麻生「ナチスの手口に学べ」発言を糾弾する
大臣と議員を辞職せよ! 安倍政権の責任は重大
  

 麻生副総理・財務相は、7月29日、「国家基本問題研究所」のシンポジウムで、「ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」などと発言した。この発言は、ナチスを礼賛し、それにならって同じやり方で憲法を改悪しようというものだ。我々は、この発言を徹底して糾弾する。
ナチスの憲法改正「手口学んだら」 麻生副総理が発言(朝日新聞)

 この発言に対し、即座に国際的な批判がわき起こった。米国のユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」は「どんな手口をナチスから学ぶ価値があるのか。ナチス・ドイツの台頭が世界を第2次世界大戦の恐怖に陥れたことを麻生氏は忘れたのか」とする批判声明を発表した。ドイツの週刊紙ツァイトは、「日本の財務相がナチスの改革を手本に」と発言を伝え、「ナチスの時代を肯定する発言で国際的な怒りを買った」とした。
麻生氏ナチス釈明 独で批判次々 「そんな理解はしない」(東京新聞)
麻生副総理のナチス引き合い発言 米ユダヤ人団体が非難声明(産経新聞)

 アジアでも、韓国外交省の趙泰永・報道官は「こうした発言が、過去に日本の帝国主義による侵略の被害に遭った周辺国の国民にどう映るかは明白だ。多くの人を傷つけるのは明らかだ」と批判し、中国外務省の洪磊・副報道局長も「日本の進む方向にアジア諸国と国際社会の警戒を呼び起こさないわけにはいかない」との談話を出した。
 こうした国際的批判に直面した麻生は、8月1日になって「誤解を招く結果となったので、ナチス政権を例示としてあげたことは撤回したい」とした。しかし、自分は「喧騒にまぎれて十分な国民的理解及び議論のないまま進んでしまった悪しき例として、ナチス政権下のワイマール憲法に係る経緯をあげた」のだと、まるで黒を白と言いくるめるかのような言い訳をして、自分の発言をなかったことにしようとしている。謝罪も辞職も拒否している。
麻生副総理「ナチス憲法発言」撤回に寄せたコメント全文(産経新聞)

 麻生の発言は、もちろん単なる「言い間違い」ではなく本音だ。言葉の上で「撤回」しても考え方はそのままだ。これで幕引きにさせるわけにはいかない。麻生に、副総理・財務相の辞職、議員辞職を要求する。同時に、安倍首相の責任も問われなければならない。

 そもそも、麻生の言ったことは、全く歴史的事実に反する。
 ナチス・ドイツののヒトラー政権は、1933年2月の国会議事堂放火事件を口実に非常事態を宣言し、言論・報道・集会・結社の自由を大幅に制限した。令状によらない逮捕・予防拘禁を可能とし、3000人以上の共産党員らを逮捕・拘束するという大弾圧を行った。さらに、同年3月23日、共産党などの反対派議員を逮捕・拘束し、ナチス突撃隊・親衛隊に臨時国会議事堂を取り囲ませる中で、全権委任法を制定したのである。この法律は、国会を経ずに法律をつくる権限をヒトラー政権に与えるものであり、これによって当時最も民主的な憲法とされた、ワイマール憲法を無効化したのだ。
 麻生の言う「ナチス憲法」なるものは存在しないし、「誰も気づかないで変わった」などということもない。大弾圧の中、社会が騒然とする中で、ワイマール憲法は無効化されてしまったのだ。
 このように、ワイマール憲法に関する麻生の発言はは全くデタラメだが、「静かに」、すなわち、さしたる議論もなしに憲法を変えてしまいたい、というのは、まさに本音であろう。安倍が、「集団的自衛権」を合憲とするために、内閣法制局長官を外務官僚にすげ替えたのは、まさにそうしたやり方だ。条文を変更できなくとも、その解釈を変更することで現行憲法を空文化してしまうというのは、まさにナチス的やり方とも言える。

 麻生発言に表れた本音は他にもある。それは、ナチス的なもの、軍事独裁政権、ファシズムに対する抵抗感が一切ないということである。そしてそれは、日本軍国主義・天皇制ファシズムの歴史を肯定することと、必然的に結びついている。
 実際、麻生は、この発言の中で、靖国についても「静かに参拝すべきなんですよ。騒ぎにするのがおかしいんだって。静かに、お国のために命を投げ出してくれた人に対して、敬意と感謝の念を払わない方がおかしい」と発言した。ナチス肯定と日本軍国主義の肯定は一体だ。
 この発言が飛び出したシンポジウムを主催した「国家基本問題研究所」とは、桜井よしこが理事長を務める右翼シンクタンクであり、このシンポジウムでは、日本維新の会ですら除名せざるをえなかったあの西村真悟もパネラーを務めた。このような行事に出席すること自体、大臣として許されない。
 そしてこの問題は、麻生1人の「失言」問題ではない。安倍の任命責任というのは、単に「変な人」を閣僚にしたということにとどまらない。麻生発言が表現しているのは、安倍内閣そのものを貫く体質である。事実、閣僚もこぞって麻生を擁護している。安倍自身が首相就任後、「河野談話」、「村山談話」の見直しに血道を上げ、「侵略の定義は定まっていない」と日本が侵略戦争を行った事実すら認めない。日本軍「慰安婦」をはじめ、戦争被害者への補償を否定し続けている。「歴史認識」は安倍政権のアキレス腱だ。衆参両院で巨大な議席を獲得し、盤石になったかに見える安倍政権を、この問題で徹底的に追及し、揺るがせよう。
 野党は、8月2日から始まった臨時国会での審議を要求したが、自民党は拒否を押し通した。野党の中でも、日本維新の会の橋下代表は「行き過ぎたブラックジョーク。ナチス・ドイツを正当化した趣旨ではない」と容認している。維新の会が自民党の補完勢力でしかないことが、また明らかとなった。自民党は秋の臨時国会まで引き延ばし、うやむやにすることを狙っている。これを許すわけにはいかない。
麻生氏のナチス発言巡り国会審議要求を与党拒否(テレビ朝日)

 安倍は「集団的自衛権」の容認などの解釈改憲を進めるのと並行して、改憲の地ならしとしての国民投票法改訂を秋の臨時国会で行おうとしている。「静かに」改憲することを許さないために、改憲反対の運動を巻き起こしていこう。

2013年8月7日
リブ・イン・ピース☆9+25