米・仏・NATOはニジェールに軍事介入するな
ニジェールから軍を撤退させ、植民地支配から手を引け

 7月26日、西アフリカ・ニジェールで反仏・反米・反植民地主義の軍事クーデターが起きました。親米仏のモハメッド・バズム元大統領は解任・拘束され、大統領警護隊長のアブドゥラハマヌ・チアニ将軍が国家元首に就任し、祖国防衛のための国民評議会CNSPが新政権を樹立しました。
 新政権の要求の詳細はまだ不明です。しかし、発足直後から仏軍に駐留を認める軍事協定を破棄し、1週間に以内に駐留仏軍の国外退去を要求するなど、反仏・反米・反NATO・反植民地主義が中心にあることは明らかです。その根底にはニジェールの人々に対して仏・米等欧米帝国主義が植民地支配と資源略奪を好き勝手に行い、低開発の状態を押しつけてきたことへの怒りがああります。日本のメディアは、この政変の本質に触れずに、軍の人事をめぐる対立とか単なる軍事クーデターのように報じていますが、全く間違っています。
 ニジェールは1世紀にわたって仏の下で植民地支配されてきました。政治的に独立した後も、植民地的な支配・収奪・搾取と抑圧は本質的に変わりませんでした。ニジェールは鉱物資源に富んだ国、本来豊かな国なのです。ウランの生産量では世界7位です。金も石油も産出します。フランスの原子力発電の燃料の15%、欧州の核燃料の20%はニジェール産です。にも係わらずニジェールでは人口のわずか2割しか電気を使える人はいません。豊かな資源を持つのに最貧国にとどめられてきたのは、資源と労働力を略奪する米欧帝国主義の植民地主義の結果です。旧宗主国仏は旧植民地の諸国に共通通貨CFAフランを押しつけ、通過、為替まで支配しています。準備金の大半を仏に供託させています。さまざまな手段で現在も経済的政治的抑圧下に置いているのです。こんな状態で自立して発展することなど望めません。こんな体制を維持するために米仏等はニジェールに軍事基地と軍隊を置いています。独立後も数十年にわたって抑圧し、発展の自由を奪い、好きなように収奪の限りを尽くしてきた仏と帝国主義に対する人々の怒りと不満が軍事クーデターの形で爆発したのです。

ECOWASを隠れ蓑に米・仏・NATOは軍事介入を狙っている
 新政府は仏軍に国外退去を求めましたが、仏軍は退去に応じずニジェール国内に居座っています。一部では仏軍と警察部隊の衝突まで報じられています。マクロン大統領は驚くほど露骨です。「フランスとその利益に対するいかなる攻撃も容認しない」と声明を出しました。ニジェールの富は俺のものだ、手を出すなというのです。何というニジェールの人たちを見下した見方でしょうか。
 仏と欧米帝国主義はニジェール介入のために西アフリカ諸国経済共同体ECOWASを前に押し出しています。ECOWASは軍事クーデターを非難し、6日までに政権を退くか、バズニ前大統領を復職させなければ軍事介入に直面するぞと脅しました。また、直ちにニジェールに対する制裁に踏み切り、電力供給を遮断しました。EUと仏、米も直ちに経済援助の打ち切りと制裁を決めました。何があってもニジェールに対する植民地支配を続けるつもりです。これに対してニジェールは仏へのウラン輸出を取り消し、また空域を閉鎖し航空機の上空通過を禁止しました。
 ECOWASの介入通告期限の7日は過ぎましたが、まだ介入は始まっていません。しかしいつ始まってもおかしくない状態にあります。ECOWASの中心であるナイジェリアは8万の陸軍を持つ地域の大国です。米仏はECOWASを隠れ蓑に軍事力を投入して一挙にクーデター政権をつぶしてしまうつもりなのです。ニジェールに仏は1500人の部隊を配備し、米も2つの基地に1100人を配備しています。さらに300人のイタリア兵もいます。仏米はニジェールをアフリカ全体に出撃する拠点、無人偵察・攻撃機の拠点にしてきたのです。ニジェールの兵力は1万人程度に過ぎません。そこに仏米伊だけで2900人もの軍事力を展開しているのです。
 しかし、突然の軍事介入宣言はかえってECOWASの内部の分裂を大きくしました。加盟国のうちマリ・ブリキナファソは反対し、もし軍事介入すれば宣戦布告とみなし参戦すると共同宣言しました。両国はニジェール同様に仏の植民地支配で収奪されてきましたが、最近軍事クーデターで仏米とつながる政権を転覆し仏軍を追い出したばかりです。ニジェールの人々に深い共感を持っているのです。ナイジェリアの上院議会は軍事介入に反対を決めました。ECOWASの中心であるナイジェリアでも軍事介入に対する反発が内部から強まっているのです。アルジェリア、ギニアも軍事介入には反対し、他の国も参加をためらっています。

軍事介入反対の声を上げよう
 ニジェールの人々は新政権支持の声を広げています。政変直後から3万人が集会を開き政権を支持しました。フランス大使館にも数千人が抗議に集まりました。反仏・反米・反植民地の主張は人々の共感を呼び起こし、周辺国と帝国主義の介入の危険は警戒と愛国と結束を強めています。もちろん軍事クーデターでできた政権だけでは不安定で弱く、不十分です。軍事的政治的介入を防ぐためにも政権が植民地脱却をめざす人民革命と結びついて進む必要があります。
 最重要の課題は、米・仏・NATO・ECOWASの軍事介入を阻止することです。この軍事介入はニジェールを再び植民地主義的支配に引き戻すだけではありません。フランスを追い出したマリ、ブルキナファソを巻き込んだ西アフリカ全体を巻き込む戦争を引き起こす可能性があるのです。極めて危険な軍事介入、冒険主義と植民地主義押しつけに反対し、民族主権の確立を支持していきましょう。

2023年8月10日
リブ・イン・ピース☆9+25