菅首相による、日本学術会議への介入に抗議する
6名の任命拒否を撤回し、全員を任命せよ

 日本学術会議が新会員として推薦した105名のうち6名について、菅首相が会員に任命しなかったことが明らかとなった。任命されなかったのは、芦名定道・京都大教授(宗教学)、宇野重規・東京大教授(政治思想史)、岡田正則・早稲田大教授(行政法学)、小沢隆一・東京慈恵会医科大教授(憲法学)、加藤陽子・東京大教授(日本近代史)、松宮孝明・立命館大教授(刑事法学)の6名である。

 会員210名の日本学術会議は、3年ごとに半数を改選する。会員は、学術会議の推薦に基づき首相が任命する。今年が改選の年にあたり、105名が推薦された。菅首相は、そのうちの6名の任命を拒否したのだ。現行の制度になった2004年度以降、会員として推薦されたにもかかわらず任命されないのは初めてのことである。

 6名が任命されなかった理由について、政府は一切説明していない。加藤官房長官は、「人事に関することでありコメントは差し控える」「首相の所轄で、人事等を通じて一定の監督権を行使することは法律上可能となっている」などと、「法律に基づいている」の一点張りである。
 しかし、これは事実をねじ曲げるものだ。「日本学術会議法」は、17条で「優れた研究・業績がある科学者のうちから会員候補者を選考し、首相に推薦する」と定め、7条で「推薦に基づき首相が任命する」としている。この点について、1983年の参院文教委員会で、中曽根首相(当時)が「実態は各学会が推薦権を握っている。政府の行為は形式的行為」などと答弁しているのだ。「首相による任命」は形式であり、実際これまでは推薦通りに任命されてきた。それを、「法律に任命と書いてあるから、首相が決める」と、理由の説明もなく、恣意的に変更するなど許されない。それとも菅首相は、「国会の指名に基づいて」「天皇が任命する」と憲法に規定される内閣総理大臣について、天皇が任命拒否することが許されるとでも言うのか?

 任命を拒否された6名の中には、「戦争法」(2015年成立)や「共謀罪法」(2017年成立)を批判してきた学者が複数含まれている。今回の任命拒否がこれらの学者を排除する目的から行われたことは明らかだ。学問的な業績ではなく、政権に不都合だから特定の人物を任命しないというのは、憲法23条に規定される「学問の自由」に対する明白な侵害である。
 今回の任命拒否は唐突に見えたが、すでに安倍政権がたくらんでいたことが明らかとなった。きっかけは、大学や研究機関での軍事研究に資金を提供する防衛装備庁の制度に対して、日本学術会議が2017年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」との決議を再確認したことであった。それ以降、内閣府が日本学術会議法の解釈について内閣法制局に照会するなど、安倍政権が政治的介入を試みていた。
 菅首相による任命拒否は、民主主義や「学問の自由」など歯牙にもかけない安倍政権の体質を、菅政権がそのまま継承していることを如実に示すものである。

 学術会議会員をはじめ、多くの学者、メディア、そして広範な市民から、「任命拒否は、学問の自由を保障する憲法に反する」と批判が相次いでいる。学術会議は6名が任命されなかった理由を明らかにすること、6名を任命することを求める要望書を提出するとしている。

 私たちは、菅首相による今回の任命拒否に断固抗議する。菅政権は、6名が任命されなかった理由を明らかにせよ。日本学術会議の推薦に従い、全員を任命せよ。学術会議に介入し、「学問の自由」を侵害したことを謝罪せよ。

2020年10月4日
リブ・イン・ピース☆9+25

※署名 菅首相に日本学術会議会員任命拒否の撤回を求めます!(change.org)