4ページのリーフレット形式になっていますので、職場や集まりでのミニ学習会などに是非ご活用ください。 ※条例案は以下にあります。 [大阪府] 教育行政基本条例 府立学校条例 職員基本条例 [大阪市] 大阪市教委に提案された「教育基本条例」案 2012年3月1日 やっぱりあぶない 教育基本条例案 2012年2月26日 ■9月府議会で継続審議となった大阪維新の会提案「教育基本条例」「職員基本条例」(以降、10月案)から何が変わったのか、変わらなかったのか。 (2) 大阪府内の教育に関するすべての権限を知事・市長が握る構造の構築 「何が社会常識かは、価値判断にかかわること。意見が割れたときには、最後は公選職が決めることです。組織のルールに従えないなら、教員を辞めてもらいます。(5月7日・8日府幹部職員へのメール)」と、政治権力を握るものの価値判断を「常識」とし、教育への政治介入を公然と掲げ、それに従えない者や成果を上げられない者を「府民への反逆者」として、教育委員も校長も教員も、公務員全般もすべて、みんなクビにすると主張。「条例案」はそれを具体化し条文化したもの。 ■10月条例案は、行政一般についても教育についても、選挙で勝利した知事や政党が府民に白紙委任状の提出を強制するような内容。新条例が成立してしまえば、知事や市長が教育目標を立て、教育委員会、校長、教職員へとその命令が貫徹されるための独裁的システムが構築される。教育への「政治介入の制限」云々などというレベルの話ではない。 → この発想を根源とする「条例」の本質、基本構造は2月案でも変わっていない。 (3)「教育基本条例」(10月案)における知事権限 「教育環境を整備する一般的権限」 ■知事は、府教育委員を任命する権限のみならず、地方教育行政法の定める範囲において、府内の学校における教育環境を整備する一般的権限を有する」(第6条1項) 「教育環境」というのは、学校をあるスタンダードに基づいて、他の学校と競争させ、かつそれを階層的に構成する『一般的権限』を規定したもの。この理論的背景は、新自由主義論者の中の新制度派経済学という論理中に表れている。ここで示されているのは「主人―代理人」関係という、つまり「知事を主人(principal)」として設定し、その指示を受けてただ任務を遂行する「教育委員会や学校が代理人(agent)」という形の上意下達の関係に置き、そこの中に徹底した競争的環境を用意すること。(新潟大学教育学部教授 世取山洋介) ■条例案は、第6条1項の「知事権限」の行使として、「高等学校教育において府立高等学校および府立特別支援学校が実現すべき目標を設定」(6条2項)すると定め、この「目標」の「規則」化(12条1項)を規定。また、教育政策の根幹にかかわる府教育委員会の役割を「知事が設定した目標を実現するため、具体的な教育内容を盛り込んだ指針を作成」(7条)することに限定。 (4)「教育行政基本条例」(2月案)においても知事が「一般的権限」を行使できる構造 ■知事と教育委員会との相互協力と適切な役割分担と謳いながら、教育振興基本計画の策定について、知事に「一般的権限」が与えられる構造になっている。 「(大阪府教育)委員会及び知事は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第23条及び第24条に規定する職務権限に基づき、適切な役割分担の下に、府における教育の振興に関する施策の充実を図らなければならない」(第2条)と知事と教委との協力をかぶせているが、第4条の規定によって、地教行法第23条の教育委員会権限を知事のものとしている。 「第4条 知事は、委員会と協議して、基本計画の案を作成するものとする。 2 基本計画は、大阪府議会の議決を経なければならない。 3 知事は、第一項の規定による協議が調わなかったときは、委員会の意見を付して大阪府議会に提出するものとする。 4 基本計画には、次に掲げる事項を定めるものとする。 一 府における教育の振興に関する基本的な目標及び施策の大綱 二 前号に掲げるもののほか、府における教育の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項」 (5)知事の策定した目標を遂行できない(しない)教育委員の罷免権を残す ■(10月案)府教育委員会の委員がこの「規則に違反して目標を実現する責務を果たさない場合」には「罷免事由に該当する」(12条2項)とし、知事の設定した「教育目標」に従わない教育委員の「罷免」権を知事に与えている。 ■(2月案)「第7条 知事及び委員会は、前条第1項の点検及び評価の結果に基づき、基本計画に定めた目標の達成のために必要な措置を講ずるものとする。 2 知事は、前条第3項の教育委員の点検及び評価の結果に基づいて、地方教育行政法第7条第1項に規定する罷免事由に該当するかどうかを判断するものとする。」 (6)橋下知事による教育への政治介入正当化の法律の抜け道? ■「予防訴訟」東京高裁判決(2011年1月28日)および「君が代処分取り消し訴訟」東京高裁判決(2011年3月10日)などにおいて「君が代起立強制の職務命令」が教育への不当介入に当たらないとする判断の根拠として、「地方教育行政法」第23条第5項が示され、それが5月以降に立て続けに行われた最高裁の不当判決でも踏襲されていると考えられることに橋下知事とそのブレーンたちは目をつけた? ■二つの高裁判決は、地教行法23条第5項に関して、次のように判断。 「地方公共団体が設置する教育委員会が教育の内容や方法に関して行う介入については、教育に関する地方自治の原則に反することはあり得ないし、教育委員会は、地教行法23条第5項により学校の組織編成、教育課程、学習指導に関して管理、執行する権限を有するとされ、・・教育委員会による教育の内容や方法に関する介入を大綱的基準の設定にとどめるべきであるとする被控訴人らの主張は理由がない。」(「予防訴訟」東京高裁判決P78 2011年1月28日) ■「地教行法23条第5号により都立学校の教育課程等に関する権限を有する都教委が、学習指導要領の国旗・国歌条項の具体化として、卒業式等の学校行事における国旗・国歌の指導の内容、方法を校長に指示できるのは当然のことであって、それはまさに許容された目的である。」(「君が代処分取り消し訴訟」東京高裁判決P67 11年3月10日) ■橋下前知事は、これをさらに拡大解釈し、「教育委員会の権限」が教育内容のすべてにわたることにしてしまう。教育委員会の権限を絶対化し、教育委員会と「協議」して決めさえすれば、知事が教育目標を決定しても合法なのだという論理の組み立て。知事は「協議」さえ行えば、「教育目標設定」の一般的権限を有すると。 (7)条例案はどのような子どもを育てようとしているのか → 2月条例案では10月案第2条は消えた。 しかし、「教育振興基本計画に『基本的な教育の目標』を定めると規定」(第4条第4項の1) (10月案の第2条) [1]個人の自由とともに規範意識を重んじる人材を育てること [2]個人の権利とともに義務を重んじる人材を育てること [3]他人への依存や責任転嫁をせず、互いに競い合い自己の判断と責任で道を切り開く人材を育てること [4]不正を許さず弱者を助ける勇気と思いやりを持ち、自らが社会から受けた恩恵を社会に還元できる人材を育てること [5]我が国及び郷土の伝統と文化を深く理解し、愛国心及び郷土を愛する心に溢れるとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する人材を育てること [6]グローバル化が進む中、常に世界の動向を注視しつつ、激化する国際競争に迅速的確に対応できる、世界標準で競争力の高い人材を育てること ※条例案の教育理念 (どんな子どもを育てるのか)の問題点 *「人材」育成としてしか教育を見ていない *子どもの人権にたいする記述は皆無。 *逆に「教育上必要あるときは、最小限の有形力を行使して、児童・生徒に学校教育法11条に定める懲戒を加えることができる。但し、体罰を加えることはできない。」(10月案第47条)と規定。 <学校教育法第11条>(懲戒) 「校長及び教員は、教育上必要があると認めるときは、文部科学大臣の定めるところにより、学生、生徒及び児童に懲戒を加えることができる。ただし、体罰を加えることはできない。」 「問題行動を起こす児童生徒に対する指導について(通知)」 (18文科初第1019号平成19年2月5日) 有形力の行使以外の方法により行われた懲戒については、例えば、以下のような行為は、児童生徒に肉体的苦痛を与えるものでない限り、通常体罰には当たらない。 ○放課後等に教室に残留させる(用便のためにも室外に出ることを許さない、又は食事時間を過ぎても長く留め置く等肉体的苦痛を与えるものは体罰に当たる)。 ○授業中、教室内に起立させる。 ○学習課題や清掃活動を課す。 ○学校当番を多く割り当てる。 ○立ち歩きの多い児童生徒を叱って席につかせる。 *「愛国心」を明文化 → 大阪府条例では「愛国心」の文言を削除、大阪市で橋下市長が復活 (8)教育を受ける権利の意味は何か(第3条米国の「落ちこぼれゼロ法」の核心) (児童生徒の教育を受ける権利) 第3条 府内におけるすべての児童生徒は、等しく教育を受ける権利を有する。 2府は、自立支援が必要な児童生徒、学習障がい及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒が等しく教育を受けるために必要な措置を講ずるよう、努めなければならない。 (米国教育省の「落ちこぼれゼロ法」に関する保護者向け説明から) <この法が強制するもの> 『The No Child Left Behind(落ちこぼれゼロ)』法は、2002-2003年度に施行されました。法の内容は以下のとおりです。 2005年までに、すべての州において、3年生から8年生まではreadingとmathの試験を毎年すべての生徒に対して行わなければならない。2007年までにはscienceも加わる。 州は、あらゆるグループの生徒が州の学習標準に「順当に毎年前進していること」を示さなければならない。これには、経済的に困難な層、人種/民族によるグループ、障害者グループ、英語を母国語としないグループが含まれる。目標は、今後12年間ですべての生徒が100%読み書きできるようにすること。 <公に対する結果責任> ・すべての学校と学区は、年間報告書を公開することを求められているので、自分の学校の状況を把握することができます。報告書には、以下の内容が記載されます。 ・あらゆる層の生徒についての学業の達成度/・生徒の学業の達成度を学区内と州レベルで比較/・高校を卒業する割合と退学する割合/・教師の資格証明/・試験を受けていない生徒の割合/・「改善の余地あり」と評価された学校の名前/・米国教育省では、National Assessment of Educational Progress (NAEP)によって2年毎に4年生と8年生に対して実施されるリーディングと数学の試験に州が参加するよう支援しています。これにより、保護者は別の州での学業レベルを把握することができます。 ・NCLBは公立学校に通う「すべての子ども」に同一の学力レベルを期待しており、英語を母語としないELL(English Language Learner)の生徒も対象となっています。 ・2年続けて前進が認められなかった学校(いわゆる「落第した学校」)は、学校改善が必要な学校とみなされる。校内の生徒は誰でも、学区内のより良い学校へ転校する選択肢が与えられる。このための交通費は無料になる。学区側では、定員オーバーを転入を断る理由にすることはできない。 (9)2月案は、知事(府議会)→府教委→校長→教職員という上意下達構造をそのまま残した ☆知事 *教育委員の任命、罷免 *地方教育行政法の定める範囲において、府内の学校における教育環境を整備する一般的権限 *府教委との協議を経て、高等学校教育において府立学校が実現すべき教育目標を設定 *府議会の多数派が知事案への府教委の反対を抑え込めること ☆府教委 *知事が設定した基本計画に定めた目標を達成するため、知事と委員会が毎年共同して点検と評価。委員会は、自己点検のために具体的な教育内容を盛り込んだ指針を作成 *学力調査テストと府独自の学力テストの結果を市町村及び学校別にHP等で公開 *校長の意見具申を尊重して教員採用、教職員の進退を決定→校長の意向を尊重してクビ *校長、副校長の人事評価 ☆校長 *指針をもとに、学校の具体的・定量的な目標を設定 *当該目標の実現に向けて、幅広い裁量を持って学校運営。各学校の予算は「学校教育計画に定めた教育目標を達成するために必要な経費を要求する。(2月案第8条) *当該計画を実行するための予算を要求 *目標について、自己評価を行い、学校運営協議会の評価も加え、HP等で公表 *学校教育計画策定には、学校協議会との協議を要する。 *保護者だけでなく、地域住民その他の関係者との連携と説明責任 *教職員に対して職務命令を発する権限(副校長も) *内外から公募、任期制もあり *教職員の人事評価 ☆教職員 *教委の決定、校長の職務命令・経営指針に従う義務 *懲戒処分、分限処分、指導力不足についての詳細な規定 ほとんど全てが一昨年1月「懲戒処分指針」と2月「分限処分指針」の引き写し 職務命令違反は、1回目及び2回目は戒告・研修、誓約書と分限解雇の警告書(職員基本条例2月案第27条) 同一の職務命令違反3回目・職務命令違反5回目で分限免職(同上) *人事評価 教員以外には、S 5%、A 20%、B 60%、 C 10%、D 5%の相対評価 教員に対しては、上記の適用除外 (具体案はまだ示されていない) 期末手当・勤勉手当への反映 教員に対して「相対評価をなくす代わりに、保護者から『不適格教員』の申し立てを受け、訴えが妥当と認められれば指導研修の対象にする」 *研鑽の義務 ☆保護者 *学校の運営に主体的に参画する義務 → 「不適格」「評価」で参加せざるを得ない *学校教育の前提として、生活のために必要な社会常識及び基本的生活習慣を身に付けさせる教育を行う義務を保護者に課す(10月案) ☆学校協議会 *学校経営計画、学校評価、教員評価等学校運営の根幹に関わる事項に関する協議 (10) 学校間競争の促進と公教育の縮小 ☆府立高校の学区制廃止、全府1学区 ☆3年連続で定員割れして改善の見込みないときは統廃合(再編整備と言い換え) ☆組織改廃による過員と学校法人化した場合の教職員の「分限免職」 ☆大阪市「教育基本条例」への「学校選択制」規定の確実性(すでに市教委が動き始めている。) (11)新自由主義的教育改革 *「エリート育成」高10校に各1500万円の計1億5000万円、「がんばった学校」2校に1億円ずつ計2億円、校長マネジメント予算1校あたり500万円前後×30数校の計2億円、海外のエリート育成教育視察に5172万円 △校長マネジメント予算は、校長に予算獲得を教育長等へのプレゼンで競わせる △韓国、中国、台湾、香港マカオ、シンガポール、インドなど、英語教育、キャリア教育、英才教育など先進的取り組みの学校視察のために突如135人を派遣。 *私立高校授業料の無償化政策による公立高校の縮小 |
Tweet |