籾井勝人NHK新会長は歴史歪曲発言を公式に撤回・謝罪し、直ちに辞任すべき!
安倍首相は自らの責任を明らかにすべき!

 1月25日、NHK籾井勝人新会長は就任会見で、歴史を歪曲し民主主義を否定する許し難い暴言を繰り返しました。暴言は、日本軍「慰安婦」問題、尖閣諸島と領土問題、安倍首相の靖国参拝問題、特定秘密保護法、NHKの報道姿勢など多岐にわたり、その発言たるやウソとデマゴギーだらけで、真実を報道すべきマスメディアのトップ、「公共放送」であるNHKのトップの口から出た言葉とは信じられないものです。それらは全て安倍首相と取り巻きの右翼政治家達が主張している内容と全くうり二つで、あたかもNHKが自民党の広報機関へと成り下がってしまっうかのようです。しかも会長の発言は極めて軽い調子で、歴史事実について真剣に認識しようという態度が完全に欠落し、日本軍国主義がアジア太平洋地域の人々に対して与えた辛苦の甚大さについても全く自覚しない、人格が疑われるような会見でした。

 籾井会長は批判の大きさを前にして「発言を取り消す」「不見識だった」などとしていますが、会長と私人を混同したことを「反省」するとしただけで、内容自体を撤回したわけではありません。菅官房長官も「個人の発言」として政権として黙認するつもりです。これに対して、中国や韓国など戦争被害国から厳しい批判の声が上がっています。
 ところがここに来て、橋下大阪市長が「言っていることは正論。僕がずっと言い続けてきたことだ」などと発言し、右翼政治家として共鳴し始めています。橋下氏は昨年5月の「慰安婦」発言を批判にさらされ、市長自身と維新の会が大きく失速しましたが、籾井氏支持発言をすることによって政治的威信を回復しようとしているのです。安倍首相と大阪市長、元東京都知事、さらにはNHK会長がそろって歪んだ歴史観をもち、排外主義と好戦主義を主張するのは全く異常と言うほかありません。
 私たちは、歴史を歪曲し被害者の尊厳を踏みにじる籾井会長の発言を絶対に許すことは出来ません。発言を撤回し、謝罪することを要求します。被害者や被害国に対して真摯に謝罪すべきです。籾井会長は責任をとって辞任すべきです。

 籾井会長は日本軍「慰安婦」について、「戦争をしているどこの国でもあった」と「慰安婦」制度と戦時性暴力を正当化しました。さらに「お金をよこせ、補償しろと言っている」などと、被害者が誠実な謝罪と補償、きちんとした歴史教育を要求していることを「お金をよこせ」と言っているなどと被害者を侮蔑しています。
 日本軍「慰安婦」制度は、政府と軍が組織的に「性奴隷制度」「戦時強姦施設」を管理運営したという他の国には類を見ない戦争犯罪です。「どこの国にもあった」というのは歴史認識として間違っているだけでなく、日本の植民地であった朝鮮半島から連れてこられ、あるいは戦地で「調達」された20万人とも言われる「慰安婦」被害者たちの人権を踏みにじるものです。2001年に当時の安倍晋三内閣官房副長官らが中心になってNHKに圧力をかけて「慰安婦」問題を裁く女性国際戦犯法廷についての番組を改竄させ、とりわけ「昭和天皇の戦争責任」の部分を削除したという事件をはじめ、執拗に攻撃をかけてきています。
しかし2011年8月韓国憲法裁判所は「慰安婦」被害者や強制徴用工らが日本に対して持つ賠償請求権についての行政不作為を指弾し早期に解決するよう命じています。これを受け、韓国高等裁判所は新日鉄住金や川崎重工業などに対して次々と強制徴用に対して賠償を命じる判決を出しています。「日韓条約ですべて解決している」というのが歴史的にも政治的にも全く間違いであるのは明らかです。にもかかわらず籾井氏は「日韓条約で解決済み」という政府・自民党の見解を宣伝しているのです。

 特定秘密保護法についての発言も驚くべきものです。「秘密法は政府が必要と説明している」と政府見解を鵜呑みにするかのような発言をした上で「通っちゃったんで言ってもしょうがない」と批判報道を放棄しています。さらに「メディアは反対ばっかりで、賛成があってもいいという意見もある」とメディアは翼賛報道をもっとすべきと言い、最後には「あまりかっかかっかすることはないと思う」と反対の声を上げた市民を侮辱しています。これらは、国民の大半が反対し連日国会前で集会・デモが繰り返されている重大な政治問題に対して、報道機関のトップの発言としてあるまじきものです。

 安倍首相の靖国神社参拝については、「総理が信念で行かれたということで、それはそれでよろしい」と肯定し、憲法の政教分離についての無理解をさらけ出しています。総理の信念でやったら全て「それはそれでよろしい」というのであれば、近隣諸国への配慮や、A級戦犯の合祀や、アジアの2000万人、3000万人とも言われる犠牲者や、「天皇の赤子」として戦争に送り込まれて死んでいった若者の無念も、数々の靖国違憲訴訟もなにも関係なくなるでしょう。なによりも、アジア諸国やヨーロッパ、米国などからさえ懸念が表明されているという国際情勢をNHK会長としてどう考えているのでしょうか。

 尖閣問題についてはさらに危険です。籾井氏は「領土問題については、明確に日本の立場を主張するのは当然のこと」と、政府の主張を代弁することを公然と言ってのけています。それだけでなく「これを国民にきちっと理解してもらう必要がある。今までの放送で十分かどうかは検証したい」と内容への介入も示唆しています。
 NHKが行っている海外放送「NHK国際放送」についての質問に対しても、「政府が右と言うことを左と言うことは出来ない」とし、放送で政府見解を垂れ流す姿勢を公言しました。国際放送は、「尖閣」はじめ領土問題についての宣伝を強化することが目論まれています。自民党の領土に関する特命委員会(委員長・額賀福志郎元財務相)は昨年12月17日、「領土に関する日本の主張を国内外に浸透させるため」として、NHK国際放送の活用や教科書の記述の充実など、情報発信の強化を求める提言をまとめています。提言は、尖閣諸島や竹島、北方領土の情報発信について 「『広報』ではなく、『世論戦』と認識して対応する」としています。NHKを政府の「世論戦」の道具にしようというのです。尖閣諸島などの天気予報をメディアを通じて発信することなども提案しています。こんなことをされれば、国民の脳裏には、「尖閣諸島は日本の領土、中国はけしからん」という感情が植え付けられてしまうでしょう。

 さらに、籾井新会長は、「私の任務はボルトやナットを締め直すこと」と言っていますが、これは自分の気に入らない番組を制作するような職員を締め付け、萎縮させるという意味に他なりません。籾井氏は、“現場の制作報道で会長の意見と食い違う意見が出た場合どうするか”との質問に対して、「最終的には会長が決める」「私の了解をとってもらわないと困る」と、現場の意見を尊重するのではなく、籾井氏が決定することを明言しています。こんな人物が会長では職員はたまったものではありません。
 籾井新会長は会見の中で「放送法の順守」という言葉を何度も述べましたが、放送法第一条では「放送の不偏不党」、第四条では「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」が書かれてあります。安倍政権の政策の代弁でしかない上記の発言は、まさに放送法に違反しています。

 昨年11月、安倍首相はNHK経営委員会に、特攻を賛美するプロパガンダ映画『永遠の0』の原作者で首相に靖国参拝を奨めた百田尚樹氏はじめ日本会議代表委員として首相と親しい長谷川三千子氏(埼玉大名誉教授)、「グローバル人材教育」を進める中島尚正氏、首相の元家庭教師本田勝彦氏(日本たばこ産業(JT)顧問)ら自分の歴史認識と同じくする親しい「お友達」の人物を送り込みました。この委員会はNHK会長の任命権を持つもので、「NHKと政権との距離が問われかねない人事」と問題視されてきました。そこでまさに就任早々このような発言をした人物を会長に選んだことで、安倍首相の責任も問われなければなりません。
 籾井新会長は謝罪し、即刻辞任すべきです。安倍首相は自らの責任を明らかにすべきです。

2014年01月28日
リブ・イン・ピース☆9+25


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