高市首相は戦争発言を撤回し、辞任せよ<シリーズ1>
政府・メディアの「レーダー照射」のデマと情報操作に騙されるな
事の本質は中国軍演習に自衛隊機が異常接近し妨害したことにある

(1)高市政権、対中戦争発言と反中・嫌中煽動で政権維持を図る
 高市首相の「台湾有事=存立危機事態」発言、対中国戦争威嚇発言を起点に日中関係が緊張し、急速に悪化している。そもそも事の発端は高市首相が11月7日に国会の場で一方的に発した「対中戦争宣言」である。習近平主席が高市首相との首脳会談をしたわずか1週間後のことだ。台湾問題は中国の国内問題である。それを突如軍事介入すると戦争挑発発言をしたのである。中国が激怒し、発言の撤回を要求したのは当然だ。ところが、高市首相は発言を撤回するどころか、中国側の「対抗措置」(首脳会談中止、対日渡航自粛、水産物輸入停止、民間交流中断など)を「威圧だ」「威嚇だ」と逆ギレし、世論を右へ煽ることで野党を巻き込み、政権の高支持率を演出している。
 高市首相は、戦争発言を直ちに撤回し、責任を取って辞任すべきである。

 そのような中で、小泉防衛相と政府・メディアは、新たな「レーダー照射事件」騒ぎをデッチ上げ、火に油を注いで、日中関係を回復不可能なまでに悪化させている。以下、「レーダー照射事件」の真相を明らかにしたい。日本政府が「ロックオンされた」「極めて危険な行為」「事前に通知もしない」等々の派手な情報発信と宣伝は、全く根拠がない。自分に不利な事実を隠し、一部の事実だけを恣意的に取り出して大げさに宣伝する手法が政府によって堂々と行われている。事実に基づかない、恣意的なプロパガンダに決して踊らされてはならない。

(2)小泉防衛相、政府・メディアの異常な興奮状態
 12月7日の午前2時4分という非常識な時間に、小泉防衛相は突然記者会見を招集し、一方的に次のようなことを述べた。
 「12月6日の午後4時32分頃から35分まで、及び18時37分ごろから19時8分までの2回にわたって、沖縄本島南東の公海上空で、中国海軍の空母『遼寧』から発艦したJ-15戦闘機が、当該機体に対する対領空侵犯措置を実施していた航空自衛隊のF-15戦闘機に対してレーダー照射を断続的に行う事案が発生しました。今回のレーダー照射は、航空機の安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為であります」と。

 小泉防衛相は12月9日に再び記者会見を行い、記者とのやり取りで次のように述べた。
 記者から中国側は訓練への自衛隊機の妨害があった、捜索レーダーを作動させるのは一般的な行為で正常な操作と言っているがと質問されて、「自衛隊機は安全な距離を保ちながら対領空侵犯措置を実施しており、妨害があったという中国側の主張は当たらない。戦闘機ではレーダーは捜索にも火器管制にも使われ照射された側は目的を明確には判別できない。今般のように断続的に照射することはなく、危険な行為だ」。
 また、記者から中国側は事前に訓練を通知したが日本側がそれを無視して妨害していると言っているとの指摘に対して、「事前に公表していたというが訓練海空域に対するノータム(NOTAM;航空情報)も航行警報も事前に通報されていない」と答えた。

 小泉防衛相の発言は、中国側を一方的に非難するもので、いかに中国が横暴なのか世論に働きかけ、国民にそう思い込ませようというものだった。大臣に続いて統合幕僚長も11日に記者会見をし、中国を非難した。全てのメディアがこの政府・防衛相の発言を鵜呑みにして、連日一面トップ・準トップ扱いで、扇情的な報道を行い、高市政権の好戦的言動を後押し続けている。調査報道で、その真偽を確かめることも、諫(いさ)めることもしない。戦前と変わらない大本営発表を垂れ流し続けている。「中国側が火器管制(照準)用レーダーを当ててきた」「ミサイル発射寸前の状態で極めて危険な行為だ」と中国を非難した。主要メディア、自民党だけでなく日本維新の会や国民民主党など右翼政党、評論家、自衛隊関係者らが大騒ぎして火器管制用レーダーを当ててきた、ロックオンしてきたと中国を非難した。高市応援団はSNSで大騒ぎをした。

(3)実際はどうだったのか〜なぜ防衛省は分析結果を明らかにしないのか
 これに対して中国側は、「捜索用レーダーしか使っていない」「その作動は各国共通の一般的行為で、飛行安全の通常行為」「日本側のF-15戦闘機の捜索用レーダーの電波も検知した」と発表した。また、「事前に飛行訓練を行なうと通告したのに、自衛隊機が訓練中の部隊に接近し、訓練の妨害を行った」と発表した。

 実際はどうであったのか。小泉防衛相の記者会見でも、防衛省のホームページに挙げられた発言記録でも小泉防衛相は「火器管制用レーダー」「ロックオン」等とは一言も言っていない。「長時間、断続的なレーダー照射をされたことが危険だ」と言っただけだ。12月11日に記者会見した内倉統合幕僚長の発言はもっと明確だ。記者から、「照射されたレーダー波の分析には時間がかかるようだが判明したのか?」と聞かれて、「発生から数日たってレーダー波の分析ができたかということだが、それについては私どもの能力を含めて手の内を明らかにするのでお話しできない」と答えたのだ。つまり、防衛省の公式見解には、中国側が火器管制用レーダーを当ててきたという主張はない。ロックオンしたと言った事実も公式に言っていない。

 ところが、メディア、評論家、自衛隊関係者が勝手に「ロックオン」「危険行為」を叫び続け、政府・防衛省も、それを止めることもなく、裏で煽って情報操作をし続け、無責任な反中・嫌中プロパガンダで国民を煽動し続けているのである。もしも中国側が主張するように捜索用レーダーの使用なら長時間で断続的な照射であろうと何の危険も無い。防衛省は事実も証明できないものを一方的に非難しているだけなのだ。

 戦闘機のレーダーは一つしかない。それを広範囲を捜索する捜索用レーダーと相手の航空機に照準を合わせるための火器管制用とに使い分けている。照準を合わせて固定された状態をロックオンという。統合幕僚長はなぜ分析結果を明らかにしないのか。相手のJ-15に関する技術情報が不完全でどちらの使用か断定をすることができないのか、あるいはF-15の受信能力が不完全、または探知距離などその能力を知られたくないからなのか。いずれにしても、自分の弱みを公表するのを避けたのだ。しかも、メディアが忖度して分析結果を公表すべきだと全く追及しない。それにもかかわらず根拠を示さずに中国を非難することなど、とんでもないことだ。

(4)「事前に連絡がない」は嘘。本質は、自衛隊機が中国軍訓練域に異常接近し挑発したこと
 事の本質は、「レーダー照射」問題にあるのではない。中国軍の軍事演習に対して自衛隊機が異常接近し、演習を妨害したことにある。
 小泉防衛相は、12月9日の記者会見で、「中国側からは事前に何の連絡も受けていない」と非難した。連絡もなしで沖縄の近くで発着艦訓練をするなら意図が不明であり、スクランブルをかけ監視するのが当然と言いたかったのだ。情報提供しない中国側の落ち度だ、中国が悪いという主張だ。
 しかしこの非難も、中国側の具体的な反論によってわずか1日で崩れた。中国側が飛行訓練開始前に南昌(艦番号101)から日本の駆逐艦てるづき(艦番号116)に無線で「これから発着艦訓練を行う」と通告した、「日本側はそれを確認した」と音声データを出して反論したからだ。
 この一点だけでも、日本側のデマと事実の隠蔽は明らかだ。中国側のこの反論に対して小泉防衛相は12月10日に再度記者会見を開いて、「音声データは通告しただけで訓練のエリアや日程を示しておらず、通告にあたるノータム(NOTAM)も航行情報も出していない」と反論した。「音声記録、あれは通知ではないんだ、通知とはノータムや航行情報を知らせて初めて成り立つのだ」と主張したのだ。一つ嘘をつくと他の嘘もつかなければならない。これを「嘘の上塗り」という。ところがメディアはこの上塗りの嘘を再び垂れ流した。

 しかし、小泉防衛相のはじめの主張は、中国から通告がないから何をするか分からず、警戒してスクランブルをかけても当然だというものだった。飛行訓練をするという音声連絡は中国側の行動の意図を明らかにしており通知の機能を充分満たしている。

 日本側は全く触れていないが、空母遼寧と打撃グループの行動について日本側は詳細に知っていた。遼寧は宮古島と沖縄島の間の宮古海峡から太平洋に出たが、既に尖閣(釣魚)諸島付近から遼寧打撃グループには日本の駆逐艦がべったり張り付いて監視活動を行っていた。どこにいるかなどリアルに知っていたのだ。日本側は遼寧が2日間で100回の発着艦を行ったと公表しているが、貼りついて行動を監視し、中国の空母の性能をスパイしていたから知っているのだ。イージス駆逐艦だけでなく、自衛隊の哨戒機も近くで中国空母と艦隊の出す電波などの分析を行っていたはずだ。スクランブルをかけたF-15戦闘機は、日本側が一方的に設定している防空識別圏の中に遼寧が入っていたのでいつ領空侵犯するか分からないから接近したと言い訳をしている。しかし、レーダー照射は1回目は50数キロ、2回目は100キロ以上離れたところで行われたと言われる。中国の空母は数十キロから100キロ程度まで他国の航空機が接近すれば警告を発すると言われるが、F-15が領空侵犯を防ぐために行動するなら領空まで200キロ以上はなれた遼寧艦隊の訓練地域に接近する必要はどこにもない。目的があるとすれば、中国軍の訓練を妨害し武装した戦闘機を接近させ威嚇することである。

(5)ノータム(航空情報)は日米軍事演習でもほとんど出さない
 付け加えれば、中国側は音声記録だけでなく訓練全体について実施地域や時間などについても別の連絡で通告したと言っている。日本側はこれに全く誠意ある反応をしていない。もし通告がなければ大声でそんな通告はなかったと反論したはずだが、その反論はない。情報を受け取っていながら、黙っていた可能性が大きい。

 また、小泉防衛相は「音声情報はノータム(航空情報)ではない」「ノータムでなければ通告したと言えない」とさも当たり前のようにいう。ノータムも出さない中国側は一般の航空機、船舶に危険を与えているという非難も含んでいる。しかし、その主張をするなら、まず同盟国である米国の空母打撃群と自衛隊の空母に対して同じ要求をすべきだ。米空母の活動頻度は中国空母どころでなく非常に高い。太平洋の色んなところで発着艦を日常的に繰り返している。その行動について大部分はノータムは提供されない。軍事行動は一般に隠匿の必要がある上、公海上などで航空路等から離れ、一般の航空機、船舶に危険を与えないと当該国が判断すればノータムは出されない。自衛隊の空母、米軍の空母がノータムを100%出すようになってから、中国に対して同じ主張するべきだろう。今回の場合にも実際には日本側は非難するふりをしながら、中国に対してノータムを出すようには要求していない。日常的な軍事訓練で、民間に影響しないなら出さなくてもいいことを分かっているのだ。

(6)高市政権の狙いは、対中戦争=対中超軍拡で軍国主義を加速すること
 高市首相は、なぜ未だに自らの戦争発言を撤回せず、開き直り続け、意図的に反中・嫌中感情を煽り立てているのか? それは対米従属の軍国主義復活に利用できると考えているからだ。高市政権は軍事費GDP比2%を前倒しし、さらに3.5%にまで増大させ、そのために医療・社会保障を切り捨て人民負担を増大させようとしている。反中・嫌中イデオロギーで国民を洗脳すれば、簡単に騙せると考えているのだ。
 @中国側が通常の手順で通告し、A普通の捜索レーダーで周辺の状況を調べ、B訓練の妨害を行なおうとした自衛隊のF-15に離れることを要求した。つまり中国軍演習に異常接近し演習を妨害した。――これが真実である。それを高市政権は、@沖縄近海に乗り込んできた中国空母から発進した戦闘機が、日本側に訓練の通告もせず、A領空侵犯に備えるF-15戦闘機に挑発的に火器管制用レーダーでロックオンする極めて危険な行動をとった、と全く別のストーリーを作り上げたのだ。
 高市政権のこの種のプロパガンダと情報操作を的確に批判しなければ、彼らが狙う軍拡と対中戦争への道をさらにエスカレートさせてしまう。一つ一つの事実を抑えて、プロパガンダを暴き、ネオファシズムの高市政権の危険性、謀略性を批判していこう。

2025年12月16日
リブ・イン・ピース☆9+25