トマホークミサイルを発射可能な発射機を配備し、軍事演習を頻繁に行い、ロシアを挑発してきました。ウクライナが加盟すれば、たった数分でモスクワを攻撃できる核弾頭搭載可能な中距離ミサイルを配備することは明らかです。

[3]

(1) ある意味で、停戦と和平に進むのは単純です。米国とNATOが東方拡大を行わない、ウクライナのNATO加盟を認めないと宣言するだけでいいのです。ところが、米もNATOも停戦と平和の方向では何もするつもりがありません。
 なぜつい最近までアフガニスタンやイラクやリビアや中東各地を侵略し、民衆を虐殺し、国土を破壊した米国が、今もソマリアを爆撃し、サウジアラビアをそそのかしてイエメンを攻撃し、イスラエルを支持してパレスチナ民衆を攻撃する米国が、そして台湾有事を画策し対中戦争準備を加速する米国が、まるで「平和の使者」「国連憲章の擁護者」のように振る舞い、この米国に国連やメディアが追随するのか。なぜ筋金入りのこの世界最大最強の軍事力を振りかざす侵略者が大きな顔をするのか。何かおかしい。いったいこの戦争は何なのか。こういう問いかけを発したいと思います。

(2) 伝統的な反戦平和運動の人々も声を上げています。英国のSTOP WAR連合、米国のCODE PINKや多くの反戦運動など、米国のアフガニスタン、イラク、シリア戦争に反対し、キューバ、ベネズエラ、ニカラグアへ制裁に反対し、イスラエルによるパレスチナ人虐待と抑圧に反対してきた人たちの反米反戦平和の運動です。
 彼らは、ロシアのウクライナ侵攻を非難し、即座の停戦とロシア軍の撤退、両国の政治的対話による解決を要求しています。それだけでなく、ロシア・ウクライナ戦争の歴史的経緯に遡り、この地域に持続的安定的な平和を作るために必要な本源的な要求を掲げています。それは以下の3つです。私たちも同じ考えです。
[1] ウクライナのNATO加盟を止めること。NATOの東方拡大を止めること。
[2] ウクライナが「ミンスク停戦合意」を遵守すること。
[3] NATOの東欧へのミサイル配備と兵力増強をやめること。

 確かに現に侵攻したのはロシアなので、ロシアへの非難が前面に出るのはやむを得ないことではあります。しかし、事態は複雑で矛盾したものです。ロシア非難だけを一方的に要求すれば、結局は米・NATOを支持して、ロシア・ウクライナ戦争を長引かせることになります。もともと、米・NATOの側がロシア包囲の東方拡大を強化し、ウクライナまで引き込もうとしたこと、ウクライナのゼレンスキー大統領がNATOが背後から守ってくれると思い、対ロシアで領土奪還の強硬姿勢を貫き、東部2州の停戦合意「ミンスク合意」さえ守らないと開き直ったことがロシア侵攻のきっかけです。
 持続的な停戦と和平を実現するには、一方的なロシア非難だけでは達成できないのです。「真の安全保障」はゼロサムゲームではありません。一方の側に犠牲を強いるのでは、持続的な安全と平和は実現できないのです。ウクライナとヨーロッパのこの地域の「持続的な安全保障」のためには、全ての当事者が相手の存在を相互に尊重して平和共存できる体制を作ることが必要なのです。歴史的には、今回の戦争は、米・NATOの軍事同盟の「東方拡大」が行き詰まり、歴史的な限界に突き当たっていることを証明したのです。

[4]

(1) 人々の目がウクライナでの戦争とロシア非難に向かっているこの機に乗じて、政府自民党や維新や右翼勢力が、一斉に、日本の軍拡や核保有や9条改憲に動き始めています。ウクライナ反戦と同時に、自国の軍国主義強化にも目を向ける必要があります。
 国会でも異常な事態が起こっています。ロシア非難の熱狂が政府や国会で急速に高まり、岸田内閣と与野党はロシア非難と制裁参加でほとんど全部が一致しました。一方的に米・NATO諸国に同調し、米・NATOを支持し、ロシアの制裁に突き進んでいます。
 政府は、憲法9条に基づく武器輸出三原則を公然と破り、ウクライナに軍用ヘルメットと防弾チョッキを送ろうとしています。紛争当事国には武器輸出を禁止するというルールを破棄したのです。銃とあわせれば武装兵士を生み、戦闘を更に激化させることは明らかです。ドイツは、最初はヘルメットでしたが、すぐにミサイルにエスカレートしました。武器輸出三原則の破棄に絶対反対です。

(2) 安倍元首相など自民党極右派、自民党の保守層の支持を取り込もうとする維新が、「今度は中国が台湾を攻撃する」「ロシアは北海道を攻める」など無責任極まりない言説をエスカレートさせています。「核兵器の共有に進むべき」「非核三原則は昭和の遺物」「9条があるから国が守れない」「国を守る気概と覚悟が必要だ」「軍事費を大幅に増やすべきだ」等々。
 広島・長崎で多くの被爆者、犠牲者を出した日本で、「核共有」や非核三原則の破棄を弄ぶこと自体許されないことです。
 彼らは憲法9条を亡きものにし、対中戦争への軍事力強化と軍事費大幅増大を進めようと狙っているのです。「9条があるからだめ」「強力な軍事力がないと平和は守れない」というのは全くすり替えです。繰り返しになりますが、確かにウクライナ問題では軍事侵攻したロシアに非があります。しかし根本的な原因は米とNATOがロシアを追いつめるために東方拡大を追求してきたこと、ロシアと紛争を抱えるゼレンスキー大統領がそれを利用しようとしたことにあります。相手を尊重し平和的共存を求めるのではなく、軍事力による威嚇を続け、戦争になるような政策を追求したことが戦争につながったのです。この教訓をしっかり踏まえることが必要です。
 むしろ、9条と憲法の平和主義を守り抜くことこそが、アジアでも、中国やロシアとの平和共存を打ち固めることができるのです。日本の場合、周辺国とりわけ中国を「力による現状変更勢力」、許しがたい敵、軍事力で威嚇するしかない相手と決めつけ、戦争をすることを前提に軍事力増強に突き進めば、同じように戦争の危機を作り出す危険が大きいのです。相手に一方的にレッテルを貼り、偏った報道で敵意を煽り、軍事的な対決政策を追求すれば、戦争になってもおかしくありません。それで苦しめられるのは誰か、ウクライナの人々が示しています。
 私たちは、政府自民党や維新による対中軍拡・対中戦争準備、9条改憲、「核共有」に反対します。武器輸出三原則の破棄、ロシア制裁に反対します。

2022年3月8日(3月9日加筆・訂正)
リブ・イン・ピース☆9+25