[本の紹介]普天間基地はあなたの隣にある。だから一緒になくしたい。
(かもがわ出版 伊波洋一著 1050円 2010年10月10日)
 本書の表題が、地理的に遠く離れた沖縄・普天間基地の問題を一瞬にして「本土」の私たち自身の問題として捉えさせ立場を迫る。太平洋戦争の末期の「本土」爆撃の出撃拠点として飛行場が造られ、強制的に土地を接収され、米の世界軍事戦略の一環として組み込まれ、日本政府が日米安保と対米従属最優先の政策をとることで「世界一危険な」普天間基地が今日も米軍によって使用され続け、辺野古新基地建設が押しつけられようとしている。伊波氏の言うように「戦後日本政治の縮図であり、誰一人これから逃れることは出来ない。」だから一緒になくしたい。
 つい最近も、普天間の騒音が過去5年で最大となり、実に123.6デシベル−−「ジェットエンジンのすぐ近くの騒音」のレベルという120デシベルを超える「爆音」が記録された。
普天間の騒音、過去5年で最大 嘉手納改修のしわ寄せ(朝日新聞)

 直近の普天間は、飛行訓練が激増し騒音が耐え難いものとなっている。伊波氏は、米国内では厳しく規制され海外基地にも適用されるはずの基地規制が日本では放置され政府が何一つ対応を取っていないことを指弾する。そしてこともあろうか、日本に巨額の予算を出させるために普天間移設とグアム移転・米軍世界再編が勝手にリンクされているのである。伊波氏は、グアムへの基地集中が米軍の世界戦略であることから普天間の代替基地も辺野古新基地も必要ないことを、理路整然と解説する。米軍にとってはグアム移転・集中こそが抑止力強化であって、沖縄海兵隊駐留=抑止力論は真っ赤なウソなのである。
 伊波氏は、辺野古への移設が進まなければグアム移転も進まないというゲーツ国防長官らの言葉を逆手に取り、辺野古とグアムをセットにして進める日米両政府のやり方は沖縄の反対運動の前で立ち往生し、重大な岐路に立たされているとみる。つまりグアム移転を優先するため普天間閉鎖と辺野古新基地断念を決断させ海兵隊を沖縄から追い出す絶好の機会とみるのである。
 米国国内でも沖縄基地不要・撤退論が浮上しているという。最後は、基地の返還によって巨大な経済効果が生まれることを指摘して締めくくる。伊波氏の基地撤去のための戦略と反基地の姿勢は徹底している。その根底には沖縄の闘争への厚い信頼がある。「本土」からもこれを支持し、声を上げ続けたい。

2010年11月10日
リブ・イン・ピース☆9+25 N