辺野古移設強行が鳩山首相を退陣に追い込んだ
沖縄切り捨て、基地の犠牲押しつけの日米共同宣言を撤回せよ
普天間即時無条件閉鎖・返還、新基地建設阻止の闘いを強めよう

鳩山の退陣は、沖縄の民意を踏みにじった結果
 鳩山首相が6月2日辞意を表明した。沖縄の民意を踏みにじり、国民を無視し裏切った結果だ。「最低でも県外」を公約とした鳩山はそれを破棄し、新基地に反対する沖縄の声を全く無視して米国の意向を最優先し、5月28日辺野古に新基地を押しつける日米共同文書の宣言を強行した。辺野古移設にあくまで反対する社民党を政権から切り捨て、政権基盤を掘りくずした挙げ句の果てに辞任に追い込まれたのである。日米共同宣言の強行が鳩山政権の崩壊をもたらした。直接的には鳩山では夏の参院選を乗り切れないという党内外の危機感が引き金となった。沖縄を軸とした反基地闘争の力、全国の世論と運動が、日米合意を強行した鳩山政権の存続を許さなかったのである。
鳩山首相:辞任 小沢幹事長も引責 カネ、普天間迷走 政権交代8カ月半(毎日新聞)
鳩山首相辞任:参院選前ドタバタ 沖縄県民「当然だ」(毎日新聞)
「普天間解決したわけではない」 鳩山首相辞意表明で名護市長(琉球新報)
辺野古合意を批判 仲井真知事、鳩山首相の退陣表明で(琉球新報)
「普天間問題が引き金に」 鳩山首相辞意表明で宜野湾市長(琉球新報)
政権と普天間 首相退陣でも幕は引けない(琉球新報社説)

 鳩山の辞任は、対米最優先、沖縄切り捨て路線の破綻である。鳩山は5月28日の記者会見において、「普天間の問題については、地元・連立・米国、この三者の理解を得」ることが必要だが、オバマとは一致しているものの、地元の理解も得られていないし、連立与党の福島氏からも理解は得られなかったとまで語っていた。日本の軍事外交政策が、ひたすらオバマと米国との関係だけで決まっていくことを首相が記者会見で語るという、国家主権の根幹、民主主義の根幹に関わる異常事態である。自民党政権時代から綿々と続いてきた対米従属、官僚主導の政治が民主党政権の元でも続いていることが劇的な形で現れたのである。
 だが、鳩山の退陣表明によって早くも米政府高官などから日米合意が次期政権に引き継がれるかどうかという懸念の声が上がっている。
 次期政権は、鳩山政権の崩壊さえもたらした日米合意が日本の国民にも、地元である沖縄にも受け入れられていないことを認め、白紙撤回をまず行うべきである。さらに沖縄に多大な犠牲を押し付ける日米安保の見直し、日米地位協定の見直し、普天間を始め沖縄の基地の大幅削減のために、米国と交渉に入るべきである。沖縄に犠牲を押し付け日本を米国の軍事出撃基地とする日米安保の解消にむかって進むべきである。
鳩山内閣総理大臣記者会見(首相官邸)
【首相辞任】米政府は普天間移設の着実な履行を要求(産経新聞)

ロードマップ(2006年)よりも危険な日米共同宣言
 5月28日に日米閣僚級会議(2+2)で出された日米共同宣言は、日米の外務・防衛閣僚によって作成された事務文書である。自民党時代にロードマップ(日米合意)を作成した防衛外務官僚が前面に出ることで、「辺野古現行案」がゴリ押しされることになった。
読む政治:検証・普天間移設 流転変転(その1)(毎日新聞)
読む政治:検証・普天間移設 流転変転(その2止)(毎日新聞)

 だが共同宣言は、沖縄が拒否し続けてきた2006年の日米合意に記された辺野古現行案と寸分変わらない移設案が盛り込まれているだけではない。目玉の一つは、米軍と自衛隊との間の施設の共同使用の拡大、基地機能や訓練の強化・拡大である。それは、沖縄にとどまらず、新たに鹿児島県・徳之島の活用、さらには本土の自衛隊の施設・区域も活用することが明記されている。
 キャンプ・ハンセンとキャンプ・シュワブ、北部訓練場など海兵隊基地が集中する沖縄島北部に、1800メートルもの滑走路を持つ新基地が建設されるならば、ヤンバルの森は巨大な軍事要塞となるだろう。しかもそこで自衛隊との共同使用が目論まれている。
 また在日米軍駐留経費負担として、「緑の同盟」と称し、グアム移転に際して従来から言われていた米兵住宅建設費等だけでなく、基地建設に関わる環境基準クリアのための整備までもが押しつけられようとしている。さらにこのグアムは、日米共同訓練地としても利用されようとしているのである。
 共同宣言は、自民党時代の日米合意を遙かに上回る規模で、負担と犠牲を沖縄と日本に押しつけ、日米同盟と日米軍事一体化を一気に拡大しようというものなのである。絶対に認めるわけにはいかない。
<仮訳>共同発表 日米安全保障協議委員会(外務省)
Joint Statement of the U.S.-Japan Security Consultative Committee(外務省 英語版)
日米共同声明に反対する(海鳴りの島から)

沖縄の新たな切り捨てを許すな
 今回の辺野古明記の共同宣言は、新たな沖縄の切り捨て、「捨て石」化である。稲嶺名護市長は、日米共同宣言に対して「沖縄はまたしても切り捨てられた」と怒りをあらわにした。沖縄の運動と世論は5.28を新たな屈辱の日として歴史に刻み、これを跳ね返すために闘う決意を固めている。
名護へ共感 市長に激励続々 公約守る姿勢を支持(沖縄タイムス)
[日米共同声明]首相の退陣を求める 沖縄を再び切り捨てた(沖縄タイムス)

 沖縄は太平洋戦争の最終局面で本土防衛の「捨て石」とされた。唯一地上戦が闘われ日本軍に強いられ住民は「集団自決」に追い込まれた。日本政府は52年のサンフランシスコ講和条約で沖縄を切り離し、米国に売り渡した。この時、象徴天皇として生き残った昭和天皇が決定的な犯罪的役割を果たした。米軍によって銃剣とブルドーザーで土地を奪われた。本土の米軍基地の多くが沖縄に集約され、巨大な米軍基地の島が形成された。72年の本土復帰では、「核抜き、基地抜き、本土並み」の沖縄人民の願いは見事に踏みにじられた。本土復帰は米側にとっては沖縄の基地を温存するためのものでさえあった。72年以前の米国施政下では朝鮮戦争とベトナム戦争への出撃基地として当然のように利用された。本土復帰に際しては、自衛隊基地さえ沖縄にやってきた。核密約、基地費用負担密約などおびただしい密約が取り交わされた。「0.6%の土地に75%が集中」「基地の中に沖縄がある」という軍事基地沖縄の基本構造は、72年本土復帰に形成され、今も全く変わっていない。この事実の中に沖縄差別と切り捨てが存在している。
 日米安保条約は沖縄基地の存在と集中を前提にしていることを鳩山政権の8ヶ月は示した。本土の私たちは、日米安保が沖縄の犠牲の上に成り立っていることを片時も忘れることはできない。
クローズアップ2010:普天間移設 体面優先、実現後回し 共同声明「砂上の楼閣」(毎日新聞)

闘いは続く 本土で、反基地の世論、運動を強めよう
 日米共同宣言には、「いかなる場合でも10年8月末日までに」工法の選定を行うことが明記されている。明らかに米軍事外交筋から迷走する日本政府に対する恫喝である。日米共同宣言を撤回させなければ、日本政府は米国に約束させられた辺野古移設を強行に押しつけようとしてくるだろう。だが、沖縄では、次期政権がいかなるものになろうとも、沖縄に基地集中・固定化しようとする差別政策に徹底して対抗していこうとしている。沖縄に14年間にわたって杭一本打たせなかった沖縄・辺野古の闘い、沖縄の闘いを心から学び、支援し、本土から辺野古押し付け・新基地建設反対の世論と運動を強めていきたい。7月参院選、9月名護市議選、11月沖縄知事選がある。本土で沖縄の基地撤去の声を広げていこう。
名護市民集会「絶対に認めない」 日米合意、鳩山政権を批判(琉球新報)

 民族差別や排外主義を煽って反動政策を国民に受け入れさせるのは権力者の常套手段である。天安艦沈没事件をテコにして、朝鮮半島で緊張を高め、戦争挑発するきわめて危険な動きが加速している。鳩山政権は、米韓に同調して対朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の制裁強化を決め、この朝鮮半島の緊張の高まりを、普天間基地移設・辺野古新基地建設を押しつける突破口にしようとした。また鳩山政権はドサクサ紛れに5月28日、船舶検査法を成立させた。この法律は、 国際法上戦争行為とされる船舶検査を北朝鮮籍艦船をターゲットにして行うことを可能とする戦争挑発法である。北朝鮮に対して与える脅威は計り知れない。警戒と批判を強めなければならない。
貨物検査特別措置法が成立…公海上で検査可能に(読売新聞)
天安艦沈没事件――多すぎる謎(リブインピースブログ)

 私たちはこれまで反基地の取り組みを進めていく中で、「本土」が沖縄を差別し、沖縄に犠牲を押し付けていること、沖縄に強いられた犠牲に対して無関心な「本土」に沖縄の人たちが強い怒りを持っていることを知った。「本土」における9条は沖縄への基地集中と一体のものであること、戦後一貫して「沖縄に9条は無かった」こと、9条を掲げるとき「安保問題」抜きにして語ることができないこと、沖縄に平和はないこと、平和的生存権が奪われていることなどを学んだ。
[報告]4月18日(日)リブインピース@カフェ「ウチナーンチュとともに反基地を語る」 「本土」は、沖縄の怒りの声を自分の問題として真剣に受け止めるべき(リブ・イン・ピース☆9+25)
C・ダグラス・ラミスさんに聞いた 沖縄と9条と日米安保(マガジン9)

 私たちは、現に抑圧している側、差別する側にあるという自覚をもちながら、基地問題を自分たちの問題としてとらえ、普天間即時閉鎖、新基地建設阻止、安保反対、日米地位協定改訂要求の取り組みを本土で進めていきたい。

2010年6月2日
リブ・イン・ピース☆9+25