[シリーズ]沖縄にも、大阪にも、どこにも米軍基地はいらない(その5)
「世界で最も危険な普天間基地」の実態にふれる

 これまで本シリーズで「日米合意」とグアム移転の政治的な動きを伝えてきましたが、今回は「世界で最も危険な基地」と言われる普天間基地の実態にふれてみたいと思います。私たちは、11月8日の県民大会に代表を派遣し、同時に行った沖縄国際大学の2004年ヘリ墜落現場と嘉数高台(かかずたかだい)公園展望台のフィールドワークの様子などを報告してきました。日常的に騒音被害や墜落の危険にさらされている沖縄の人々の切迫した気持ちを本当に共有することは困難ですが、私たちが見聞きし伝えられていることを紹介したいと思います。
[緊急報告会]沖縄県民大会の参加報告と普天間問題 @カフェ報告(リブ・イン・ピース☆9+25)

市の中心に飛行場が居座る 宜野湾市ホームページより

 普天間飛行場は、宜野湾市(人口約9万人、3万7千世帯)の中心にある約480ヘクタールの米海兵隊航空基地で、市域の4分の1を占めます。1945年、沖縄戦で米軍が占領と同時に接収、その後に長さ2800メートル、幅46メートルの滑走路が1本整備され、ヘリコプター部隊を中心に約52機が配備されています(2008年1月)。基地を取り囲むように住宅や学校、公共施設が建ち並ぶため、住民が日常的に騒音被害や墜落の危険にさらされています。「世界一危険な基地」と称されるなど、沖縄の基地問題を象徴する存在です。1996年の日米特別行動委員会(SACO)の最終報告で、移設先確保の条件付き全面返還(5〜7年)が合意されたが実現していません。周辺住民が国相手に起こした集団訴訟では2008年6月、同飛行場の騒音の違法性が司法認定されました。施設用地の9割は私有地で、3000人余りの地権者がいます。年間賃借料は約65億円)。《09.11.08沖縄タイムス速報版より引用》

 さらに詳細には、琉球新報社・地位協定取材班著「日米不平等の源流」(高文研、20004年12月8日発行)は、『世界一危険な基地「普天間」』という項目で、以下のように展開されています。
(1)在沖縄海兵隊「普天間飛行場」。基地は住宅密集地、市街地のど真ん中に位置、宜野湾市の25%を占有、基地の危険性は過去幾度も指摘されながら、撤去も移設も進まず、問題は放置され、市民の命を危険にさらし続けています。周辺には、約30の学校、教育施設、病院、福祉施設が点在し、8万8千人の宜野湾市民が基地の爆音にさらされ続けながら生活を強いられています。

(2)指摘される危険性の具体的内容として、沖縄県のまとめでは、普天間飛行場所属の事故は、沖縄が日本に復帰した1972年以降だけでも77件(2002年12月現在)。その中で、重大な墜落事故は15件。墜落等のヘリ事故による米兵の死者は29人、行方不明者19人、負傷者15人を合わせると、死傷者は60人を超えます。

(3)普天間飛行場を離着陸する米軍機は、8万8千人が暮らす市街地上空を必ず通らなければなりません。しかも米軍機は民間機に比べ80倍もの事故発生率(米議会報告)という現実です。在沖縄米海兵隊の中核基地の普天間飛行場には、KC135空中給油・輸送機12機、UC12F作戦支援機2機、UC35作戦支援機1機のほか、急襲部隊として機能を果たすヘリ中隊が主力部隊として駐留。そのヘリはCH46中型ヘリが24機、沖縄国際大学に墜落した同型異種CH53E大型ヘリ15機、ほかAH1W軽攻撃ヘリ10機、UH1N指揮連絡ヘリ7機が常駐。それぞれ1000時間当たりの事故発生率はCH46Eが4.63、CH53Eが4.22、軽攻撃ヘリが3.40、指揮連絡ヘリが8.38と高率です。米議会調査局報告では1980年から2000年の4軍(陸、海、空、海兵)の軍別事故発生率でも陸軍1.98、空軍1.68、海軍2.55に比べ、海兵隊は4.55とずば抜けて高率です。在沖縄米軍の航空機事故(217件)の35.5%を普天間飛行場所属機が占めています。

(4)在沖縄米軍の航空機関連事故は、最近10年間の統計を見ても「ゼロ」は1年もありません。毎年確実に事故は起きています。それどころか年間1〜8程度だった不時着事故(緊急着陸を含む)は、2002年には年間50件、03年には53件です。

(5)沖縄国際大学構内へのヘリ墜落炎上事故は、数多くの「不時着」事故の延長線上にあります。墜落に至る前段の不時着事故の増加は、宜野湾市民のみならず沖縄県民全体が危険にさらされることを意味します。
海兵隊のヘリ部隊が集中する普天間基地の墜落事故の危険性が非常に高いことがこの数字からも明らかになっています。具体的には、宜野湾市のホームページで、海兵隊機の飛行の様子が見ることが出来ます。そこでは、海兵隊のヘリが複数機で編隊を組み、宜野湾市上空で、演習を繰り返しているなど、住民の頭上で危険行為を白昼や夜間も堂々と行っています。

 普天間基地の爆音とはどのようなものでしょうか?
 琉球新報09.11.08朝刊社会面「ルポ騒音下を歩く(下)」では、「普天間」周辺住民 墜落の不安続くと題して、ルポされていました。このルポは騒音の実態を明らかにしています。
 そのルポでは、『宜野湾市の普天間飛行場周辺に広がる住宅密集地。11月6日、7日も米軍機の重低音が響く中、いつどこを飛び,落ちてくるかも分からない恐怖の中で暮らす住民は「騒音は”殺人的”だ」「一日も早く危険をなくしてほしい」と訴えた。11月6日午後5時、滑走路延長線上の宜野湾市大謝名。南東の空に現れた輸送機が鈍い音を響かせて高度を下げる。記者が大きな機体の影にはいるころ、持参した携帯型の簡易騒音計は85.1デシベルを記録した。地下鉄の車内に相当する音量だ。しかしすぐそばにすむ会社経営者は、「音には気がつかなかった」「35年間住み常駐機の音には慣れてしまった。外来機の聞き慣れない音には恐怖を感じる。FA18戦闘機などは”殺人的”な音だ」と語る。午後7時半すぎ、沖縄国際大のヘリ墜落事故現場。東の空から現れたヘリ3機が上空を数分間旋回。計測値は70デシベル前後だが、腹に響く低い音だ。2004年の事故当時、約8bの回転翼が自宅門に直撃、破壊された男性は「最近は特にやかましく思える」と、騒音の合間に絞り出すように話す。事故以来睡眠薬を飲まずには眠れない日々が続いており、墜落の不安は消えないという。11月7日も、街はけたたましい音に包まれている。午前11時過ぎ、宜野湾市大謝名。近くの学校から音楽とともに聞こえてくる歓声を引き裂き,ジェット機が3機編隊で上空を通過。東に旋回し、相次いで降りてきた。音の波動が迫り、頭に何かがぶつかったような衝撃を覚える。あの会社経営者が表現した”殺人的”な音だ。簡易騒音計は電車の通過時を超える111.3デシベルを記録した』。

宜野湾市 「米軍普天間飛行場の危険性」より

 2009年4月に宜野湾市は「米軍普天間飛行場の危険性」というレポートを出し、住宅密集地を飛行する危険性や騒音被害を訴えています。そこでは、運動場で体育をする子どもたちのほんの真上を飛ぶ戦闘機の写真などが掲載され、事故の危険の高まりと騒音被害の拡大などが指摘されています。「市に寄せられた基地被害110番の声」の例として「ヘリコプターが5分おきに自宅を通過する」「夜中の1:30ですが、米軍機がうるさい」「子どもがミルクも飲まないし、寝付かない」「また墜落するのではないかと思った」などの住民の声が掲載されています。
 空港周辺には、離発着の際の安全を確保するために障害物を排除したクリアゾーンが設けられなければなりませんが、普天間飛行場の場合、クリアゾーン内に公共施設・保育所・病院が18箇所、住宅約800戸あり、約3,600人余の住民が居住しています。沖縄国際大学の2004年のヘリ墜落現場と嘉数高台公園の展望台フィールドワークでも、普天間飛行場には滑走路の前後にあるセイフテイーゾーンがなく、住宅地を擦るよう形で、離着陸する様子には驚きと恐怖を感じました。普天間飛行場は本当に即時無条件に閉鎖すべきだと思います。またこのような危険な基地をどこにも移転すべきではなく、すぐさま撤去すべきです。
米軍普天間飛行場の危険性(宜野湾市)

[資料映像]
普天間飛行場 騒音被害映像(宜野湾市ホームページより)

普天間飛行場〜騒音実態

普天間飛行場〜タッチ&ゴー訓練

普天間飛行場の危険性【普天間第二小学校】〜運動場の真上を戦闘機が通過

2009年12月30日
リブ・イン・ピース☆9+25