第一回は海兵隊グアム全面移転の問題です。 11月26日、伊波宜野湾市長は国会内で記者会見を行い、普天間基地の返還に伴うグアムへの海兵隊の移転について、従来より政府答弁などによって言われてきた“司令部のみの移転”ではなく、「海兵隊の本隊」の移転であることを明らかにし、普天間基地の代替施設としての辺野古基地の建設が全く不要であるとの見解を表明しました。 伊波市長は鳩山首相と直談判を行い、辺野古沖への移設が決まった05年ではなく、日米合意で米軍のグアム移転が決まった06年をもとに仕切り直しするよう要望したのです。この06年というのは、06年7月に作成された「グアム統合軍事開発計画」を指します。米太平洋軍司令部は2006年7月、この「グアム統合軍事開発計画」を策定し、普天間基地の海兵隊ヘリ部隊のほとんどすべてをグアムに移転させる計画を組んでいたのです。グアムへの基地集約・統合は、海兵隊航空部隊とともに、最大67機の回転翼機及び9機の特別作戦機(オスプレイ)用格納庫建設、ヘリコプターのランプスペースと離着陸用パッドの建設等々が含まれています。 この事実は沖縄タイムスや琉球新報では大きく取り上げられていますが、本土のメディアでは全くと言っていいほど無視されています。「週間朝日」12月11日号が、「海兵隊は辺野古ではなくグアムへ返せる!普天間基地返還〜在日米軍撤退のシナリオ」という見出しで取り上げた程度でした。 伊波宜野湾市長は今から3年以上前、この「グアム統合軍事開発計画」が出た当初から、一貫してこの事実を政府に対して突きつけてきましたが、政府は「正式な決定ではない」などと否定し続けました。しかし、今年11月20日に米海軍省グアム統合計画室(JGPO)がホームページに掲載したグアム基地建設に関するアセス評価「沖縄からグアムおよび北マリアナ・テニアンへの海兵隊移転の環境影響評価/海外環境影響評価ドラフト」において、普天間基地に駐留する海兵隊ヘリ部隊を始め地上戦闘部隊や迫撃砲部隊、補給部隊など実戦部隊丸ごとグアムに移転することが明記されていることを示したのです。 これからすると日米両政府が繰り返してきた「グアムに移転するのは司令部だけ」「実戦部隊は沖縄に残る」という説明は全くウソであり、普天間基地を閉鎖・返還するために、新たな代替基地は必要ないことになります。 ではなぜ、沖縄海兵隊の全面移転が、司令部だけの移転として宣伝されてきたのかについて、伊波市長が提出した資料によれば、「96年のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意・辺野古移転のイメージを元にした国会答弁や米政府関係者の意図的な「発言」だけが報道されることによって、司令部だけがグアムに行くかのように流布されてきた」とされています。辺野古新基地建設を正当化するためのトリックでした。 つまり、辺野古基地建設とグアム移転は無関係であり、移転問題のいかんに関わらず、日米両政府が何としてもキャンプ・シュワブに新基地を建設したいという衝動から生まれていたのです。 ※ 「普天間基地のグァム移転の可能性について」(宜野湾市のホームページ) ※「普天間基地のグァム移転の可能性について」配布レジュメ(PDFファイル:124KB) ※「普天間基地のグァム移転の可能性について」プレゼンテーション資料(PDFファイル:11,464KB) ※GUAM AND CNMI MILITARY RELOCATION Relocating Marines from Okinawa,Visiting Aircraft Carrier Berthing, and Army Air and Missile Defense Task Force(Joint Guam Program Office) 2008年9月15日に、海軍長官から米国下院軍事委員会議長に国防総省グアム軍事計画報告書として「グアムにおける米軍計画の現状」が報告された。その中で沖縄から移転する部隊名が示されており、沖縄のほとんどの海兵隊実戦部隊と、岩国基地に移転予定のKC130空中給油機部隊を除いて、ヘリ部隊を含め普天間飛行場のほとんどの関連部隊がグアムに行くと示された。米海兵隊第1海兵航空団で図示すると黄色で表示した10部隊。(宜野湾市ホームページより) 辺野古基地建設については2005年10月、在日米軍再編中間報告「日米同盟:未来のための変革と再編」(中間報告)で、普天間基地の代替施設を「沖縄県内」とし、辺野古に「L字型」滑走路を造ることなどが盛り込まれ、海兵隊のグアム移転も打ち出されました。しかし、この時点でグアム移転はまだ全面的なものではなく、司令部移転が記載されているにとどまっていました。グアム移転が米世界戦略の中心軸に据えられ、全面移転が打ち出されたのは、2006年5月の「在日米軍再編のロードマップ」(最終合意)です。それは、総額3兆円にも上る日本の財政負担で在日米軍基地の全面的再編と日米統合訓練の強化を全国で行おうとするものでした。そこで、辺野古新基地は「V字型」に変えられていました。 少なくとも米国は、2006年5月の「ロードマップ」(最終合意)以降、一方でこの辺野古新基地建設を要求しつつ、他方で巨額の予算を日本政府に出させながらグアムに在沖縄海兵隊の全部隊を撤収・配備できるように、軍事計画の変更を進めてきたと考えられます 米スポークスマンはいまだに「辺野古新基地建設が遅れると普天間撤去が遅れグアムへの海兵隊移転も遅れる」などといって、あくまでも辺野古新基地を押しつけようとしています。ところが、米上下両院は12月9日までに、2010会計年度の軍事施設建設に関する予算法案を一本化し、海兵隊8000人のグアム移転経費約3億ドル(約264億円)を盛り込むことで合意しました。これに呼応するかのように、日本政府も、来年度予算で沖縄海兵隊のグアム移転費約500億円を計上する方針です。辺野古如何にかかわらず、日本に莫大なカネを出させて海兵隊をグアムに移転させる計画は着々と進行しようとしているのです。もちろん私たちは、グアム移転費を日本政府が支払う事に断固反対です。 ※米議会、グアム移転費を可決へ 3億ドル、ほぼ要求通り(朝日新聞) 普天間基地問題と辺野古新基地建設は全く別のものであることをはっきりさせ、県民負担の軽減のため、今すぐ普天間基地を閉鎖・撤去すべきです。 2009年12月18日 |