菅首相の沖縄訪問に反対する 菅首相は、17日、18日と沖縄県を訪問し、仲井真知事と会談しようとしています。菅首相の意図は明らかです。菅首相は13日、「県民に謝るべき所は謝る。同時に、普天間の危険除去という点では、辺野古への移転で少なくとも今より危険性が少なくなることを説明したい」と強調し、仲井真知事に辺野古移設を求める意向を表明しました。 ※菅首相、17・18日に沖縄訪問 官房副長官と知事合意(朝日新聞) これは、知事選に現れた沖縄県民の民意を踏みにじる行為です。このような行為自体が沖縄差別です。基地負担について「謝り」ながらさらなる基地負担を押しつけるとはどういうことでしょうか。6月23日慰霊の日に批判を浴びた「基地負担に謝罪と感謝」発言と全く同じです。沖縄では、菅首相の沖縄訪問に対して激しい反発が起こり連日の集会や座り込みが行われています。「本土」の私たちこそ、基地を押しつけるための沖縄訪問反対の声を大きく挙げなければなりません。 ※首相来県中止求める 県内移設反対県民会議 「向かうべきは米国」(沖縄タイムス) ※「基地受け入れ説得許さない」菅総理の来県に抗議(琉球朝日放送 動画) 民主党政権は沖縄知事選で不戦敗 「基地容認」は争点にならなかった 今回の沖縄知事選は、「県外移設」と「国外移設」が争われた初めての選挙でした。伊波前宜野湾市長は、宜野湾市での普天間基地撤去のための厳しい取り組みを背景とし、それを県レベルでの闘いへと発展させるために市長を辞任して知事選に挑みました。伊波氏は僅差で敗れましたが、「県内移設反対」「国外移設」「日米安保見直し」を真正面から掲げて仲井真候補と互角に闘いました。これに対して仲井真氏は、「県外移設」「日米合意見直し」で応じました。沖縄での粘り強い闘いとその高揚を背景に、伊波氏が立候補し追い詰めたことが、「県外移設」を仲井真氏の政治公約とさせたのです。 民主党は知事選に対して、「県内移設容認」候補を擁立することは出来ず、自主投票で臨まざるを得ませんでした。これは不戦敗であり、沖縄の世論が「県内移設反対」で固まっていることを示しています。民主党自身が「基地容認」の入り込む余地がないことを認めた結果です。民主党政権との間ではすでに決着は着いていたのです。 ※記者の目:沖縄知事選が示した意思(毎日新聞) 今年1月の名護市長選での基地反対派稲嶺市長の誕生、4月25日の9万人の県民大会、5月16日の普天間基地「人間の鎖」包囲行動、9月の名護市議選での基地移設反対派の圧勝という、一連の政治過程で現れた沖縄の世論は、今回の知事選でもはっきりと示されたと言うべきです。 仙谷官房長官の「甘受」発言は、菅政権の沖縄差別と強権政策の最たるもの 仙谷官房長官は13日の記者会見であろうことか「県民には誠に申し訳ないが、(辺野古移設を)甘受していただきたい」という信じがたい発言を行いました。 この発言こそ、政府が決定したものは有無を言わずに受け入れろという恫喝であり、国家権力を使えばなんでもできるという傲慢で強権的な菅政権の姿勢を端的に表しています。決して許すことはできません。沖縄では「逆らえば、いつでも踏みつけてやるぞという、脅しのようだ」「沖縄差別そのもの」など怒りの声が上がっています。 14日の会見で、仙谷氏は発言を撤回することを明らかにしましたが、他方では「沖縄に海兵隊の基地が存在する意義は大きい。一定の基地負担をお願いせざるを得ないと率直に思う」とも語っています。「甘受」という言葉使いは撤回しましたが、沖縄押しつけの姿勢は全く変わっていません。 ※仙谷氏「甘受」発言撤回 在沖基地の意義は強調(沖縄タイムス) ※「沖縄差別そのもの」仙谷発言 にじむ政府の本音 名護や宜野湾、強い怒り(沖縄タイムス) たしかに、仲井真知事は産業・土地利権とのつながりの強い人物であり、選挙戦でも「県内移設反対」を明言しませんでした。しかしもちろん、「本土」の私たちがすべきことは、仲井真知事の政治姿勢を云々するのではなく、菅首相と政権の側が沖縄への基地押しつけに動くことを厳しく批判することです。 仲井真知事は現時点では、「(5月28日発表、辺野古移設を明記した)共同声明見直し」「県外移設」を主張し、仙谷氏の発言に対しても強い不快感を示しています。政府が、2011年度で期限が切れる沖縄振興計画の立案をテコに基地移設を迫るなどもっての他です。知事選は、経済振興策で懐柔するという従来の手法が破綻したことを示しています。知事の政治公約は断固として守られなければなりません。 菅首相は、「日米共同声明」撤回、普天間基地撤去で米政府との交渉を! 仲井真知事の公約である「県外移設」は「本土分散移転」を含んでいます。それは沖縄を差別し基地を押しつけ続けて無関心である「本土」――政府だけでなく市民も含めて――に対する沖縄の不信感を反映したものでした。私たちは知事選の結果を真剣に受けとめ、改めて政府に対して、「世界一危険な」普天間基地の撤去を強く求めます。 日本政府は、尖閣衝突問題や延坪島砲撃問題等を使って反中国、反北朝鮮キャンペーンを行い、日米安保や米軍基地の必要を煽っています。しかし、尖閣諸島で挑発行為を行ったのは日本政府と海上保安庁巡視艇の側であったこと、延坪島への北朝鮮の砲撃を誘発したのが、経済制裁と軍事挑発を繰り返した米韓日の側であったことなど、事実は、日米安保と在日米軍基地が東アジアの平和と安定に役立っているのではなく、逆に戦争の脅威を煽っているということなのです。 ※対北朝鮮戦争挑発──危険な米韓共同軍事演習(11/28〜12/1)、日米共同軍事演習(12/3〜10)をやめよ!(リブ・イン・ピース☆9+25) しかもこの間の日米軍事演習によって、激しい騒音や空港の閉鎖、実弾演習と軍用車両の道路占拠など沖縄の県民生活に深刻な被害をもたらしました。その意味からも沖縄の米軍基地は市民を守るのではなく危害を加えています。 ※日米合同軍事演習「キーン・ソード」の危険(2)沖縄での深刻な被害(リブインピースブログ) ※日米演習 試験、授業が中断 嘉手納中、異例の陳情(琉球新報) 日本政府は、過去の侵略戦争や植民地支配の反省を全く無視した対中国強硬策への方針転換や安易な領土要求、危険な軍事演習による戦争挑発をやめるべきです。 菅政権が基地問題の解決のために向かうべきは、沖縄の仲井真知事ではなく、米国のオバマ大統領であるはずです。沖縄の民意を尊重し、その実現に向け、米政府と「日米共同声明」撤回のための交渉に入るべきです。普天間基地の移設ではなく、即時無条件撤去へ進むべきです。 2010年12月16日 |