戦争する国づくりの一環 共謀罪法を絶対に許さない 7月11日共謀罪法が施行された。この法律は、犯罪行為を実行しなくても、話しあった(共謀)だけで罪になるという、既遂・法益侵害を基本原則とする日本の法体系を根本的に覆す悪法である。過去三度にわたって廃案になった法律を、安倍政権は議会内の数の力だけを背景に、委員会採決さえ省略する異常なやり方で反対を封じ込め強行採決したのだ。批判の高まりを押さえるため、成立後わずか20日後の施行強行である。 「共謀罪」とは警察による絶えざる監視によって市民の自由、権利を制限する法律である。政府批判の世論と運動を未然に封じ込めるためのものだ。話をするだけで罪に問うためには、話したことを立証するために電話・メールなどの盗聴、盗撮、尾行、自白など市民に対する監視網を張り巡らし、日常的に監視することが不可欠だ。特定秘密保護法、戦争法、改定通信傍受法、共謀罪法と続く一連の法は安倍政権が進める「戦争する国作り」の一環だ。 われわれは共謀罪法を絶対許さない。憲法に違反し、市民の自由と権利に根本から反する共謀罪法は廃止しかない。 官邸と警察権力が結びついた危険 権力監視が重要 施行を前に警察庁は共謀罪の「適正運用」を全国の警察に指示したが、警察の「不適正な運用」「濫用」の懸念がすぐさま問題になるところにこの法律の危険性がある。そもそも運用することそのものが危険であり、適正などありえない。沖縄で不当逮捕され半年近い長期不当拘留をされた山城博治さんの取り調べでは、異常なほど「共謀した」者がいたことを調べようとしていた。すでに先行実施されているといえる。施行後は、犯罪の実行者が誰々と相談したと言うだけで、話し相手は罪になる。そればかりか疑いをかけられただけで捜査の対象になる。 政治権力と警察権力が結びつく恐ろしさを示しているのが、現に目の前にある安倍官邸だ。首相とその親友がかかわる加計学園問題で、告発する前川元文科次官を貶めるために官邸が警察監視で「出会い系バー」を調べだし読売新聞に書き立てさせる、官房長官を鋭く追及する東京新聞の記者を黙らせるために警察に身辺調査を命じる、安倍賛美を続ける自称ジャーナリスト山口敬之が起こした女性暴行容疑の逮捕状を握りつぶし不起訴にする等々、安倍政権は警察と結びついて文字通りやりたい放題をしている。 前川氏の情報リークや山口の不起訴処分に関わったのが中村格警察庁刑事局組織犯罪対策部長・元官房長官秘書官であったとされる。この中村氏こそ、役職通り、共謀罪摘発の指揮を執る人物だ。警察官僚が、内閣府、官房にまで入り込み、文字通り官邸と警察が一体化し、情報収集からリークまでを集中管理し、共謀罪摘発の指揮にまで及ぶという、自作自演、犯罪のでっち上げから逮捕までの一連の流れを牛耳るシステムが作られている。危険きわまりない。市民は権力監視を強めなければならない。 東京都議選で示された民意は「安倍政権NO!」だ だが「一強支配」のもとで暴走する安倍政権への国民の批判と反発は、7月2日の東京都議選での自民党の歴史的惨敗という形で示された。国民を愚弄し国会の数の力だけで悪法を強行成立させ、自らの疑惑にフタをする安倍政権に審判が下されたのだ。自民党は議席数を改選前の半分以下の23議席に激減させた。敗因は安倍首相自身に関わる数々の疑惑と閣僚・安倍チルドレンによる失言、暴言、法律違反、虚偽答弁等々の不祥事、すなわち「安倍問題」に他ならない。都知事選の最終日応援演説で安倍首相は「安倍やめろ」コールに遭遇して「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と暴言を吐き、厳しい批判にさらされた。 共謀罪法を巡る金田法相のデタラメ答弁と強行採決、「特区」を利用して「お友達」への異例の利益供与を図る加計学園問題、安倍夫妻が深く関わる森友学園問題、防衛省・自衛隊を私物化しての公職選挙法違反ほか数え切れない稲田防衛相の失態と安倍首相の任命責任、下村博文幹事長代行の違法献金問題等々。 安倍首相は自らの責任を棚上げして「自民党の慢心」「緩み」などと他人事のように言っているが、まさに問題は安倍首相による権力私物化、国家資産の私物化、お友達への便宜・利益供与である。それを真正面から認めようとしない安倍首相、菅官房長官への不信と怒りが噴出している。 7月10日、前文科省事務次官前川喜平氏の閉会中参考人質疑が行われ、首相・官邸の深い関与を証言した。だが張本人の安倍首相や疑惑のキーパーソンとされる首相補佐官和泉洋人氏は出席していない。首相は国会閉会後「説明責任をきちんと果たしていきたい」と語ったが、実際は逃げ回っている。 最新の世論調査では、「安倍広報紙」とも揶揄される読売新聞でさえ、安倍政権支持は36%と急落し、不支持は52%に跳ね上がった。朝日新聞の調査では「安倍首相は信用できない」が61%に上り、55%が疑惑解明のため早期の臨時国会開催を求めている。安倍首相は真剣に答えるべきだ。 共謀罪法は違憲で違法 世論と運動の力で発動を許さず廃止へ追い込もう 潮目は明らかに変わっている。安倍政権の「共謀罪法」のデタラメさ、あいまいさを批判し違憲違法を暴露し続けよう。 何が罪で何が罪でないかを金田法相は明確に答弁できなかった。一般市民は罪の対象となるのか否か、環境保護団体や人権保護団体は対象になるのかどうか、「人権団体を標榜する犯罪組織」とは一体何か、何をもって準備行為とするのか、団体の「周辺者」とは誰か等々何一つ明確になっていない。これらを警察や公安が恣意的に決めることなど許されない。共謀罪法はまともな法律の体をなしていない。 そもそも共謀罪法は、徹頭徹尾憲法違反である。生命、自由及び幸福追求権(プライバシー権など 13条)、内心の自由、思想・良心の自由(19条)、集会、結社の自由、言論や表現の自由、検閲の禁止、通信の秘密 (21条)、勤労者の団結権、団体行動権(28条)、法益侵害の具体的事実と罪刑法定主義(31条)等々日本国憲法の権利規定の諸条項にことごとく反する。既遂を原則とする日本の刑法体系と根本的に矛盾する。 重要なことは、ひるまず運動を絶対自粛しないことだ。 文科省からの内部告発やメディア、雑誌等のリークやスクープは、党内と政府・官僚を恐怖支配する安倍一強支配が瓦解しつつあることを示している。自民党内からも批判があがる。ほころびが次々と出始めている。 だが自民党と与党内、官僚、メディア等々の反安倍の動きを拡大できるかどうかは、取り巻く世論と運動の力が決定的である。警察と最も結びついた安倍政権を監視し徹底的に追及しよう。警察当局への国民的監視を強め、「共謀罪」を発動すれば市民から徹底的な批判と追及が起こることを知らしめ、封じ込めよう。実際上、法として発動できなくする、それを通じて廃止に追い込もう。廃止まで闘おう。 2017年7月11日 |
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