民主・自民・公明3 党による消費税増税に反対する
低所得者ほど重い負担がのしかかる

 民主・自民・公明の3党は、6月15日、消費税増税関連法案をめぐる実務者協議で、政府提出の消費税増税法案と自民党の社会保障制度改革基本法案の修正で合意し、20日に関連法案を国会に共同提出した。消費税を2014年4月に8%、15 年10月に10%まで2段階で上げようというものだ。民主党の前原政調会長は19日の党政策調査会合同会議で、「異論が出ているので一任してもらう」という訳の分からない理屈で議論を打ち切り、強引に党内合意を取り付けた。野田政権と与党幹部が、野党と結託して公約違反の増税に突き進み、与党内を押さえつけるという異常な光景が日々繰り広げられている。
 消費税増税は、リーマン・ショックや欧州危機などの経済危機、非正規など不安定な雇用の増加、賃金の引き下げ、失業の増加などで、すでに窮乏化が進んでいる人々の生活をより一層悪化させる。私たちは、3党談合によるこの合意を破棄し、消費税増税法案を撤回するよう要求する。

「消費税増税さえ実現できれば」と自民・公明にすり寄った野田首相
 野田首相は、消費税増税の今国会成立に「政治生命」を賭けると宣言し、自民・公明に対し、譲歩に譲歩を重ねた。政権獲得時の公約「国民の生活が第一」をとうの昔に投げ捨てていた野田首相には、何の歯止めもなかった。「消費税増税さえ実現できれば後はどうでもよい」と言わんばかりの姿勢であった。
 民主党の消費税増税法案に対し、自民党・公明党は「バラマキにけじめがついていない」、「『社会保障と税の一体改革』になっていない」などと批判していた。増税には大賛成で、それと引き替えに民主党のマニフェストを全面的に撤回させ、もっと社会保障や生活関連の切り捨てを行わせることが、目的であった。
 このような3党の協議の結果、消費税増税はそのままで合意された一方、その他の多くの点で、自民・公明の主張に近い合意となった。

小手先だけの「低所得者対策」
 「低所得者対策」と称して、8%に上げる際に現金を配る「簡素な給付措置」で一致したが、10%に上げる時には、現金給付と減税を組み合わせる「給付つき税額控除」か、食料品など生活必需品の税率を低くする「軽減税率」のどちらかを検討するとして、決定は先送りした。軽減税率は公明党の主張に配慮し、8%でも導入する可能性を残した。しかし、「給付付き税額控除」か「軽減税率」かなどという議論は全く本質的な議論ではない。これらは、低所得者ほど負担率が高くなる「逆進性」という消費税の根本的欠陥をやや緩和するだけであり、なくせるわけではない。消費税増税に対する反発をかわすための
手段でしかない。しかも、「給付つき税額控除」導入には、「国民総背番号制」である「マイナンバー」の導入が前提になる。

業界や高所得者には配慮
 合意にもりこまれた、住宅購入時の負担軽減や自動車取得税・自動車重量税の見直しの検討は、消費税増税の影響を大きく受ける業界の救済であって、住宅や車などを買うことのできない低所得者には恩恵がない。
 その一方、高所得者に負担を求めるはずだった、所得税最高税率の引き上げや相続税の控除引き下げなどは、法案から削られた。「富裕層の海外移住につながる」と自民党が反対したためである。

「一体改革」とは増税と社会保障切り捨ての「一体」化
 「消費税増税と一体で充実させる」と言ってきた社会保障の方では、もともと不十分だった政府案からより一層後退した。「自立・自助」すなわち社会保障切り捨てを基本精神とする、自民党の「社会保障制度改革基本法案」をベースとし、「社会保障制度改革国民会議」を設けて議論することで合意した。
 民主党がマニフェストに掲げていた最低保障年金の導入も後期高齢者医療制度の廃止も、棚上げされた。
 非正規労働者が厚生年金や企業の健康保険に入りやすくする案は、民主党案でも、もともと370 万人だった新規加入目標を、なんと当面45 万人にまで減らしていた。3 党協議ではさらに、自民党の主張で収入要件を「月7.8 万円以上」から「月8.8 万円以上」に引き上げ、対象者を25 万人まで減らした。実施時期も政府案より半年遅らせ、2016年10月からとした。低所得者の年金に一律月6千円を加算する案も見送られ、年金の枠外の「福祉的な措置」として最大5千円を支給するなどの措置に変えられた。
 「子育て支援」では、幼稚園と保育所を一体化した「総合こども園」を創設する案が撤回され、自公政権時代に始まった「認定こども園」を拡充することになった。
 もともと野田政権の「税と社会保障の一体改革」とは、「消費税増税を社会保障の充実にあてる」かのような勘違いをさせるための言葉でしかなく、実際には「増税も社会保障の切り捨ても」であった。3党協議を経て、その性格は一層鮮明となった。

消費税増税は生活を破壊する
 消費税の増税は、特に低所得者の生活を直撃する。消費税には、低所得者ほど負担率が高くなる逆進性がある。第一生命経済研究所の試算では、10%に増税された場合の負担増の額は、年収1千万円以上の世帯は手取り収入(可処分所得)の2%台だが、年収250万円未満の世帯では手取り収入の4%にもなる。
 しかも、負担増は消費税だけではない。所得税・住民税の「復興増税」、厚生年金保険料の引き上げ、各種健康保険料の引き上げ、介護保険料の引き上げ、子ども手当の減額、年金支給額の0.3%引き下げ、などの負担増が目白押しだ。これら全体による負担増額は、大和総研の試算では、年収300万円の世帯で24万円、500万円の世帯で31.4万円に上る。非正規労働者などのワーキングプアが急増し、現在でも相対的貧困率は16%と過去最悪の水準にあり、国民の6人に1人が年収112万円未満、生活保護受給者が200万人以上、14年連続で3万人以上(公式統計で)が自殺するという異常な社会に、これだけの負担が襲いかかるのである。

欺瞞に終始する増税論議
 消費税増税への反対は依然として強いが、まともな批判がほとんどなされていない。民主党内の増税反対派も、「増税対反増税」という構図に持ち込もうという政局的な思惑が中心である。みんなの党などの増税反対は、新自由主義による切り捨ての徹底を要求するものだ。大手マスコミは一致して増税賛成であり、「高齢化」「社会保障費の増大」のため増税が不可避なのに、それを実行できない政治が悪いというムードを作り出している。
 3党の合意は実質的な「大連立」とも言われている。今後実際に大連立政権が樹立され、さらなる増税や保険料引き上げなどの負担増、社会保障や生活関連の切り捨てを進める可能性もある。一方では、そうした「翼賛体制」に対する批判者として橋下大阪市長と「大阪維新の会」が脚光を浴び、新自由主義の推進力となる危険もある。

消費税増税法案に断固反対。予算を食いつぶしてきた者に責任を取らせよ
 野田政権は、増税法案を出す一方で、12年度予算を過去最大の96兆円超にまでふくれあがらせた。災害対策や復興に乗じて、北海道、北陸、九州の整備新幹線、東京外郭環状などの高速道路や八ツ場ダムをはじめとする巨大公共事業を次々と復活させた。野党も、「防災」や「景気対策」を名目に大型公共事業を求めている。自民党は総額約200兆円規模の「国土強靱化基本法案」を出そうとしている。公明党も公共事業に100兆円を集中投資するという政策を次の衆院選の公約に盛り込もうとしている。「財政再建と社会保障の充実」のためと増税しながら、その金を選挙目当ての大盤振る舞いにつぎ込もうとしている。
 巨額の軍事費や原子力予算もそのままだ。震災を理由に昨年凍結された法人税減税も実施される。財政危機の責任はこのようにして国家財政を食いつぶしてきた軍需産業や原子力産業、ゼネコン、銀行をはじめとする財界や高級官僚にあり、その責任を問わずに、増税や生活関連切り捨てで庶民に犠牲転嫁するなど、絶対に許すことはできない。財政危機の責任者はそれを作ったものが負うべきだ。
 私たちは、消費税増税法案を撤回するよう要求する。財政危機には、社会保障や生活関連予算の削減ではなく、軍事費、原子力予算の大幅削減、大型公共事業の更なる削減、法人税増税、証券取引税など富裕者増税、累進課税の強化などで対応することを要求する。

2012年6月22日
リブ・イン・ピース☆9+25