米軍普天間基地の名護市辺野古への移設を巡り、重大な事実がまた1つ明らかになりました。辺野古への新基地建設自体が、現在法的に不可能な状態にあるというのです。 この事実は、米国で国防長官に対して起こされた「沖縄ジュゴン訴訟」の関係者が、12月2日(水)、国会議員会館での緊急院内勉強会の中で明らかにしたものです。 グリーンピースジャパンのホームページは「ジュゴン訴訟原告団は、この許可問題をいざというときのために温存していたそうだが、鳩山政権が米側の圧力に屈しかねない山場と見て、これを発表した。院内勉強会に出席した10人以上の国会議員や多くのメディアはもちろん、おおよそジュゴン訴訟の経緯を知る私のようなNGO市民セクターの人びとも初耳だった。おそらく、オバマ大統領をはじめ米政府関係者も、この許可問題は理解していないのではないか」と述べています。 ※辺野古の基地建設は不可能・不必要!?(YES & NO--星川淳グリーンピース・ジャパン事務局長余談) それによると、辺野古への基地建設は、ジュゴンが天然記念物であるため米国文化財保護法(NHPA)に反するという、連邦地裁中間判決がすでに言い渡されています。現在は最終判決待ちですが、米政府と米軍に対し、関係者と協議を尽くすよう命令する強い判決が出るのは必至というものです。 ※米国でのジュゴン裁判、保護団体勝訴・問われる日本のアセスメント(JANJAN 2008年1月27日) ※Federal Judge Rules Against U.S. Defense Department Plans for Airbase in Habitat of Okinawa Dugong(Earth Justice) ※Okinawa activists applaud ruling on Futenma lawsuit(Stars and Stripes) そして、その協議が続いている間、あるいは控訴審が争われる間、辺野古の新基地を建設することはできないというのです。辺野古の新基地は日本政府が建設するのですが、米軍キャンプ・シュワブの敷地と、基地に使用を提供された海域を含んでいるため、日本政府が建設を実行するには、米政府、米軍の許可が必要となります。ジュゴン訴訟の判決に縛られる米側はこの許可を出せないのです。 なんのことはありません。辺野古への建設を声高に要求していると言われる米政府自身が、実は国内法によってそれを差し止められているのです。米政府、普天間基地を含む沖縄駐留米海兵隊の主要部隊のグアム移転計画を具体的に進めています。このことは本シリーズ(1)で取り上げましたが、伊波宜野湾市長が明らかにしたこの事実から、辺野古新基地建設は不必要であることがはっきりしました。そしてジュゴン訴訟はさらに、辺野古新基地建設が法的に不可能なことを明らかにしたのです。 米国国防総省は「制約を受けるのは運用であって、建設そのものは縛られない」と強弁しましたが、基地建設によってジュゴンの生息海域とエサの海草が生える食餌場が破壊されるのは明かであり、米側が基地建設を進めるためには、基地がジュゴン保護に影響を与えない事を証明しなければならないのです。 このような重大事にもかかわらず、「本土」のマスコミは全く報道していません。「米政府は辺野古に新基地を建設する以外の計画は受け入れない」、「約束を果たさなければ日米関係は大変なことになる」というような宣伝を、これでもかこれでもかと垂れ流すばかりです。 鳩山政権は、結論を先送りする必要はありません。辺野古への移設中止を直ちに表明し、国内移設先を探すまでもなく、普天間基地を撤去するよう、米側と交渉に入るべきです。 2009年12月19日 |