特定秘密保護法衆院強行可決に抗議する
参院で廃案に!
  

  11月26日夜、衆議院本会議において、特定秘密保護法案が自民・公明・みんなの賛成で強行可決された。与党は午前、反対する市民が国会を取り巻き、会議場ではヤジと怒号が飛び交う中、国家安全保障特別委員会で強行採決し、そのまま本会議採決へと持ち込んだ。本会議の審議はわずか2時間である。
 特別委員会が11月25日に福島県で開催した公聴会では、特に原発事故でSPEEDIなどの情報が政府によって隠蔽されたことなどの不安と怒りから意見陳述者7人全員が反対や慎重意見を表明し、「重要なことは秘密ではなく、情報公開だ」と口をそろえて訴えた。世論調査でも8割が反対と慎重審議を求めている。与党はそれらを全く無視し、数の暴力によって採決へ押し切った。
 私たちは議会制民主主義の大義さえ踏みにじる前代未聞の暴挙に強く抗議する。この強行可決のやり方自体が、国民を敵視し政府と官僚が国家秘密を独占しようとするこの法案の危険性をまざまざと示している。

 法案が10月25日に提出されてからわずか1ヶ月しか経っていない。安倍首相を含め閣僚の答弁はしどろもどろ、二転三転の連続でまともな議論がなされていない。野党との協議によって加えられた修正は、首相の「指揮監督権」設定、特定秘密指定期間60年への延長など、極右安倍政権による一層の統制と秘匿を強化する危険な内容である。
 この法案は、多くの無実の人々を「スパイ」にでっち上げ、拷問・監獄に送り込んだ戦前の軍機保護法に酷似している。戦後直後の刑法への「機密探知罪」の設定衝動や85年提出のスパイ防止法など、絶えず繰り返された「国家機密法制」復活の動きは強い反対の世論・運動と法曹界の反対によって幾度となく葬られてきた。その忌まわしい流れを汲む特定秘密保護法案を、わずか1ヶ月のデタラメ審議で強行可決するなど言語道断だ。

 この法律によって大臣や官僚は何でも恣意的に特定秘密に指定することができる。その数は当初だけで40万件にも及ぶと言われる。秘密を漏らした公務員や、秘密を得た市民は最高10年の懲役刑を科せられる。しかもこの法律は、現行刑法体系では規定されていない「共謀」「教唆」を独立の犯罪として刑罰の対象とし、犯罪が実行されなくてもそそのかしや相談だけでも最高5年の懲役の重罪とする恐ろしい条文がある。「何が秘密かは秘密」であることから、でっち上げでも何でも一度特定秘密保護法違反で逮捕されれば、弁護士でさえ弁護することが困難となり、無罪を証明する手だてがなくなる。秘密を取り扱う「特定秘密取扱者」への「適性検査」は、政治的な活動や団体とのかかわり、犯罪や懲戒の経歴、精神疾患、薬物の使用、酒癖、借金の状況などが、配偶者や親族まで調べ上げられる。外国人差別、出身地・出生・生育差別、疾病差別、思想差別等、決して許されないありとあらゆる差別が「適性検査」の名の下に合法化されようとしている。

 民意を踏みにじり、傲慢この上ない強権的なやり方で法案を強行可決して安倍首相は一体何を狙っているのか。
 安倍首相の言うような「国民の安全を守るための法律」などでは全くない。国家の軍事・外交政策を国民の目から覆い隠し、何にでもテロリスト・スパイのレッテルを貼り、一般市民や団体が政府の情報を得たり、政府を批判したり、学問や研究をしたりすること等々、さまざまな情報収集・言論活動を全て監視と刑罰の対象にすることを目的としている。市民活動やメディアを自粛させ、「見ザル、言わザル、聞かザル」へと国民を追い込もうとしているのである。
 その行き着く先は、軍事・警察国家、監視国家である。戦争への道は国家秘密から始まる。すでに今国会では、戦争準備・司令塔をつくるための法律である国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案が参議院特別委員会で可決されている。安倍政権は改憲への強い衝動を持ちながら、その先取りとして集団的自衛権の行使解禁へ舵を切り、米軍とともに海外派兵できる体制へすすめつつある。秘密保護法は、米軍と軍事情報を共有し、危険な動きを国民に一切知らせず戦争体制へと突き進もうとするものだ。

 あらゆる情報を知ることは主権者である国民が本来持っている権利である。特定秘密保護法は、行政・警察に強大な権限を与えることで国会や司法よりも上位に置きいわゆる「三権分立」を空洞化させ、基本的人権の尊重、平和主義、国民主権からなる憲法3原則に真っ向から対立する。民主主義とは、国民が政府を監視することによってこそ、成り立つものである。特定秘密保護法は、それを不可能にし、政府のやりたい放題に道を開くものである。
 私たちは、特定秘密保護法の衆院での強行可決に断固抗議する。法案は参院に送られたが、審議日程は実質1週間もない。憲法を蹂躙し、国と国民の関係さえ根本的に変えてしまう危険を持つ悪法を、アリバイ的な議論でお茶を濁し成立させることは絶対に許されない。法案を白紙撤回し、廃案にすることを要求する。

2013年11月27日
リブ・イン・ピース☆9+25