全面的な武器輸出に道を開く「武器輸出三原則」「運用指針」の改定を糾弾する
パトリオットミサイルの米国への輸出決定糾弾!
更なる武器輸出緩和と次期戦闘機(国際共同開発)の輸出を許すな!

 12月22日、岸田政権は、2022年の「国家安全保障略」に沿って、「防衛装備移転三原則」と「運用指針」を改定し、殺傷能力ある兵器の輸出解禁を含む武器輸出の制限を大幅に緩和しました。改定では対空ミサイル・パトリオットのライセンス元米国への輸出、共同生産兵器の部品輸出、殺傷兵器を装備した警備・掃海艦などの輸出を認めました。
 政府は早くも次の武器輸出緩和政策を追求しており、2月中にも日英伊共同開発戦闘機のアジア諸国などへの輸出に道を開こうと公明党に圧力をかけています。
この動きは共同開発を突破口に純国産の武器を含め日本の軍事企業が開発生産する武器の全面解禁への道を開くものです。しかも全てはわずか10数人の与党協議だけで決めて閣議決定だけで軍事外交政策の最重要政策を変更しています、国民も国会も全く無視です。昨年成立した「防衛産業基盤強化法」による軍事産業の育成強化と合わせて「官民一体となって防衛装備の海外移転を進める」と武器を輸出する国(死の商人)になることを宣言したことになります。私たちは武器輸出政策の根本的転換に断固反対します。

殺傷能力のある武器輸出解禁への執拗な動き
 殺傷能力があるなしに関わらず、武器(軍隊が使用し直接戦闘で使用する)ものを海外に輸出することは、憲法の平和理念(全世界の人びとが平和的に生きる権利)にも、9条の戦争放棄(武力による威嚇・武力行使の永久放棄、国際紛争を解決する手段としての永久放棄)にも反する行為です。ましてや殺傷能力のある兵器を輸出することはいかなる理由でも許されるものではありません。
 朝鮮戦争やベトナム戦争で、米国に弾薬を供給し戦争への加担を続けた日本政府に対し、国内から厳しい批判の声が沸き起こりました。67年佐藤内閣の答弁では、@共産圏、A国連決議で禁止された国、B紛争当事国対象の武器輸出禁止でしたが、76年に三木内閣の時、「他の地域・国への輸出も自粛する」とされ、それ以降武器輸出そのものが事実上の禁止状態になりました(武器輸出禁止三原則)。労働者、勤労人民、平和運動の力によって国に武器輸出の事実上の全面禁止が押し付けられたのです。
 第二次安倍内閣は、武器輸出解禁へ突き進みました。2014年に「武器輸出禁止三原則」を逆転させ、「防衛装備移転三原則」に改変しました。それは@輸出禁止地域を紛争当事国や安保理禁止国に限定し、A平和貢献、国際協力のみならず、「日本の安全保障に資する国」にまで輸出範囲を広げました。ただし、「運用指針」で輸出を認められるのは救難、輸送、警戒、監視、掃海の5分類に限られ、殺傷能力のある兵器は事実上禁止扱いでした。
 政府は「防衛装備移転三原則」に基づき安倍首相を先頭に潜水艦や飛行艇などの外国への武器売り込みに全力をあげましたがことごとく失敗しました。結局これ以降も輸出に成功したのはフィリピンへの警戒レーダーだけでした。殺傷能力ある兵器は輸出できない状態が続きました。
 岸田政権は、2022年12月の「安保3文書」のひとつである「国家安全保障戦略」受けた今回の「防衛装備移転3原則」と「運用指針」の見直しで、この76年以来続く殺傷兵器輸出の禁止を部分解禁したのです。

「運用指針」改定の内容
 「運用指針」の改定では、武器輸出制限の大幅な緩和として以下を決定しました。
@「ライセンス生産品」のライセンス元国への輸出を全面的に解禁
*ライセンス生産とは、パトリオットミサイルのように他の企業が開発した製品の設計・製造技術を、許可料(ライセンス料)を支払って別の企業がその製品を生産すること。
A安全保障面で協力関係のある国に対して戦闘機のエンジンや翼などの部品の輸出を解禁
B救難、輸送、警戒、監視及び掃海の「5類型」の装備品に、殺傷能力のある武器を搭載していても輸出解禁
C国際共同開発・生産した装備品について、パートナー国が完成品を輸出した第三国に対し、日本が部品や技術を直接輸出できるようにしたこと、
Dウクライナに限らず「被侵略国」全般に非殺傷兵器を提供可能にしたこと、です。

米国へのパトリオット輸出が最優先=殺傷能力ある武器の輸出の突破口を開く
 今回の「運用指針」の改定は、今起こっている国際紛争にかかわる武器移転のための解禁です。バイデン政権の要請に応える事が最優先です。@は、バイデン政権から再三要請を受けたパトリオット対空ミサイルPAC3の輸出です。岸田政権は「運用指針」改訂直後に地対空ミサイル「パトリオット」の完成品の対米輸出を決定しました。これは事実上ウクライナ、あるいはイスラエルへの迂回輸出です。米国備蓄用弾薬不足を日本が補うことで、ウクライナ・イスラエルへの弾薬供与をスムーズに行います。さらに武器・弾薬供与が滞る台湾向け対策でもあります。直接に戦争加担が明らかな迂回輸出に日本政府は問題ないとの立場を取ろうとしています。異次元の軍備増強の下で急速にミサイル・弾薬の調達を続け自衛隊でも「不足」している「パトリオット」を気前よく輸出するなど呆れるような対米従属という他ありません。
 影響はそれだけにはとどまりません。今回、ライセンスを持つ全ての国に完成品の輸出を可能としたのです。そのことにより、米国と欧州諸国8か国にF15戦闘機や砲弾など、殺傷能力ある完成品を輸出できるようになりました。日本でライセンス生産した装備品は2022年度までで少なくとも79品目あります。このうち4割の32品目(「F15戦闘機」、「CH47輸送ヘリコプター」、「PAC3」などを含む)は米国です。他には、英国「一五五ミリ砲弾」「81ミリ迫撃砲」、フランス「120ミリ迫撃砲」、イタリア「自衛艦の127ミリ速射砲」、ベルギー「5.56ミリ機関銃」などがあります。これらの装備品はライセンス元の国からの要請さえあれば、輸出できます。今後、新たなライセンス生産品・武器弾薬はすべて輸出の対象となります。
 岸田政権は、英大手軍需産業BAEシステムズからライセンスを受けて製造している1一55ミリ砲弾について、イギリスへの輸出(ウクライナへの迂回輸出)を検討していると伝えられています(英紙フィナンシャル・タイムズ)。

フィリピンや途上国に武器・装備を供給し、中国との紛争を煽る
 Aはインドネシアへの戦闘機エンジン(中古)の輸出を想定しています。Bは対中装備としてアジア諸国に売りこむことを想定し(警備艦)や掃海艇などの艦艇に機関砲などの武器を搭載して輸出できるようにします。Cは共同生産した戦闘機などの武器について、補充部品などの輸出を可能にします。ABの目的は武器輸出を通じてアジア諸国との軍事的関係の足がかりをつくり、それを通じて対中包囲網を築くための政治的・外交的手段のために使うことにあります。バイデン政権は現在フィリピンに中国に対する領有権紛争で強硬姿勢を取らせ対立を煽っています。米軍は東南アジアに拠点を築き、軍事演習をフィリピンをはじめアジア諸国と共に行い、中国に対する軍事挑発を強めています。岸田政権は、このようなアメリカの軍事戦略に呼応する形で、安保3文書で打ち出された「同志国」の軍に直接支援する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」と結びつけて、直接武器搭載の巡視船や警備艦を提供できるように道を開いたのです。それは、対中対立を煽り、アジアでの緊張を高め、紛争を煽る危険な行為に他ならないのです。

早くも共同生産武器の第3国直接輸出、5類型の撤廃、殺傷武器全面解禁を追求
 今回の改定の「運用指針」では、国際共同開発・生産した武器の第三国への輸出は、部品にとどまり完成品の輸出については協議継続となっていました。しかし政府は部品のみならず装備・武器そのものの輸出に向けてすぐに動いています。自民党は、直接は日英伊の次期戦闘機戦闘機の国際共同開発のプロジェクトの会合に間に合わせるために抵抗する公明党に容認を迫っています。駐英大使も自民党の方針を後押しする会見を行いました。
決定済みの次期戦闘機共同開発や米国との滑空兵器迎撃新型ミサイル共同開発のほか、今後武器の共同開発の増加を狙っています。世界的な競争力と市場獲得、利益確保のためこの機会に、共同開発の対等なパートナーになるために共同開発製品の輸出の全面解禁を決めようとしています。
 さらに自民党は、与党協議で5類型そのものの撤廃までも求めています。要するに戦車や攻撃兵器など全部の武器、装備、弾薬の輸出に踏み出すこと、武器商人国家になることを視野に入れています。

 岸田政権は改定した「運用指針」の最後に、「この運用指針は」「変化や」「必要性に応じて」「速やかに」「改正を行う」と書き加えました。与党協議と閣議決定、NSCの枠組みで、武器輸出の解禁をエスカレートさせるつもりです。岸田政権は、情報をシャットアウトし、民意を排除し、大手軍需産業の意向を受け、軍事ビジネス(死の商品商い)を奨励し、軍事で回る経済、軍事国家に突き進もうとしているのです。
 すでに官民を挙げた武器輸出の取り組みは始まっています。国会開会中の2月19日 安全保障関連3文書に基づく有識者会合の初会合を開きました。座長の榊原定征・経団連名誉会長は「官民一体で技術開発を強化し、民需に積極的にスピンオフして経済成長につなげることが必要だ」と強調しました。「為替相場の変動のもとで43兆円で防衛力強化ができるのか」とさらなる軍拡の要求の声さえ上がりました。また防衛省は2月20日、アジア最大の航空展示会「シンガポール・エアショー」に初めて自らブースを設けて出展しました。川崎重工業など日本企業13社が製品を紹介しました。いままで限られてきた海外の軍や企業との取引を防衛省が直接後押しし、軍需産業の拡大・強化をめざしています。 
 ガザとウクライナでは米とNATO等から海外が提供される武器で多くに市民が犠牲になっています。武器輸出制限緩和と全面解禁は、日本もその加担者、加害者になることを意味します。
 岸田政権の暴走を止めましょう。米国への地対空ミサイル・パトリオットの輸出に反対しましょう。殺傷能力ある武器を含む軍隊が戦場で使う一切の武器の生産と輸出に反対の声を上げていきましょう。

2024年2月23日
リブ・イン・ピース☆9+25