「北朝鮮脅威論」はウソ
戦争をしたがる安倍政権にNOを!
  

「国難」を引き寄せているのは安倍首相
 トランプ米大統領は10月7日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)への対応について、歴代米政権が長年対話したが「うまくいかなかった」とした上で「でも、一つのことだけがうまくいく!」とツイッターに書き込みました。明らかに対北朝鮮での戦争のほのめかしです。マティス米国防長官も米陸軍関係の会合で北朝鮮情勢に関し、外交や経済圧力による解決に失敗した場合は「大統領が軍事的選択肢を必要とした場合に確実に実行できるよう準備を整えておかなくてはならない」と述べました。どちらも、北朝鮮を制裁によって降参させ、核・ミサイルの放棄を認めさせられない場合、軍事行動に出るつもりであることを暗に示しています。
 安倍首相は8月からトランプ大統領に対して「100%共にある」との発言を繰り返しており、米が北朝鮮攻撃に出るときには、それを支持して参戦するつもりであると考えざるをえません。現に安倍首相はテレビ番組などで「米が北朝鮮に攻撃しようとしたらどうするのか」との問いに、反対するとは言っていません。朝鮮半島で米が本当に戦争を起こす可能性が強まっています。安倍首相がそれを呼び寄せています。「国難選挙」といっていますが、日本を戦争に連れていく国難は安倍首相自身です。 

制裁をやめ、直ちに緊張緩和策をとるべき
 危機が新局面に入ったと考えるべきです。北朝鮮に制裁強化で一方的に核・ミサイル開発放棄を要求するやり方は、すでに行き詰まっています。トランプ大統領の発言がそれを証明しています。しかし、一旦、朝鮮半島で戦端が開かれるととんでもない数の犠牲者が出ます。韓国や日本で100万人から200万人、北朝鮮ではそれを遥かに上回る数になります。日本と世界の反戦平和運動が、この危機的状況に全力で立ち向かわねばなりません。
(1) 直ちに米朝双方が対決のエスカレーションを中止し、即時無条件の対話に入り、政治的・軍事的・経済的緊張を緩和する措置をとることが必要です。
――対話のための条件づくり、信頼醸成措置が不可欠です。対話の間、双方からの挑発的言動を中止すべきです。無責任なトランプ大統領の相手元首や相手国家への侮辱や脅迫は言うまでもありません。同時に、北朝鮮の側も挑発をやめるべきです。強いられたものとはいえ、グアム周辺へのミサイル発射警告や太平洋上での水爆実験は許されません。
――対話のために、軍事行動を中止することを要求します。最も危険なのは、北朝鮮領土間際での米軍、米韓日の側の軍事行動です。米韓合同軍事演習の中止、一切の挑発的軍事行動の中止を要求します。北朝鮮の側も、核実験とミサイル実験の凍結で応じる必要があ
ります。
――国連安保理の対北朝鮮経済制裁に反対します。トランプ大統領と安倍首相は北朝鮮経済を崩壊させて、力づくで屈服させ武装解除しようとしています。かつてのキューバ経済封鎖、湾岸戦争後あるいはイラク開戦前段階の経済制裁と同様、経済封鎖は事実上の戦争行為です。やってはなりません。
(2) 核・ミサイル危機の根本問題は米朝間問題です。金正恩体制・北朝鮮国家の安全を保障すること、朝鮮戦争の休戦状態に終止符を打つこと、米朝間の国交正常化、米朝平和条約の締結に進み、休戦協定に違反する在韓米軍の撤退と基地撤去を実現することです。核・ミサイル問題の解決は、この包括的な道筋の中でしか実現できません。

「北朝鮮脅威論」のウソを徹底して暴こう
 トランプ大統領と米軍の軍事行動の危険が高まっている時に、安倍政権と日本のメディアは、それを助長する極めて危険な役割を果たしています。
 先の国連総会などでトランプ政権は完全に孤立していました。フランスのマクロン大統領、ドイツのメルケル首相などEUの首脳が、トランプ大統領の戦争挑発を非難しました。文在寅政権は、トランプ大統領の圧力でTHAAD配備を余儀なくされたにもかかわらず、対北朝鮮対話への道を残して、北朝鮮への人道援助を継続しました。
 世界中でただ日本の安倍政権だけが、米内部でさえ対話が検討されている時に、対話の動きに頭から水をかけ、妨害し、対北朝鮮軍拡と経済封鎖にのめり込んでいるのです。自らの国連演説でトランプの好戦演説を称賛し、対話を否定し、圧力一辺倒の方針を打ち出しました。「必要なのは、対話ではない。圧力なのです」と。
 私たちは「北朝鮮脅威」論のウソを徹底的に暴く必要があると考えます。
 まず第1に、一見して、北朝鮮の方がミサイルと核保有に向かって一方的にエスカレートしているかに見えますが、実際には米軍事力、米韓日の軍事力が圧倒的優位であるということです。
 第2に、北朝鮮が一貫して国際条約・国際合意を破ってきたというのはデマ宣伝であるということです。むしろ破ってきたのは米国の方です。
 第3に、本当に朝鮮半島で戦争が勃発すれば、どのような悲惨な現実が生じるかがほとんど報じられていないことです。

北朝鮮の核・ミサイル実験の原因は米の軍事的脅威
 安倍首相は「北朝鮮脅威」論を一方的に垂れ流しています。しかし、問題は米朝対決の原因は何なのか、北朝鮮はなぜミサイル実験、核実験を続けるのかです。この原因を考えさせないことが、安倍首相とメディアの狙いです。このことを抜きにして、根強い民族差別・民族排外主義の報道を行い、一方的に悪と決めつけているのです。
――まず最初に、強大な核軍事力を保持しているのはトランプの米国だということです。北朝鮮が保有を目指している核・ミサイル戦力はごくわずかで、米の攻撃から守る防衛的なものです。そして北朝鮮の側からの先制攻撃は基本的にはあり得ないということです。李外相は先の国連で、核・ミサイル開発を「正々堂々たる自衛的な措置だ」、最新の核実験は「核武力完成の完結段階に入った」とし、「最終目標は米国との力の均衡を取ることだ」と述べました。北朝鮮は、なぜ必死に核・ICBM保有を追求するのか。それは米日韓を核で攻撃するためではありません。イラクやリビアやシリアの例を見て、核兵器を持たなければ米国から攻撃され国家を壊滅させられると教訓を導き出しているからです。北朝鮮の核・ミサイル開発・保有の最大の責任は、歴代米大統領に率いられた米国の側にあります。米国の軍事外交政策の転換なしには、彼らは自衛のための核戦力を絶対に手放さないでしょう。
――次に、脅威を与えているのは米日韓の方だということです。北朝鮮と米韓、それに日本を加えた軍事力のバランスは圧倒的に米日韓に有利です。特に空軍力、海軍力では圧倒的な差があります。陸海空とも北朝鮮の側は旧式装備が大半です。だから北朝鮮は限られた資源を核ミサイル(核とミサイル開発)に集中して、自国の防衛をそれに賭けているのです。加えて、中距離ミサイル、多数の短距離ミサイル、ロケット弾、長距離砲で備えを固め、全力で報復力を整備しているのです。あくまでも自衛力しかなく、「南進」するような軍事力は持っていません。
――最後に、政府・メディアが全く語らないのが、米国と北朝鮮の圧倒的経済格差です。北朝鮮の軍事費を過大に見積もる米政府の報告書「2016世界の軍事費武器移転報告」でさえ、北朝鮮のGDPは241億ドル(2014)、軍事費は37.4億ドルとしています。対する米のGDPは16兆ドル、国防総省予算は6230億ドルです。信じがたい圧倒的格差があります。GDPで664倍、軍事費で166倍。こんな圧倒的格差で、通常戦力での抑止は不可能です。だから最小限の核とICBMで交渉に持ち込もうとしているのです。

「北朝鮮は交渉に応じるつもりなんてなかった」(安倍首相)のウソ
 安倍首相は、核開発を巡る米朝交渉、六カ国協議を破綻させたのは北朝鮮だと主張しますが、実際には米国です。北朝鮮の側ではありません。
――朝鮮半島危機の発端は、朝鮮戦争への米軍の介入に始まります。そもそも歴史的にも常に米韓の側が北朝鮮を威嚇し続けてきたことを忘れてはなりません。1953年7月に締結された朝鮮戦争の休戦協定は、3か月以内にあらゆる外国軍の撤退を行う、全ては平和的交渉によって解決する、朝鮮半島に新しい兵器を持ち込まないと決めました。しかし、米国は休戦協定に違反して朝鮮半島から撤退せず、逆に米韓軍事同盟を結んで朝鮮半島に居座りました。また、核兵器を韓国に運び込み、自ら休戦協定の13条dには従わないと宣言しました。休戦協定を破ることで、強大な軍事力を韓国に置き、今なお北朝鮮に戦争の脅威を与え続けているのです。在韓米軍の撤退なしには、朝鮮半島の平和と安定はあり得ません。
――米は1993年に、北朝鮮が黒鉛炉で核武装を計画しているとして、軍事攻撃を仕掛ける寸前まで行きました。急転直下の交渉で、北朝鮮は黒鉛炉を止め、その代わりに米日韓が軽水炉を提供し、完成までは燃料支援するという「米朝枠組み合意」で合意しました。しかし、その合意を破ったのは、「ブッシュドクトリン」でした。ブッシュ大統領(当時)は、北朝鮮・イラン・イラクを「ならず者国家」「悪の枢軸」と決め付け、軽水炉を供与せず、実際イラクへの侵略戦争に踏み切り、米朝枠組み協議は破綻しました。破ったのは北朝鮮ではありません。
――その後、2003年から北朝鮮の「総ての核兵器計画の放棄」をめざした「6カ国協議」が始まります。05年には共同声明が採択されましたが、ブッシュ政権からの一方的な金融制裁発動で交渉は頓挫しました。そしてブッシュ政権の終焉とともに6カ国協議も終わりました。ここでも北朝鮮ではありません。
――2009年1月にオバマ政権が誕生してから、北朝鮮の方から何度か米朝協議の提案が行われました。しかし、オバマ大統領(当時)は対北朝鮮政策の軸を経済制裁として北朝鮮を突き放し、圧力をかけ続けました。この政策判断の背景にあったのは、早晩北朝鮮政権が瓦解するという情勢把握でした。そして、北朝鮮を恐怖に陥れたのは、2015年に米韓が金正恩殺害を含む先制攻撃戦略「OPLAN2015」を計画したことでした。これが「戦略的忍耐」戦略です。オバマ政権は何もしなかったのではありません。経済封鎖による北朝鮮の崩壊、元首殺害の侵略計画を想定して交渉に応じなかったのです。
 そして2015年にこのOPLAN2015に基づく米韓合同軍事演習を開始します。その際、北朝鮮側が、軍事演習の中止と核実験の中止を提案、米朝平和条約の協議を訴えましたが、オバマ政権はこれを拒否したのです。北朝鮮が、自己防衛のためには核=ICBM保有しかないと決断するのは、それが直接のきっかけでした。以後、ミサイル実験、核実験が急増したのです。
 以上の米朝の軍事外交史の概略を見ただけでも、対話破棄、国際合意破棄の常習犯が米国の側にあったのは間違いありません。北朝鮮の側の怒りは当然です。米国こそ朝鮮半島危機の最大の根源なのです。米の侵略的冒険主義、軍事優位の追求、米韓・米日の軍事同盟。武器輸出と軍産複合体へのくれてやりを、元から絶たないと、朝鮮半島に平和は来ません。

朝鮮半島で戦争を起こしたら壊滅的被害が出る
 安倍首相には、朝鮮半島で戦争が起これば、どれほど壊滅的な被害を出すか、戦争の悲惨さを想像する意志も能力もありません。過去の侵略戦争と植民地支配を美化するところにも表れています。安倍首相は、トランプ大統領が戦争を仕掛けたらどうするのかと聞かれて、答えませんでした。実際、「100%、米とともにある」と繰り返しており、米の侵略戦争に協力する気満々です。
 米国はかつて1993年に北朝鮮の核施設への限定攻撃を計画しました。その時100万人以上の韓国人、10万人以上のアメリカ人が死亡すると、当時のクリントン政権内部で算定されました。在韓米国人の帰国を計画し、米側が先制攻撃を行う寸前でした。この攻撃は当時の韓国の金泳三大統領が激怒し、米の軍事攻撃を身体を張って中止させました。危機一髪でした。2003年にも再度攻撃が計画されましたが盧武鉉大統領が強硬に反対しました。言うまでもなく、民主化以降の韓国の為政者は、朝鮮半島で戦争が勃発すれば膨大な犠牲者が生まれ、廃墟となることを承知しています。1950年の朝鮮戦争では、数百万人の犠牲者が出ました。
 当時と異なり、米韓の軍事力はさらに強力になっています。戦争になれば日本も加担する可能性が大きい。北朝鮮の反撃のない、韓国や日本に犠牲者を出さない攻撃などあり得ません。ソウルを含む韓国北部は大量の長距離砲や各種ロケット砲の砲撃を避けることはできません。さらに韓国、日本は数百発のミサイルの反撃を受けます。中距離弾道弾もあります。韓国のTHAADミサイル、日本のイージス艦、PAC3ミサイルなど、ミサイル迎撃システムは万全だと言いますが、迎撃できるのはごく一部に過ぎません。

戦争は絶対に起こしてはならない
 今回、さらに危険なのは、核ミサイルの応酬が100%ないとは言えなくなったことです。いずれにしても、かつての朝鮮戦争を上回る可能性があります。被害は1993年や2003年に想定されたものとは比較にならないほど深刻なものになるでしょう。
 メディアでは、朝から晩まで、怪しげな軍事評論家やコメンテーター、専門家なる連中が、トランプの「全ての選択肢」「軍事オプション」をめぐり、無責任なおしゃべりに興じています。人ごとではないのです。
 私たちは、戦争をしたがる政府はいりません。安倍政権にNOを突きつけましょう。

2017年10月9日
リブ・イン・ピース☆9+25